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アルツハイマー病はウォーキングで予防できる 運動不足が最大の原因

 ウォーキングなどの運動を習慣として行うことで、アルツハイマー症の3分の1は予防可能だ。生活習慣を見直し改善することで、世界の数百万人がアルツハイマー病の発症を予防できるという研究が、医学誌「ランセット ニューロロジー」に発表された。

 「わずか20分のウォーキングを週に3回行うだけで、将来にアルツハイマー病を発症する危険性を下げることができます」と、研究者は述べている。

 バス停の停留所や鉄道の駅をひとつ手前に降りて、残りの行程を歩くだけで、20分の運動は達成可能だ。

アルツハイマー病の最大の原因は運動不足
 アルツハイマー病には効果的な治療がない。発症すると、患者やその家族に破壊的な影響をもたらし、医療費の負担も深刻だ。

 人口の急増と高齢化によって、アルツハイマー病の患者数は世界的に増えている。2010年にアルツハイマー患者の数は約3,000万人だった。2050年までに1億600万人以上に増えると予想されている。

 認知症の原因の約7割を占めるアルツハイマー病は、アミロイドβとタウという2種類のタンパク質が脳の神経細胞を破壊していく病気だ。脳内にタウの凝集が生じると、やがて神経細胞が障害され、情報をうまく伝達できなくなり認知機能が低下していく。

 アミロイドβやタウをたまりにくくする要因が解明されている。アルツハイマー病と関連の深い7つの危険因子とは、(1)糖尿病、(2)高血圧、(3)肥満、(4)運動不足、(5)うつ病、(6)喫煙、(7)低学歴だ。

 英ケンブリッジ大学のキャロル ブレイン教授(公衆衛生学)は、生活スタイルとアルツハイマー病の発症の関連を調べた30件の研究を分析した。その結果、アルツハイマー病の3分の1は、不健康な生活スタイルが原因となることが明らかになった。

 「これらの危険因子の相対危険度をそれぞれ10%減らすことで、2050年にアルツハイマー病の発症率は8.5%減少し、900万人の発症を防ぐことができます」と、ブレイン教授は言う。

 科学的な研究でもっとも効果が高いとされている予防法が運動だ。「運動不足がアルツハイマー病の22%に影響しています。特にウォーキングなどの有酸素運動は、脳の血量を改善するので効果的です」としている。

週に150分の運動がWin-Winの効果をもたらす
 2011年に発表された研究では、アルツハイマー病の患者のおよそ半数は、生活スタイルの改善で発症を防ぐことができるとしていたが、今回の研究では、これらリスク要因が複雑に絡み合っているので、この予想値は楽観的過ぎるとしている。

 認知症を確実に防ぐ方法はないが、そのリスク要因を1つずつ減らしていけば、高い確率で予防できるという。そのために健康的な生活が必要であることが、重要なメッセージとして示された。

 運動ガイドラインでは、ウォーキングやガーデニング、家事など、体を動かす頻度を高め、週の運動時間を150分に増やすことを奨励している。

 実際には、十分な運動をしている人の割合は3分の1程度で、運動時間が週に30分以下の人も5分の1に上るという。

 「運動不足の解消は、肥満や高血圧、2型糖尿病などの病気を改善するためにも重要です。運動をすることで、アルツハイマー病の予防にもつながります。運動は正にWin-Winの効果をもたらします」と、ブレイン教授は強調している。

One in three cases of Alzheimer's worldwide potentially preventable, new estimate suggests(ケンブリッジ大学 2014年7月14日)

[Terahata]
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