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受動喫煙の防止は世界的な潮流 防止条例の制定を提言 日本学術会議
2015年05月26日
2020年のオリンピック・パラリンピック開催を控えた東京都に、公共の場での受動喫煙を防止する条例の制定を求める緊急提言を、日本学術会議が発表した。
受動喫煙防止は世界の潮流 オリンピックでは条例の制定
WHO(世界保健機関)の「たばこ規制枠組条約」が2005年に発効してから10年がたつ。脱たばこ社会(たばこフリー社会)の実現に向けて、日本学術会議はこれまでに5回にわたり提言などを出してきた。
オリンピックを開催する都市で、受動喫煙を防止する条例や法を整備するのは、世界的な潮流となっている。
これまでにオリンピックが開催されたバルセロナ(1992年)、アトランタ(1996年)、シドニー(2000年)、アテネ(2004年)、北京(2008年)、ロンドン(2012年)、ソチ(2014年)といった都市では、受動喫煙防止に向けて罰則付きの条例や法などが整備されたという。
さらに2010年には、国際オリンピック委員会(IOC)とWHOは健康的なライフスタイルとタバコのないオリンピックを目指す合意文書に調印した。
「もし東京都が受動喫煙を放置したままで、オリンピック・パラリンピックを開催するならば、受動喫煙防止を進める世界の潮流を逆行させることになる」と、提言では強調している。
喫煙だけでなく受動喫煙によって、がん、心臓疾患、呼吸器疾患などが引き起こされることはWHO国際がん研究機関などの調査で明らかにされている。建物内の喫煙を禁じればそれらの疾患が減少すると、受動喫煙の害を強調している。
分煙では不十分 発がん物質の濃度を下げられない
提言によると、都はオリンピック・パラリンピック開催が決まった後、公共の場での受動喫煙防止対策についての検討を始めたが、都議会や関係業界などの反対が強く、条例化は困難になったという経緯がある。
「第2期がん対策推進基本計画中間評価」では、喫煙率や受動喫煙の曝露機会の減少という目標を掲げているが、達成状況は悪い。
つまり、公共の場で多くの人々が、やむなくたばこの煙にさらされ続けている。受動喫煙による死亡推計では、死者は少なく見積もっても全国で年間6,800人に上り、このうち半数が職場で受動喫煙にさらされたことによる、という研究報告もある。
たばこの煙には70種以上の発がん物質が含まれる。東京都などが勧めようとしている喫煙区域を設けるいわゆる分煙については、分煙設備により発がん物質の濃度をある程度下げることができても、発がん物質にはこれ以下であれば安全という閾値はなく、費用がかかることもあり、十分な対策にならない。
WHOのガイドラインにそって、すでに世界の多くの国や地域が職場や公共の場での喫煙を法律や条例で禁止している。「東京都は速やかに公共の場での受動喫煙を防止するための法整備(条例化)を行うべきだ」と、提言では強調している。
東京都受動喫煙防止条例の制定を求める緊急提言(日本学術会議 2015年5月20日)
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