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男性の薄毛・脱毛「AGA」 髪の毛の遺伝子でリスク判定し効果的に治療

 1本の髪の毛の検査から、将来の薄毛や脱毛のリスクが分かる――そんな世界初の検査法が日本で開発された。これまでの検査法に比べて格段に精度が高いという。

 新たに開発された検査により自分の髪の毛の状態が分かれば、より最適な治療法を選べるようになる。いったいどのような検査なのか。
毛根の遺伝子をみて薄毛の原因を調べる検査
 男性の薄毛・脱毛は「AGA」(エージーエー)と呼ばれる。男性型脱毛症(Androgenetic Alopecia)という医学用語の略だ。AGAで悩む人は、現在全国で1,260万人ともいわれ、男性ホルモンや遺伝の影響などが主な原因と考えられている。

 メンズヘルスクリニック東京院長の小林一広氏と、聖マリアンナ医科大学幹細胞再生医学講座の特任教授である井上肇氏が、AGAの新しい検査法を10月に都内で開催されたセミナーで発表した。

 AGAの人では一般的に、額の生え際や頭頂部周辺の毛が薄くなり、脱毛が進行する。進行の程度は人によって異なり、前頭部や頭頂部、どちらかが進行する場合も、両方薄くなる場合もある。

 今回、新しく開発されたのは「AGAリスク遺伝子検査」。薄毛部位より毛髪を採取し、その根元に付着している「毛包」という部位を検査する。

 髪の毛1本1本には寿命があり、伸びては抜け、また新しく生えることを繰り返している。毛包は、成長期、退行期、休止期のいずれかの状態にあり、このうち成長期が一番長く通常は2~6年間続く。

 しかし、AGAの人は成長期が短くなるため、髪の毛が十分に成長しない。原因として「5αリダクターゼ」という酵素が深く関わっており、この酵素が「ジヒドロテストステロン」(DHT)を産生する。

 このDHTは毛乳頭細胞などにある「アンドロゲンレセプター」(AR)に結合し、毛根を強力に萎縮させてしまうシグナルを発信する。すると髪の毛が成長しなくなり脱毛が起こる。

 この検査は、5αリダクターゼのI型とII型の発現強度を調べて、男性型脱毛症を発症しやすいかどうかをみる検査だ。
男性ホルモンの影響を遺伝子より診断
 AGAの治療薬には「デュタステリド」「フィナステリド」などがある。新しい検査では、どの治療薬が自分に合っているかを判定することもできるという。

 「AGAを発症する前に、原因物質のジヒドロテストステロンが発現しやすいということが分かれば、発現量を抑える薬を飲むという予防的な治療も可能となります。発症リスクを自覚した上での予防にも役に立ちます」と、メンズヘルスクリニック東京の小林院長は言う。

 AGAのリスクが判定できる検査として、「アンドロゲンレセプター遺伝子検査」という血液を分析する方法もある。毛根の細胞に強く作用し脱毛を起こす男性ホルモンの影響を受けやすいかを遺伝子より診断する検査だ。

 男性ホルモン(アンドロゲン)は毛根細胞の受容体によって受け取られ、その細胞に入って作用するアンドロゲン受容体遺伝子には特定の塩基配列が繰り返し存在する領域があり、この領域が短い人では、AGAが発症しやすい傾向にあることが分かっている。

 「アンドロゲンレセプター遺伝子検査は、体質的にその人がAGAになりやすいかどうかを調べるものですが、遺伝が原因でAGAを発症する男性は25%とされています。遺伝子で全てが決まるというわけではありません」と、小林院長は言う。
環境や生活習慣もAGAの原因になる
 遺伝だけが原因であれば、一卵性双生児の2人で薄毛の進行は同じ程度になるはずだが、小林院長らの研究で、仕事や食生活、飲酒や喫煙などの生活習慣によって同じ年齢でも進行度合いは異なるという結果になった。

 つまり、遺伝が全てではないということだ。AGAは遺伝の影響に加え、環境や生活習慣などの因子の影響も無視できないという。

 ストレスもAGAの原因になる。ストレスを強く感じると、自律神経などのバランスが乱れる。その結果、血流が悪化し、毛乳頭まで栄養が行き届かなくなる。

 ストレスは髪の成長を妨げるだけでなく、あらゆる病気に悪影響を及ぼすので、ストレスをためない工夫が必要となる。

 また、食事や生活習慣も重要だ。栄養バランスの悪い食事や喫煙習慣、睡眠不足などで、身体の新陳代謝が低下する。頭皮の状態にも悪影響を及ぼすので、毛髪の健康を損なう原因となる。

 「医療技術が進歩すれば、若いころに検査を受け、リスクが高いと判断された人は自分の生活習慣を見直し、それでもAGAを発症した場合は、どの治療法が効果的かを選択できるようになる可能性があります」と、小林院長は言う。

メンズヘルスクリニック東京
聖マリアンナ医科大学幹細胞再生医学講座
[Terahata]
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