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がんを尿の匂いで早期発見 尿1滴で高い精度でがんを発見
2015年03月17日
九州大学などの研究グループは、体長1ミリの線虫に人間の尿の臭いを嗅がせ、その反応から高い精度でがんを発見する検査法を開発したと発表した。日立製作所などと組んで早期の実用化を目指している。
尿1滴からがんを検出する技術を開発
がん患者には特有の匂いがあることが知られている。今回の研究では、線虫がん細胞に特有の分泌物の匂いに反応することが判明。その後、血液よりも診断が容易である尿に対する反応を調べたところ、がん患者の尿には誘引行動を、健常者の尿には忌避行動を示すことがわかった。
ヒトは匂いと結合する嗅覚受容体を約350種もっているのに対し、線虫は犬と同等の1,200種以上をもっており、匂いを感じる仕組みも哺乳類とほぼ同じで、嗅覚研究のモデル生物となっている。
研究グループは、がん細胞に対する線虫の反応を調べ、特定の臭いに対し反応する誘引行動を示すことを突き止めた。この誘引行動は、正常細胞の培養液に対してはみられず、嗅覚異常の変異体ではみられないことから、がん細胞に特有の分泌物の匂いに対して線虫が反応していることが示された。
線虫はテストをした数十種類のがんすべてに反応を示し、がん患者をがんと診断できる確率を示す感度は95.8%、健常者を健常者と診断できる確率を示す特異度は95.0%であることが判明した。
さらに興味深いことに、がん患者24例中5例については、尿採取時の時点で発見されていなかったがんが判明した。この検査法であれば、従来のがん検診では見つけられなかったがんを早期発見できる可能性があるという。

手軽に安価に全てのがんを診断できる検査法
複数のがん種について調べられる検査として腫瘍マーカーが知られているが、高価で、早期がんについては精度が低いなどの欠点がある。そこで、手軽に安価に高精度に全てのがんを早期に診断できる、がんスクリーニング技術の開発が望まれている。
新たに開発した線虫を用いた検査法であれば、費用は検査1回数百円程度で、腫瘍マーカーの検査が1回数千円以上かかるのに比べ、コスト面で優れている。
がんによる死亡を防ぐ有効な手段は早期発見・治療だが、日本のがん検診受診率は30%にとどまっている。その理由は、「面倒である(医療機関に行く必要がある)」、「費用が高い」、「痛みを伴う」、「診断まで時間がかかる」、「がん種ごとに異なる検査を受ける必要がある」など。
研究は、九州大学味覚・嗅覚センサ研究開発センターの広津崇亮助教、伊万里有田共立病院の園田英人外科部長、九州大学消化器・総合外科の前原喜彦教授らによるもので、オンライン科学誌「Plos One」に発表された。
研究グループの広津助教(神経科学)は「この技術を実用化すれば、がん検診受診率の飛躍的向上とそれによる早期がん発見率の上昇、がんの死亡者数の激減、医療費の大幅な削減が見込まれる」と説明している。
九州大学 味覚・嗅覚センサ研究開発センター
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