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2型糖尿病の人は内臓脂肪が増えると動脈硬化が進行しやすくなる

 内臓脂肪が多くて皮下脂肪が少ない2型糖尿病の人は、動脈硬化が進行しやすくなっていることが、日本人の2型糖尿病患者を対象とした研究で明らかになった。
内臓脂肪が多過ぎると動脈硬化が進行しやすくなる
 肥満は、脳卒中や心筋梗塞などの命に関わる深刻な病気の原因とされ、特に内臓脂肪が多過ぎると動脈硬化が進み、危険性がより高くなるとされる。2型糖尿病の人が、内臓脂肪が多くて皮下脂肪が少ない場合に、動脈硬化が進行しやすくなることが日本人を対象とした研究で明らかになった。  この研究は、東京医科歯科大学医学部附属病院 糖尿病・内分泌・代謝内科の坊内良太郎氏らによるもので、医学誌「Cardiovascular Diabetology」に発表された。

 研究には平均年齢65歳の2型糖尿病患者148人(男性 82人、女性 66人)が参加した。研究チームは、参加者の内臓脂肪と皮下脂肪の面積を測定し、「アテローム性動脈硬化」の指標との関連を調べた。

 「アテローム性動脈硬化」は、高血圧や高血糖などの理由により血管内膜が障害され、その隙間から血管内膜の下にコレステロールなどがたまってアテローム状(粥状の塊)になった状態。初期の段階では自覚症状はないが、脳梗塞、心筋梗塞などの深刻な病気の原因になる。
男性では内臓脂肪が多く皮下脂肪が少ない人が多い
 病院などでは動脈硬化を早期発見したり、進行具合を確かめるために「頸動脈エコー検査」が行われることが多い。これは脳に血液を送る首の動脈(頸動脈)を超音波で測る検査だ。

 頸動脈エコー検査の際に計測されるのが、動脈硬化の指標のひとつである「中膜内膜複合体(IMT)」だ。IMTとは三層からなる動脈壁の内膜と中膜を併せた厚さのこと。頸動脈のIMTが厚いと動脈硬化と判定され、全身の動脈硬化も進行している可能性が高い。IMTの値が1.1mmを超えると脳血管障害や虚血性心疾患のリスクが上昇するとされている。

 またIMTが厚くなる以外にも、血管壁に限局性の肥厚がみられる場合がある。これをプラークと呼び、動脈硬化の重要な指標となる。糖尿病・高血圧・脂質異常症・肥満などがあると、血管壁が厚くなって脳卒中や心筋梗塞などのリスクが高くなる。

 今回の研究では、内臓脂肪が多く皮下脂肪が少ない人ほど、動脈硬化が進行している傾向があることが分かった。男性では内臓脂肪が多く皮下脂肪が少ない人が多く、女性では内臓脂肪が少なく皮下脂肪が多い人が多かった。

 脂肪は主に「皮下脂肪」と「内臓脂肪」の2種類ある。動脈硬化を引き起こしやすいのは内臓脂肪だ。腹腔内の内臓脂肪面積が100平方センチ以上ならば「内臓脂肪型肥満」と判定される。

 今回の研究は、一時点のデータを解析しているため、糖尿病と動脈硬化の因果関係について調べるためにさらなる研究が続けている。しかし今回の研究結果から、内臓脂肪が多過ぎると動脈硬化が進行しやすいことはほぼ明らかになった。

 「糖尿病で肥満のある患者のうち、内臓脂肪が多過ぎる人は、食事や運動などの生活習慣を見直すとともに、動脈硬化の進行を抑える治療が必要となる」と、研究者は述べている。

東京医科歯科大学医学部附属病院 糖尿病・内分泌・代謝内科
High visceral fat with low subcutaneous fat accumulation as a determinant of atherosclerosis in patients with type 2 diabetes(Cardiovascular Diabetology 2015年10月7日)
[Terahata]
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