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フライドポテトやトーストなどの高温調理にご注意 「発がんリスクあり」

 フライドポテトやポテトチップス、トーストのように、炭水化物を含む食品を120度以上の高温で調理したものを食べるとがんの発症リスクが高まると、欧州食品安全機関(EFSA)が発表した。
アクリルアミドは120度以上の高温調理でできる
 食品は加熱調理する過程でさまざまな化学物質が生成される。その中には、食品を食べやすくする、好ましい風味を醸し出す、保存性を高めるなど有用な効果をもたらすものがある一方で、健康に悪影響をもたらす副産物ができることがある。

 炭水化物を含む食品を120度以上の高温で調理した食品に含まれる有害化学物質のひとつが「アクリルアミド」だ。

 アクリルアミドは、フライドポテト、ポテトチップス、カリカリに焼いたトースト、ビスケット、クラッカーなど穀類を原材料とする焼き菓子など、多くの食品に含まれている。市販の加工食品だけでなく、家庭で加熱調理する際にも生成される。

 アクリルアミドは食品に含まれるアミノ酸の一種アスパラギンと果糖などの糖分が、揚げる、焼く、焙るなどの120度以上の高温で調理する際に「メイラード反応」と呼ぶ化学反応を起きてできる。魚の焼け焦げなどに含まれる物質とは別のものだ。
アクリルアミドが、がんを引き起こす可能性
 スウェーデン食品庁とストックホルム大学が、揚げたり、焼いたりしたジャガイモや穀類加工品に、発がん性のあるアクリルアミドが高濃度に含まれる可能性があることを、2002年に世界ではじめて発表した。

 この発表以来、欧米諸国が中心となり食品中のアクリルアミドに関する調査研究や、食品中のアクリルアミドを低減するための取組みが進められている。日本の農林水産省も2003年から本格的に調査研究を開始した。

 欧州連合(EU)の食品安全政策を所管する欧州食品安全機関(EFSA)の2015年の発表では、「専門調査委員会があらためてアクリルアミドのリスクを評価したところ、DNAを損傷しがんを引き起こすとの結論に至った」としている。

 動物実験では、アクリルアミドが遺伝物質(DNA)に傷をつけて突然変異を誘発し、これが蓄積すると染色体異常を引き起こしてがんになる可能性のあることが示された。人がアクリルアミドを摂取した場合も同じように遺伝子を傷付ける可能性があるという。
アクリルアミドの摂取を減らす方法
 発がんリスクが指摘されるアクリルアミドだが、どうしたら摂取を減らすことができるのか?

 一般的にデンプン質を多く含む食材を高温で長時間調理したり、揚げたり炒めたりすると、アクリルアミドができやすくなる。発生を抑えるには調理する温度を上げすぎたり時間をかけすぎたりしないなどの注意が必要だ。

 また、「焼く」「揚げる」「炒める」などの方法ではアクリルアミドができやすく、「煮る」「茹でる」などの方法ではアクリルアミドができにくい。

 ▽揚げ物を調理するときは温度と時間を守って揚げすぎない、▽フライドポテトやコロッケなどのジャガイモ料理は褐色でなく黄金色に、▽パンをトーストするときには焦がさず薄いきつね色に――EFSAはアクリルアミドの低減策を提案している。

 ジャガイモは、低温で保存するとアクリルアミドができる原因となる食品成分であるブドウ糖と果糖が増える。そのため、低温で長期貯蔵されたジャガイモを、フライドポテトのような高温調理に使用することは避けるべきだとしている。
揚げ物や脂肪の多い食品の摂取を控えると効果的
 国内では農林水産省が2013年11月に「食品中のアクリルアミドを低減するための指針」を公表、食品業界に対策を促した。原料になるジャガイモや穀類について、アクリルアミドを抑える調理法や保存法などを詳細にまとめた。

 食品メーカーは、アクリルアミドを減らすよう加工法を改良したり、ジャガイモの保存温度を工夫するなどの対策をしている。

 農水省の調査でも、特にアクリルアミドが多かったジャガイモを端境期に長期間貯蔵して作ったポテトチップスで含有量が減った。2013年度の調査では、2007年度の調査に比べて、アクリルアミド濃度の平均値が7割程度に減った。

 アクリルアミドが含まれている食品の食べる量を極端に減らし、栄養バランスが崩れるようなことがあるのも良くない。

 まずは、揚げ物や脂肪の多い食品の摂取を控え、野菜や果物を多く含む食品をバランス良く食べることが、アクリルアミドの低減に有効だ。

Acrylamide in food is a public health concern(欧州食品安全機関 2015年6月4日)
食品中のアクリルアミドに関する情報(農林水産省)
[Terahata]
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