ニュース
ウォーキングが高血圧のリスクを下げる 運動強度を高めると効果的
2014年12月19日

ウォーキングなどの運動習慣のある人は、運動習慣のない人に比べて、高血圧を発症するリスクが低くなることが、平均年齢53歳の約5万7,000人の米国人を対象とした調査で明らかになった。
毎日のウォーキングが血圧を下げる
上の血圧(収縮期血圧)が140mmHg以上、または、下の血圧(拡張期血圧)が90mmHg以上であると、高血圧と判定される(家庭血圧では基準はこの数値よりも5mmHg低くなる)。
「ウォーキングなどの運動を毎日続けて、エネルギー消費量をより高める工夫をすると、高血圧のリスクを減らすことができます」と、米ミシガン州のウェイン州立大学のムアーズ アルマッラー氏は言う。
調査は、米国のミシガン州で実施された大規模研究「ヘンリー フォード運動試験」に参加した、運動をする習慣をもつ平均年齢53歳の男女5万7,284人を対象に行われた。
「メッツ」(METs)は運動強度の単位で、安静時(横になったり座って楽にしている状態)を1とした時と比較して何倍のエネルギーを消費するかで活動の強度を示したもの。
ウォーキングをメッツで示すと、時速6kmで歩くと5メッツ、時速7kmで歩くと7メッツ、時速8kmで歩くと8メッツになる。
参加者は平均して、ピーク時に9メッツに達する運動を習慣として行っていた。調査は4.4年(中央値)続けられ、参加者の61%に相当する3万5,175人が高血圧と判定された。
血圧を下げるための運動として勧められるのは、脈がふだんより少し速くなるくらいの速さで歩く、「少しきつめのウォーキング」だ。6メッツの運動がこれに相当する。
調査では、6メッツの運動を続けていた人は、高血圧の発症率が30%減少したことが明らかになった。
「運動習慣のある人は、運動習慣のない人に比べ、血圧を下がられることが確かめられました。高血圧になりやすい体質の人でも、ウォーキングなどの運動を毎日続けることで、高血圧のリスクを減らすことができます」と、アルマッラー氏は言う。
運動強度を高めると高血圧リスクはより低下
この研究で注目されるのは、12メッツの運動を続けていた人では、高血圧の発症率が50%減少していたことだ。運動はウォーキングに加えて、水泳や自転車こぎ、ウェイトトレーニングなど、さまざまな種類を組み合わせるとより効果的であることが示唆された。
適度な運動には、血管の内皮機能を改善し、血圧を上げる交感神経の働きを弱め、腎臓から塩分を排出しやすくする効果がある。また、血糖や血中脂質の値が改善し、心臓や肺の働きもよくなる。
過去の研究では、1回30分の運動を週2回以上行ったり、1日8,000歩程度のウォーキングを3ヵ月行っただけでも、血圧が低下することが確かめられている。
米国心臓学会によると、米国の成人の3人に1人は高血圧だという。高血圧は心臓病、脳卒中、腎臓病などの深刻な病気の原因になり、これらが相乗して医療費の増加を引き起こす。
なお、運動を実施する上での注意点として、「メディカルチェックを受けて心疾患や心不全などの心臓病の危険性がないことを確認し、個人の基礎体力・年齢・体重・健康状態などをふまえて運動量を設定する必要があります」と、アルマッラー氏は付け加えている。
High fitness level reduces chance of developing hypertension(米国心臓学会 2014年12月17日)Physical Fitness and Hypertension in a Population at Risk for Cardiovascular Disease: The Henry Ford ExercIse Testing (FIT) Project(米国心臓学会 2014年12月17日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2025 SOSHINSHA All Rights Reserved.


「運動」に関するニュース
- 2025年07月28日
- 日本の「インターバル速歩」が世界で話題に 早歩きとゆっくり歩きを交互に メンタルヘルスも改善
- 2025年07月28日
- 肥満と糖尿病への積極的な対策を呼びかけ 中国の成人男性の半数が肥満・過体重 体重を減らしてリスク軽減
- 2025年07月28日
- 1日7000歩のウォーキングが肥満・がん・認知症・うつ病のリスクを大幅減少 完璧じゃなくて良い理由
- 2025年07月18日
- 日本人労働者の3人に1人が仕事に影響する健康問題を経験 腰痛やメンタルヘルスなどが要因 働きながら生産性低下を防ぐ対策が必要
- 2025年07月18日
- 「サルコペニア」のリスクは40代から上昇 4つの方法で予防・改善 筋肉の減少を簡単に知る方法も
- 2025年07月14日
- 暑い夏の運動は涼しい夕方や夜に ウォーキングなどの運動を夜に行うと睡眠の質は低下?
- 2025年07月07日
- 日本の働く人のメンタルヘルス不調による経済的な損失は年間7.6兆円に 企業や行政による働く人への健康支援が必要
- 2025年07月07日
- 子供や若者の生活習慣行動とウェルビーイングの関連を調査 小学校の独自の取り組みを通じた共同研究を開始 立教大学と東京都昭島市
- 2025年07月01日
- 生活改善により糖尿病予備群から脱出 就労世代の1~2割が予備群 未病の段階から取り組むことが大切 日本の企業で働く1万人超を調査
- 2025年07月01日
- 東京糖尿病療養指導士(東京CDE) 2025年度申込を受付中 多職種連携のキーパーソンとして大きく期待される認定資格