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日本の子どもの腸内菌を調査 ビフィズス菌が豊富で悪玉菌が少ない
2015年03月02日

日本の子どもの腸内細菌叢は、アジアの各国に比べてビフィズス菌が豊富であり、大腸菌などの悪玉菌が少ないことが明らかになった。日本の子どもは腸内細菌に関してみると健康的といえる。
アジアの子どもの腸内には善玉菌の「ビフィズス菌」を多い
日本の子どもの腸内細菌叢は、アジアの各国に比べてビフィズス菌が豊富であり、大腸菌などの悪玉菌が少ないことを、九州大学大学院農学研究院の中山二郎准教授、ヤクルト中央研究所の渡辺幸一博士らの研究チームが明らかにした。
研究チームは、シンガポール国立大学のユアンクン・リー准教授が率いるアジア腸内細菌叢解析プロジェクトの一環として、アジアの5つの国・地域(中国、日本、台湾、タイ、インドネシア)の子どもを対象に、ヒトの健康に関わるとされる腸内細菌叢を調査している。結果は科学誌「Scientific Reports」に発表された。
ヒトの腸内には、数百種、百兆個に及ぶ細菌が生息しており、それらが生態系コミュニティー(細菌叢)を形成している。日々の食事や薬、健康状態、生活環境、そして遺伝的要因などが影響し、腸内細菌叢の個人差が生じている。
アジアは食と人種のるつぼで、アジア諸国の人々がどのような腸内細菌叢を有しているか、医学や健康科学の観点から興味深い。このため、アジアの5つの国・地域の研究者が参加して、この研究プロジェクトが始まった。調査対象には、日常生活で外国文化の影響が比較的少ない小学生を選んだ。
研究チームは、アジアの5つの国・地域のそれぞれ都会と地方の2ヵ所で、7~11歳の各地域25人以上計303人を対象に、ふん便の細菌組成を調査し、食習慣をアンケートした。その結果、アジアの子どもは欧米に比べ、いわゆる善玉菌とされる「ビフィズス菌」を多く保有しており、特に日本と中国の子どもの「ビフィズス菌」の量が多いことが明らかになった。
「ビフィズス菌」は、腸内環境を整え整腸作用を促す有益菌。インフルエンザウイルスの感染予防効果や、花粉症などアレルギー症状の緩和する作用があると報告されている。
日本特有の食習慣や生活習慣が腸内菌に影響
また、アジアの子どもには2つの腸内細菌叢のタイプがあることがわかった。ひとつは、日本、中国、台湾の子どもに多い、「ビフィズス菌」と「バクテロイデス属細菌」を主体とするBBタイプ。もうひとつは、インドネシアとタイのコンケンに目立つ、「プレボテラ属細菌」を主体とするPタイプだ。東南アジアでPタイプが多い原因は、難消化性でんぷんや食物繊維の多いの食事だと考えられている。
「バクテロイデス属細菌」は肉食中心の欧米人に多い菌で、免疫力が低下すると感染症を起こす菌も多いことから、以前は悪玉菌として考えられていた。最近の研究では肥満者には少ないことや、免疫抑制活性があることが分かっており、善玉菌としての側面が注目されている。
日本の子どもの腸内細菌叢は非常に特徴的で、他国に比べてビフィズス菌が多い一方で、悪玉菌とされる大腸菌が少なかった。また、検出される細菌の種類が少なく、個人差も小さいことも特徴となり、いずれも健康状態を良好にするのに効果的だ。研究グループは「日本特有の食習慣や生活習慣がこのような特有の腸内細菌叢に関係している」とみている。
健康的な食事スタイルと注目されているアジアや日本の食文化が、善玉菌のビフィズス菌の増加に影響しており、特に日本の子どもはビフィズス菌が多く、逆に大腸菌などの悪玉菌が少ないという優良な腸内細菌叢を保っている。その一方で、アレルギーが増えており、感染症にかかりやすいなど、免疫系の観点からは必ずしも良好とはいえないという課題もある。
「日本人特有の腸内細菌叢が及ぼす健康への影響についてはさらなる研究が必要。何を食べるとどのような腸内細菌叢が形成され、健康にどのように影響するかひとつずつ明らかにしていきたい」と、中山二郎准教授は述べている。

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