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喫煙はうつ病や不安障害のリスクを1.7倍に高める 受動喫煙も危険
2015年03月26日

喫煙する人は、うつ病や不安障害にかかる確率は非喫煙者より70%高いとの調査結果を、英国心臓財団(BHF)が発表した。喫煙者は「たばこがストレス緩和につながる」と考えがちだが、それは間違いだと強調している。
喫煙はストレスを増す うつ病などが70%増加
BHFの発表は、3月11日の「世界禁煙デー(No Smoking Day)」に先立って行われたもので、それによると、喫煙者のメンタルヘルスを向上するためにもっとも効果的なのは禁煙することだという。
40歳以上の6,500人の男女を対象とした調査で、うつ病や不安障害を経験したことがあると報告した割合は、喫煙しない人の10%、禁煙を実行した人の11.3%に上ったのに対し、喫煙者は18.3%に達することが判明した。
また、英国の喫煙者の3分の1以上(36%)は、「喫煙によってストレスが和らぐ」と認識していることが分かった。だが実際の調査結果は、喫煙に対する認識とは相反するものになった。
禁煙すればメンタルヘルスが改善
興味深いことに、たばこを吸っている期間が長かった人でも、禁煙に成功するとうつ病や不安障害の割合は、非喫煙者と同等に下がっていることだ。このことは、たばこをやめることがメンタルヘルスを改善するのに効果的であることを示している。
「喫煙者の多くは、喫煙が不安やストレスを軽減すると信じているが、これは間違いです。実際には、喫煙によるリラックス効果はごく一時的なもので、すぐにたばこに対する禁断症状と吸いたいという欲求に取って代わられます」と、BHF副医長のマイク ナプトン氏は説明する。
なかなか禁煙に踏み込めない人は、「ストレスが多すぎるので、たばこをやめるのは難しい」「来週になったら禁煙する」などと考えがちだが、実際に禁煙に成功するとストレスの根本原因を減らすことができるという。
ナプトン氏もかつては喫煙者だったが、「たばこをやめることでストレスを軽減できることを実感しました。もはや喫煙を再開しようとは考えもしません」と述べている。
たばこは心筋梗塞や脳卒中、各種のがんの発症リスクを増やすが、禁煙すればそれらのリスクは際立って減少していく。「たばこをやめることが健康のためにもっとも効果的です」と指摘している。
受動喫煙で家族を危険にさらす
BHFは受動喫煙に関する調査結果も発表した。喫煙者の3分の1以上(37%)は、家庭内でも喫煙をし、家族を受動喫煙の危機にさらしているという。
驚くことに、喫煙者の6分の1以上(18%)は「室内で喫煙していても、窓を開ければたばこの有害の煙の影響を減らすことができる」と誤解していることも判明した。
室内での喫煙は、子どもの呼吸器感染症、ぜんそく、乳児突然死などのリスクを上昇させる。窓を開けただけでは、有害な化学物質を吸い込むのを防ぐことは不可能だという。
受動喫煙にさらされた子どもは、そうでない子どもに比べ、成長すると自身が喫煙者になる可能性が3倍以上高いという調査結果もある。
「受動喫煙による健康リスクの高い家庭では、喫煙による健康被害について、"自分の健康を気にしている"という人(32%)よりも、"喫煙をする家族のことを心配している"という人(61%)の方が圧倒的に多かったのです。そうした家族の54%は、喫煙者が禁煙することを願っています」と、ナプトン氏は指摘している。
Smokers at increased risk of depression and anxiety(英国心臓財団 2015年2月24日)More than one in three smokers putting loved ones at risk(英国心臓財団 2015年3月11日)
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