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残留農薬が多い野菜を食べると男性の精子が半減 米研究
2015年04月23日

残留農薬レベルの高い果物や野菜を多く摂取すると、男性の精液の質が低下するという調査結果が発表された。農薬が健康に良くないことは広く知られているが、考えられている以上にマイナスの影響は大きい可能性がある。
農薬の残留濃度が高い野菜を食べると精子が半分に減る
研究は、この研究は米国のハーバード公衆衛生大学院の研究チームによるもので、英学術誌「ヒューマン・リプロダクション」に発表された。米国立環境保健科学研究所(NIEHS)による資金提供を受け、環境とリプロダクティブヘルスに関する研究の一環として、2007~12年に不妊治療治療を受診した18~55歳の男性155人が参加して行われた。
研究チームは、5年間にわたり338件の精子サンプルを採取・分析し、どんなものをどれだけ食べるか、野菜や果物を洗浄したり皮をむいたりしているかといった食習慣についての聞き取り調査を行った。
米国農務省のデータベースによると、農薬の残留濃度が比較的高いのはコショウ、ホウレンソウ、イチゴ、リンゴ、西洋ナシなどだという。反対に残留濃度が低いのは、エンドウ豆、豆類、グレープフルーツ、玉ネギなどだ。
参加者が摂取した残留農薬レベルを「低」「中」「高」に区分して解析した。その結果、残留農薬が多く含まれる野菜や果物を、多く摂取していた男性(1.5カップ/1日)と、少なく摂取していた男性(0.5カップ/日)を比較したところ、多く摂取していた男性は精子の数が49%少なく、正常な精子の割合も32%少ないことが明らかになった。
野菜や果物を食べるメリットはなおも大きい
米国では農薬を使わない有機栽培野菜の人気が高まっているが、今回の研究はそれを裏付ける結果になった。
「農薬が残った野菜や果物を食べることで、男性の精子が減少することが確認されたはじめての研究です」と、ハーバード公衆衛生大学院のジョージ チャバロ助教授は言う。
ただし、残留農薬が少ない野菜や果物を多く食べていた男性では、少なく食べていた男性に比べ、正常な精子の割合は多いことも確認された。
「市場に出ている野菜や果物の大半は、残留農薬が抑えられています。野菜を多く食べると、肥満や高血圧、2型糖尿病の発症リスクを抑えられるなどメリットも多いことが分かってます」と、チャバロ助教授は指摘している。
「食品に付着した農薬には注意した方が良いのですが、野菜や果物の摂取量を減らすべきできではありません」と注意を促している。
Eating fruits and vegetables with high pesticide residues linked with poor semen quality(ハーバード公衆衛生大学院 2015年3月30日)
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