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若年性認知症の実態調査 発症後8割の人が失職 「解雇された」例も
2015年05月07日

若年性認知症の患者に対する生活実態調査で、就労経験がある約1,400人のうち約8割が勤務先を自ら退職したり、解雇されたりしていたことが分かった。働き盛りで家計を支えていた人も含まれ、仕事を失った後の生活への不安は大きい。
65歳未満で発症する「若年認知症」の症状は、高齢者の認知症と同じように記憶障害や判断力の低下など。厚生労働省研究班が2009年に公表した調査では、全国の患者数は約3万7,800人と推計されている。 若年性認知症はアルツハイマー病などの変性疾患(脳の神経細胞が減っていく病気)、頭部外傷、感染症、脳腫瘍など原因は多様だ。
8割が失職 職場の配慮は不十分
調査は「認知症介護研究・研修大府センター」が厚生労働省の補助を受けて実施。愛知、大阪、岐阜、岡山など15府県の医療機関と介護施設などに2014年8月と10月に調査票を送り、施設担当者らから、18~64歳の若年性認知症患者2,129人についての回答を得た。
対象者の年齢層は61~64歳が1,208人でもっとも多く、56~60歳が547人。性別は男性1,200人、女性922人だった。
発症時に仕事に就いていたのは57.7%で、うち正社員・正職員が31.3%、非常勤・パートが10.4%、自営業が7.8%、契約社員などが4.2%。
そのうち定年前に自ら退職したのは66.1%、解雇されたのは7.7%。休職を含めると全体で78.3%が失職しており、仕事を続けている人は11.4%にとどまった。
発症後の職場の対応につては、「産業医の診察を勧められた」(5.9%)、「専門医を紹介された」(5.4%)、「労働時間の短縮などの配慮があった」(4.5%)、「職場内の配置転換などの配慮があった」(12.7%)となっており、これらの配慮がなかったとの回答も19.5%を占めた。

半数が「生活が苦しい」と回答
家計を支える世代が認知症になると、家族は経済的に厳しくなる。認知症となってからの収入は、家族の収入が5割以上をしめ、あとは本人の障害年金や生活保護費などに頼るしかない。発症後に収入が減ったという人は6割を超え、家計状況について「とても苦しい」「やや苦しい」という回答が4割を占めた。
働き盛りの世代が発症する若年性認知症は、本人だけでなく、家族の生活の影響も大きい。本人や配偶者の親の介護が重なることもあり、介護の負担が大きくなる。身体的、精神的、経済的な負担が大きく、社会的な問題だが、企業や医療・介護の現場では認識が不足している。
身体の障害などであれば、障害者雇用促進法などの法律にもとづき、障害者職業訓練コーディネーターなどが、職場と患者をつなぎ、訓練する役割をする制度があるが、若年性認知症で利用された実績がほとんどない。症状が徐々に進行していく認知症に関しては、今後の課題となっている。
40歳以上は介護保険を利用でき、傷病手当金を受けられ、条件を満たしていれば障害年金も受けられるが、調査では利用している人はまだ少ないことも浮き彫りになった。「制度を知らなかったり、抵抗感を感じ利用していないのではないか」と、同センターでは課題を指摘している。
認知症介護情報ネットワーク(認知症介護研究・研修センター)若年性認知症者の生活実態及び効果的な支援方法に関する調査研究事業 報告書
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