ニュース

やせているのになぜ糖尿病に? 余分な脂肪を減らして改善

 「糖尿病は太っている人がかかる病気と思っていた。やせている自分がなぜ?」と疑問を感じている人はいないだろうか。「やせている人の2型糖尿病は予想以上に多い」との調査結果を、英国のニューキャッスル大学が発表した。
内臓脂肪は食事と運動をコントロールすれば減らせる
 3年前の56歳のときに2型糖尿病と診断された英国人男性のリチャード ドーティーさんは、「こんなにやせているのに、なぜ私が糖尿病に」という懸念を抱いた。ドーティーさんは20歳の頃から、体格指数(BMI)が25未満で「標準体重」を維持していた。

 ドーティーさんは、主治医から5kgの減量をアドバイスされ、1年間で体重を4kg減らすのに成功した。その結果、血糖値やコレステロール値などが改善し、治療薬の種類を減らすことができたという。

 「肥満と糖尿病について考えるときには、体脂肪の量だけでなく、分布状態にも注意する必要があります」と、英国のニューカッスル大学のロイ テイラー教授(内分泌代謝学)は言う。

 脂肪組織には「皮下脂肪」と「内臓脂肪」があり、どちらもエネルギーを備蓄しているが、それぞれ違う働きをしている。

 皮膚の下にある「皮下脂肪」は外からの刺激を吸収したり、外気温の変化を断熱することで、体温を一定に保つ役割を果たす。一方、「内臓脂肪」は内臓のまわり、特にお腹の中の腸のまわりに付くことで、内臓の働きを正常に保つ役割がある。

 さらに、最近では、皮下脂肪でも内臓脂肪でもなく、本来は脂肪がたまらない臓器の中にたまる「異所性脂肪」が第3の脂肪として注目されている。

 「異所性脂肪」は、肝臓や筋肉、心臓といった臓器にエネルギー源として蓄えられる脂肪のこと。少量であれば問題はないが、過剰に蓄積すると脂肪肝や非アルコール性肝炎(NASH)、2型糖尿病などの原因になる。

やせている人は異所性脂肪がたまりやすい
 内臓脂肪は食べ過ぎでカロリーオーバーになるとたまりやすいが、食事と運動をコントロールすれば簡単に減らせる。内臓脂肪が減れば、インスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」を改善できる。

 厄介なのは、やせている人は「異所性脂肪」がたまりやすいことだ。やせている人は内臓や皮下の脂肪の貯蔵能が低いために「異所性脂肪」が増えやすい。運動不足と高脂肪の食事が原因のひとつとなっている。

 テイラー教授らの研究チームは、「英国糖尿病前向き研究」(UKPDS)に1977年~1991年に登録された5,102人の糖尿病患者のデータを解析した。うち約10%は、BMIが18.5~24.9の標準体重の患者だった。英国の2型糖尿病患者のうち、64%はBMIが25未満だと推定している。

 「標準体重なのに糖尿病を発症する人は予想以上に多いことが判明しました。標準体重であっても、体脂肪が多く蓄積している患者が少なくありません。2型糖尿病と新たに診断される患者の8割以上は、体重をコントロールすることで糖尿病を改善できる可能性があります」と、テイラー教授は言う。

 やせている人の多くは、自分も糖尿病になってしまう可能性があるという自覚をあまりもっていない。そのため検診などで血糖値が高めだと言われても、あまり深刻に考えない傾向がある。

 そのため、それ以上悪化させないために、食事を気をつけたり運動をして、血糖値を下げなくてはならないという危機感が薄いという。

 自分はやせているから平気だと考え食べ過ぎや運動不足を続けていると、1年後の血糖値は上昇しており、合併症の危険性も高まる。

運動で内臓脂肪や異所性脂肪を減らせる
 体にたまった内臓脂肪や異所性脂肪を減らす方法はほぼ確実にある。それは、運動や身体活動の量を増やすことだ。

 2型糖尿病と診断されたドーティーさんは、その後、1日30分のウォーキングを続け、通勤でも車を使わずに徒歩と電車で済ませるようになった。その結果、体脂肪量は減り体重は4kg減少した。

 「やせている人でも、体重をコントロールすれば、体に蓄積された見た目では分かりにくい脂肪を減らせます」と、テイラー教授は説明する。

 年末年始には行事が重なり、食事でカロリーを過剰に摂取しがちだ。クリスマスの1週間で5,000kcalを余計にとってしまったとする。それを減らすには、1日に500kcalを燃焼する必要がある。運動で500kcalのエネルギーを使い切るのは容易なことではない。

 「体重が標準体重と比べて増えてきた、減ってきたことを意識すると同時に、やせている人も食事を管理し、運動を習慣として行い、体脂肪がたまりすぎないように心がける必要があります」と、テイラー教授は強調している。

Normal weight individuals who develop Type 2 diabetes: the personal fat threshold(Clinical Science 2014年11月9日)

[Terahata]

「健診・検診」に関するニュース

2023年02月24日
がん検診発見例が減り早期がんも減少傾向だが、現時点での評価は困難
国立がん研究センター「院内がん登録全国集計」速報値より
2023年01月20日
保健師など保健衛生に関わる方必携の手帳「2023年版保健指導ノート」
2023年01月17日
【特定健診】40歳以上の半数は生活習慣病かその予備群 健診受診率の引き上げと、働く人のヘルスリテラシーを向上することが課題に
2023年01月16日
わずか「1分間の運動」でも健康効果が 忙しい人も仕事や家事の合間に簡単な運動を行うと寿命を延ばせる
2023年01月05日
特定保健指導は効果があった! 肥満指標はわずかに改善 血糖や中性脂肪も 582万人のデータを解析
2023年01月04日
【もっとも読まれたニュース トップ10】変化の年だった2022年 保健指導リソースガイド
2022年12月20日
健診で「腎臓病」を指摘されても、医療機関で診断を受けたのは5年以上も後 理解促進と対話の場が必要
2022年12月15日
日本産業保健師会が「新任期産業保健師養成研修」「産業保健師リーダー養成研修」を開催 
参加型研修を重視し、キャリアラダーに基づいた産業保健師のための研修会
2022年12月12日
13種類のがんを1回の血液検査で発見できる次世代診断システム 「がんの種類」を高精度で区別 がん研究センターなど
2022年12月06日
40歳未満の健診情報もマイナポータルで確認・閲覧可能へ
若年世代からの生活習慣病予防・健康づくりを
アルコールと保健指導

トピックス・レポート

無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(毎週木曜日・約11,000通)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら ▶
ページのトップへ戻る トップページへ ▶