ニュース

中学生に脳卒中をマンガで啓発 保護者でも脳卒中の知識が向上

 中学生を対象に脳卒中の啓発活動を行うと、脳卒中や発症時の適切な対応についての知識の向上をはかれ、この効果は生徒に加えてその保護者に及ぶことが、国立循環器病研究センターの研究で明らかになった。
脳卒中の「FAST」を小中学生に啓発
 脳卒中の発症を予防し後遺症を軽減するためには、生活習慣の改善、脳卒中の知識の習得、脳卒中発症時の適切な対処法の普及が重要となる。

 特に、脳卒中発症後の治療開始時間を短縮化するために、脳卒中発症後の病院受診までの時間を最小限にしなければならず、そのためには「脳卒中発症に気付くこと」と「脳卒中発症時の適切な対処法」が周知されていることが重要となる。

 従来、こうした啓発は成人に対して行われてきており、若年層をターゲットとした啓発手法は確立されていなかった。

 そこで研究チームは、2010年度から京都精華大学マンガ学部と「FAST」を用いたポスター、マンガ冊子、アニメの教材を共同開発し、小中学生を対象とした脳卒中啓発活動を開始してきた。

 「FAST」とは、「顔面麻痺(FACE)」「片腕の麻痺(ARM)」「ことばの障害(SPEECH)」の3つの徴候のうち1つでもあれば、「発症時刻(TIME)」を確認して、すぐ救急車を要請するというメッセージで、海外で脳卒中啓発活動で用いられている。
脳卒中に関する理解度が向上 正解率は90%に上昇
 研究は、脳卒中死亡率が高い栃木県で行われた。9つの公立中学生(13~15歳)1,127人を対象に脳卒中授業を実施した。

 授業の1週間前から脳卒中啓発ポスターを教室に貼り、授業では研究スタッフ医師による講習を受講した脳卒中を専門としない医療関係者(公衆衛生医師、看護師など)による20分間の脳卒中知識の解説、10分間の脳卒中アニメ視聴、10分間の脳卒中マンガ冊子の供覧を行った。また、生徒には、マンガ冊子を自宅に持ち帰り、その内容を保護者に伝えるよう指示をした。

 研究チームは、啓発介入前後に生徒と保護者へ、脳卒中に関する理解度のアンケート調査を行った。結果、生徒のみならず保護者でも、脳卒中危険因子、脳卒中症状、脳卒中発症時の適切な対応に関する知識が向上していることを確認。

 特にFASTにあてはまる項目については、生徒で90%前後、保護者で80%以上が正答し、その理解が確認されたという。

 さらに、適切な啓発教材を用いれば、脳卒中専門の医療従事者に限らず一般の学校教師や救急隊員によるさらなる脳卒中啓発を普及できる可能性が示された。

 研究チームは今後、脳卒中啓発教材の翻訳を進め、海外への脳卒中啓発手法の発信と、その効果の検証も計画しているという。

 研究は国立循環器病研究センター脳血管内科の横田千晶医長ら研究チームによるもので、医学誌「Stroke」オンライン版に発表された。

国立循環器病研究センター
[Terahata]
side_メルマガバナー

「学校保健」に関するニュース

2025年02月25日
【国際女性デー】女性と男性はストレスに対する反応が違う メンタルヘルス対策では性差も考慮したアプローチを
2025年02月17日
肥満やメタボの人に「不規則な生活」はなぜNG? 概日リズムが乱れて食べすぎに 太陽光を浴びて体内時計をリセット
2025年02月10日
タバコを1本吸うごとに寿命は20分短縮 若い世代はタバコ規制を歓迎 「タバコ広告も禁止すべき」
2025年01月27日
座位時間の長い労働者は睡眠の問題を抱えやすい 立ち上がって体を動かし対策 運動で血流を改善
2025年01月27日
「孤独」と「社会的孤立」は心臓病・脳卒中・感染症などのリスクを高める 人との交流は健康を維持するために必要
2025年01月14日
子宮頸がん予防のHPVワクチンをもっと知って欲しい【キャッチアップ接種の期間が延長】
2025年01月06日
愛情ホルモン「オキシトシン」が社会的つながりを強める 孤独は愛情ホルモンを減らす 動脈硬化にも影響
2025年01月06日
【申込受付中】保健事業に関わる専門職・関係者必携
保健指導・健康事業用「教材・備品カタログ2025年版」
2024年12月25日
過去最少の野菜不足でも「改善するつもりはない」 睡眠不足も慢性的
―令和5年「国民健康・栄養調査」より
2024年12月24日
「2025年版保健指導ノート」刊行
~保健師など保健衛生に関わる方必携の手帳です~
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶