ニュース
中学生に脳卒中をマンガで啓発 保護者でも脳卒中の知識が向上
2015年01月16日
中学生を対象に脳卒中の啓発活動を行うと、脳卒中や発症時の適切な対応についての知識の向上をはかれ、この効果は生徒に加えてその保護者に及ぶことが、国立循環器病研究センターの研究で明らかになった。
脳卒中の「FAST」を小中学生に啓発
脳卒中の発症を予防し後遺症を軽減するためには、生活習慣の改善、脳卒中の知識の習得、脳卒中発症時の適切な対処法の普及が重要となる。
特に、脳卒中発症後の治療開始時間を短縮化するために、脳卒中発症後の病院受診までの時間を最小限にしなければならず、そのためには「脳卒中発症に気付くこと」と「脳卒中発症時の適切な対処法」が周知されていることが重要となる。
従来、こうした啓発は成人に対して行われてきており、若年層をターゲットとした啓発手法は確立されていなかった。
そこで研究チームは、2010年度から京都精華大学マンガ学部と「FAST」を用いたポスター、マンガ冊子、アニメの教材を共同開発し、小中学生を対象とした脳卒中啓発活動を開始してきた。
「FAST」とは、「顔面麻痺(FACE)」「片腕の麻痺(ARM)」「ことばの障害(SPEECH)」の3つの徴候のうち1つでもあれば、「発症時刻(TIME)」を確認して、すぐ救急車を要請するというメッセージで、海外で脳卒中啓発活動で用いられている。
脳卒中に関する理解度が向上 正解率は90%に上昇
研究は、脳卒中死亡率が高い栃木県で行われた。9つの公立中学生(13~15歳)1,127人を対象に脳卒中授業を実施した。
授業の1週間前から脳卒中啓発ポスターを教室に貼り、授業では研究スタッフ医師による講習を受講した脳卒中を専門としない医療関係者(公衆衛生医師、看護師など)による20分間の脳卒中知識の解説、10分間の脳卒中アニメ視聴、10分間の脳卒中マンガ冊子の供覧を行った。また、生徒には、マンガ冊子を自宅に持ち帰り、その内容を保護者に伝えるよう指示をした。
研究チームは、啓発介入前後に生徒と保護者へ、脳卒中に関する理解度のアンケート調査を行った。結果、生徒のみならず保護者でも、脳卒中危険因子、脳卒中症状、脳卒中発症時の適切な対応に関する知識が向上していることを確認。
特にFASTにあてはまる項目については、生徒で90%前後、保護者で80%以上が正答し、その理解が確認されたという。
さらに、適切な啓発教材を用いれば、脳卒中専門の医療従事者に限らず一般の学校教師や救急隊員によるさらなる脳卒中啓発を普及できる可能性が示された。
研究チームは今後、脳卒中啓発教材の翻訳を進め、海外への脳卒中啓発手法の発信と、その効果の検証も計画しているという。
研究は国立循環器病研究センター脳血管内科の横田千晶医長ら研究チームによるもので、医学誌「Stroke」オンライン版に発表された。
国立循環器病研究センター
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2024 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「学校保健」に関するニュース
- 2023年08月28日
- 週末の「寝だめ」では平日の睡眠不足のダメージを回復できない 寝不足が心臓の健康に悪影響
- 2023年08月21日
- 朝食欠食が肥満やメタボのリスクを上昇 朝食を食べない人に共通する生活スタイルは?
- 2023年08月15日
- スマホやゲーム機で遊ぶ時間が長いと睡眠障害に 子供の言語力や認知力の発達が低下 食習慣も大切
- 2023年08月10日
- 市販薬の適切使用とヘルスリテラシーの関連を明らかに〜筑波大の研究グループ
- 2023年08月09日
-
8020達成率は5割以上 若い世代の歯周病増、口腔ケアが課題に
厚労省「令和4年歯科疾患実態調査」より - 2023年08月08日
- 若い世代でも「脂肪肝疾患」が増加 やせていても体脂肪が蓄積 肥満とどう違う?
- 2023年08月01日
- 肥満やメタボになりやすい生活習慣は子供のうちに身についている 子供の頃から保健指導が必要
- 2023年07月31日
- 歩きやすい環境に住む人はメタボ・肥満が少ない 運動・身体活動を促す地域環境をデザイン
- 2023年07月24日
- 肥満・メタボを改善する「6種類のヘルシー食品」 心筋梗塞や脳卒中のリスクを減らし寿命を伸ばす
- 2023年07月24日
- 「産後うつ」の病態を解明 妊娠中から予測し予防的な対策を 健やかな母子家庭環境を維持するために