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腸内細菌が糖尿病リスクに影響 腸内環境が血糖値コントロールに関与
2015年03月12日
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腸内細菌が健康に密接に関わっている
お腹の健康ために、ヨーグルトや納豆を食べている人は多い。これらは腸内細菌を増やす食品だ。腸内細菌には、一般に知られていないことも多いが、さまざまな作用がある。
「腸内細菌」という言葉を耳にしたことがある人は少なくないはずだ。腸の中にビフィズス菌、乳酸菌など無数の細菌がすみついていて、健康に大きな影響を与えていることが最近の研究で明らかになっている。
ヒトの腸内には、500~1,000種類もの腸内細菌がすみついている。この菌のかたまりを腸内細菌叢といい、花畑のように見えることから「腸内フローラ」と呼ばれている。
腸内フローラはヒトの健康と病気に密接に関わっており、腸疾患、糖尿病、肥満、メタボリックシンドローム、動脈硬化症などのさまざまな疾病の発症に関係すると考えられている。
腸内環境の健康が保つために、食事を工夫すると効果的だ。「野菜を食べる」、「発酵食品(ヨーグルト、納豆、漬け物など)を食べる」、「肉や卵などのタンパク質食品を食べ過ぎない」といった工夫が役立つ。
食物繊維を摂取するのも効果的だ。食物繊維は野菜や果物・豆類などに多く含まれる。食物繊維は消化・吸収されることなく大腸まで達し、善玉菌の栄養源となって増殖を促す。
善玉菌の数を増やすために、オリゴ糖を摂取するのも効果的な方法だ。オリゴ糖は、大豆、ゴボウ、ネギ、タマネギ、アスパラガス、バナナなどの食品に多く含まれる。
腸内細菌が血糖コントロールに関与
米イリノイ大学が糖尿病の発症リスクの高い男性を対象とした調査で、血糖コントロールと腸内細菌には強い関連があることが示された。
研究には45~75歳の男性116人が参加した。研究チームは参加者を1年間追跡して、血糖コントロールの推移を調査した。
参加者に糖負荷試験を行い、血糖コントロールの状態によって、次の4つのグループに分類した。(1)血糖コントロールが徐々に改善、(2)血糖値がずっと正常、(3)血糖コントロールが徐々に悪化、(4)血糖値がずっと高い(空腹時血糖値が高い)。
参加者の便を調べ腸内フローラの状態を調べたところ、(1)と(2)の血糖コントロールが良好なグループでは腸内細菌が多くみられ、代謝や免疫といった体の機能に良い影響を与える善玉菌が多いことが判明した。
一方、(3)と(4)の血糖コントロールが不良なグループでは、腸内で善玉菌が少なく、悪玉菌が増えていることが確認された。
特に、血糖値がずっと正常だった男性は、腸内に「アッカーマンシア」(Akkermansia)と呼ばれる善玉菌が大量にあることが分かった。
今回の研究では、特定の腸内菌が血糖コントロールに関与しているかどうかは明らかにされなかったが、「糖尿病を改善する腸内フローラがある可能性がある」と、研究者は述べている。
過去の研究でも、肥満の人の腸内にはアッカーマンシア菌が少ないことが示されている。腸内細菌が"糖尿病になりなすい体質"を左右している可能性がある。
腸内フローラが乱れると血糖コントロールも乱れる
順天堂大学の研究チームは、2型糖尿病患者では腸内フローラのバランスが乱れやすいという研究を昨年の6月に発表した。
腸内フローラが乱れることで、腸内でのみ生息しているはずの腸内細菌が血液中で検出され、炎症を引き起こしている可能性があるという。
インスリン抵抗性は、インスリンが体の中で効きにくくなっている状態をさす。インスリン抵抗性により糖が十分に体の中に取り込まれなくなると、血糖が上昇する。
肥満や運動不足などが原因だが、腸内フローラのバランスが乱れにより慢性的な炎症が起こることも一因になっているという。
腸内環境の改善により2型糖尿病に伴う炎症を抑制し、インスリン抵抗性を改善できるようになる可能性がある。
腸内環境は、不規則な食生活や運動不足、ストレスやなどの生活環境や加齢によって悪化するので、注意が必要だ。
Gut bacteria may contribute to diabetes in black males(イリノイ大学 2015年3月5日)順天堂大学大学院医学研究科・代謝内分泌内科学
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