ニュース
犬とのふれあいが愛情ホルモンを刺激 うつ病や認知症の治療に応用
2015年04月23日

人と犬がふれあうことで、「愛情ホルモン」であるオキシトシンの分泌が増えるという研究が発表された。犬などの動物を使った「動物介在療法」を、うつ病や認知症の改善、がん治療などで活用する動きが出てきた。
動物とのふれあいから生まれるさまざまな効果が医療や福祉、教育の現場で活用され始めている。「動物介在療法」と呼ばれるこれらの活動では、うつ病や認知症の改善、社会的機能や身体的機能の向上など、治療を受ける人に合わせた治療目的を設定し、治療効果の検証が行われている。
犬と見つめ合うことで「愛情ホルモン」の分泌が活発に
犬と人間が互いの目を見つめ合うことで、双方にオキシトシンの分泌が促進されるとの研究論文を、麻布大学動物応用科学科などの研究チームが米科学誌「サイエンス」に発表した。オキシトシンは視床下部から分泌されるホルモンで、生殖と成長に深く関わるホルモンとして注目されている。
オキシトシンは、母性の目覚めや、愛情・友情・信頼などの感情に関与しているとされ、優しくなでたり、抱き合ったりといった皮膚接触によって分泌が増えることが知られており、「愛情ホルモン」とも言われている。
これまでの研究では、母親が赤ちゃんの目を見つめることで、オキシトシン生成が促進され、愛情、保護、親近感などの感情がわき上がることが示されていた。今回の研究では、犬と人間のアイコンタクトを通じ、オキシトシンの分泌が高まることが判明した。
実験の対象となったのは、一般家庭で飼われているイヌとその飼い主30組。飼い主をよく見つめるグループと、あまり見つめないグループそれぞれに分けて、イヌと飼い主との交流によって尿中のオキシトシン濃度がどのように変化するかを調べた。
犬によく見つめられた飼い主8人は、見つめられる時間が短かった22人と比べてオキシトシンの濃度の上昇が大きかった。飼い主が犬にふれる時間が長いほど、犬のオキシトシンの濃度は上がる傾向にあった。
「イヌの視線がアタッチメント(愛着)行動として、飼い主の脳内でオキシトシンの分泌を促進する。それによって促進した相互のやりとりは犬のオキシトシン分泌も促進する」と、研究者は説明している。
動物介在療法でうつ病や認知症、がんの治療を向上
米国では犬などのペットを飼っている家庭は7,100万世帯に上る。カリフォルニア大学ロサンゼルス校の動物介在療法プログラムによると、ペットを飼っている人は、そうでない人に比べ、うつ病や気分障害を発症する割合が低いという。うつ病の高齢者が動物にふれあうことで、症状が軽減されることも確認された。
犬などの動物にふれることで、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が減少し、脳内の神経伝達物質であるセロトニンが増え、さらには心拍数や血圧が下がる効果を得られるという。
ニューヨーク市のベス イスラエル医療センターが行った研究では、治療を受けているがん患者が犬などの動物にふれあうことで、メンタル面が安定するようになり、生活の質が向上することが確認された。
研究には頭頚部がんを発症した37人の患者が参加した。参加者はストレスの大きい化学療法と放射線療法を受けていたが、1回15~20分の犬とふれあう時間を作ることで、6週間後に感情的な充足度が向上したという。
また、米国のメリーランド大学が行った研究では、犬とのふれあいを続けることが、認知症患者のメンタルヘルスと身体機能の維持・向上に効果があること分かった。40人の認知症の高齢者を対象としたこの研究では、犬との定期的な交流を含む動物介在生活プログラムを実施した後、うつの症状が軽減されることが分かった。
この研究では、犬とふれあう60分~90分のセッションを毎週2回、3ヵ月にわたって実施。ペットを介在したプログラムによって、メンタル面だけでなく身体機能の向上もみられる傾向が示されたという。
ヒトとイヌの生物学的絆を実証(麻布大学 2015年4月17日)UCLA People-Animal Connection(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)
ベス イスラエル医療センター
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2022 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「メンタルヘルス」に関するニュース
- 2021年12月20日
- 「住環境」は健康増進にも影響 「断熱と暖房」が血圧や住宅内での活動量に寄与 足元が暖かいことも大切
- 2021年12月13日
- 【新型コロナ】子供の心の実態調査 食事を食べられなくなる「神経性やせ症」の子供がコロナ禍で増加
- 2021年12月08日
- 「今求められる女性の健康サポート」へるすあっぷ21 12月号
- 2021年12月07日
- 「少食+運動不足」の女性は健康リスクが高い 運動習慣のない人も取り組みやすい「女性のためのエクササイズ」動画を公開
- 2021年12月07日
- 筋肉が減る「サルコペニア」は早期に対策すれば防げる 運動を意識して行い、筋肉の量と機能の低下を防ぐ
- 2021年11月30日
- 内臓脂肪が多いと認知症リスクが上昇 脳の異常も発生 内臓脂肪を減らせばリスクを減らせる
- 2021年11月30日
- 【新型コロナ】感染拡大で価値観を揺るがされ抑うつや不安に 感染対策に協力できているという達成感が救いに
- 2021年11月22日
- 【新型コロナ】ワクチン接種を受けたがらない人の心理的要因は? 誤った情報に振り回されている可能性が
- 2021年11月22日
- 【新型コロナ】コロナ禍で孤食が増加 孤独はさまざまな健康リスクをもたらす 高齢女性でとくに深刻
- 2021年11月16日
- 【新型コロナ】ウォーキングなどの運動でうつや不安を解消 座ったままの時間が長いとうつリスクが上昇
最新ニュース
- 2022年06月27日
- ペットは健康に有用? ペットの飼い主の95%が「ストレス解消に役立つ」 脳の健康にも良い影響
- 2022年06月27日
- 東日本大震災後の高齢者のフレイルを調査 習慣的に運動をすることが低栄養リスクを下げる
- 2022年06月27日
- 日本人高齢者の認知機能は向上している 認知機能障害が減少 国立長寿医療研究センター
- 2022年06月27日
- 片足で10秒間立てれば死亡リスクは低下 「片足立ち」は日常的で簡易なテストとして有用
- 2022年06月27日
- 【新型コロナ】学校での感染の実態を調査 中学生以下はクラス内、高校は部活での感染が多い 文科省
~保健指導・健康事業用 教材~
-
アイテム数は3,000以上! 保健指導マーケットは、健診・保健指導に役立つ教材・備品などを取り揃えたオンラインストアです。 保健指導マーケットへ