ニュース

「医療ビッグデータ」の活用を提言 10年後に社会や人がどう変わるか展望

 「医療ビッグデータ・コンソーシアム」は「医療ビッグデータ・コンソーシアム 政策提言 2015」を発表した。同提言を内閣官房と総務省、文部科学省、厚生労働省、経済産業省に提出する。
医療ビッグデータ・コンソーシアムが「政策提言 2015」を発表
 日本は世界に先駆けて超高齢社会を迎えており、医療費の適正化のみならず、「疾病予防」「先制医療」「個の医療」に資する「医療ビッグデータ」の活用が大きなカギを握っている。同コンソーシアムは、製薬企業やIT企業など16社が会員企業に名を連ね、産官学が連携してこれらの課題に取り組むことを目的としている。

 「医療ビッグデータ」は、電子カルテデータ、レセプトデータ、診断群分類・包括評価(DPC)、特定健診データおよびゲノムなどの分子生物学的データなど、ヒトの健康情報に関するデータを大規模に集積したデータをさす。

 医療ビッグデータの分析・評価が進化することで、新たな治療技術の発見や創薬などの医学・医療の技術革新、そして、医療の効率化・最適化、医療費の適正化などを実現する可能性がある。

 現状では医療機関ごとにデータ蓄積が行われ、医療ビッグデータをどのようにつないでいくのか、さらにこれを分析するスペシャリスト(ヒューマンデータ・サイエンティスト)の不足など、医療ビッグデータの構築、分析・評価のスタンダード確立に至っていない。

 同コンソーシアムは、(1)日々集積されている医療ビッグデータが十分に利活用されていない、(2)NDB(ナショナルデータベース)をはじめとする医療ビッグデータが、行政、医療機関、保険者、研究機関等で独自に構築、管理され、その多くが連結されていない――といった課題を指摘。特に電子カルテデータについては、いまだその情報統合がなされていないという。

 今回の政策提言は、(1)医療ビッグデータを「つなぐ」、(2)医療ビッグデータを「生(活)かす」、(3)医療ビッグデータで「変える」、という3つの柱から成る。2035年の日本社会を見据え、「つなぐ」ことで健康寿命の延伸を、「生かす」ことで医学・医療の技術革新をそれぞれ実現。これらを通じ、日本を「変える」ことを目指す。

 「データはつながってこそ意味があるが、医療データは行政や保険者、研究機関などに分散してあり生かされていない。例えば、入院患者の臨床情報と医療報酬明細を組み合わせれば、患者の在院日数を適切な長さに短縮でき、医療費の削減につながる。これらのデータがつながるだけで、相当なことが期待できる」と、同コンソーシアムの代表世話人で三菱総合研究所理事長の小宮山宏氏は言う。
医療ビッグデータを活用するための先進的な取り組み
 現在、科学技術振興機構などが中心となり、「センター・オブ・イノベーション」(COI)プログラムが18ヵ所で進行している。COIプログラムとは、10年後にどのように社会は変わるべきか、人は変わるべきかを想定し、そこからバックキャストして取り組むべき課題を選定したもの。

 例えば、弘前大学のCOI「真の社会イノベーションを実現する革新的『健やか力』拠点」では、青森県住民のコホート研究による約1万1,000人の膨大な健康情報を解析し、「疾患予兆発見の仕組みの構築」と「予兆に基づいた予防法の開発」を目指している。従来の医療は生活習慣病に罹患してからそれを治療することであったが、予防することに焦点を絞った医療サービスが求められている。

 東北大学のCOI「さりげないセンシングと日常人間ドックで実現する理想実現と家族の絆が導くモチベーション向上社会創生拠点」では、超小型高性能で安全な、お米、箸、茶碗、絆創膏タイプのセンサを開発。日常生活の中から行動や心身の情報をさりげなく収集することによって、常に自分や家族の生活態様や健康状態が分かり、周囲が見守り支援することにより「強い絆」を構築し、生きがいにあふれた社会を創ることを目指している。

 こうしたCOIプログラムは医療ビッグデータを有効に活用するための先進的な取り組みだ。「新たな知見や価値観を創出することが期待される医療ビッグデータが、手つかずのままの現状は、医療産業における研究開発の進展を妨げ、国際競争力を低下させるばかりか、日本の医療システム改革を阻む要因となっている。国が積極的な取り組みをしてくれれば、素晴らしい未来がひらける」と本庶祐・先端医療振興財団理事長は言う。

 「データを知恵をもって利用することで、はじめて問題解決に役立つ情報になる。ビッグデータをいかに情報化していくか、その知恵が試されている」と、同コンソーシアム 代表世話人で京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野教授の中山健夫氏は強調している。

医療ビッグデータ・コンソーシアム
センターオブイノベーション(COI)プログラム(科学技術振興機構)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「健診・検診」に関するニュース

2024年04月25日
厚労省「地域・職域連携ポータルサイト」を開設
人生100年時代を迎え、保健事業の継続性は不可欠
2024年04月22日
【肺がん】進行した人は「健診やがん検診を受けていれば良かった」と後悔 早期発見できた人は生存率が高い
2024年04月18日
人口10万人あたりの「常勤保健師の配置状況」最多は島根県 「令和4年度地域保健・健康増進事業の報告」より
2024年04月18日
健康診査の受診者数が回復 前年比で約4,200人増加 「地域保健・健康増進事業の報告」より
2024年04月09日
子宮の日 もっと知ってほしい子宮頸がんワクチンのこと 予防啓発キャンペーンを展開
2024年04月08日
【新型コロナ】長引く後遺症が社会問題に 他の疾患が隠れている例も 岡山大学が調査
2024年03月18日
メタボリックシンドロームの新しい診断基準を提案 特定健診などの56万⼈のビッグデータを解析 新潟⼤学
2024年03月11日
肥満は日本人でも脳梗塞や脳出血のリスクを高める 脳出血は肥満とやせでの両方で増加 約9万人を調査
2024年03月05日
【横浜市】がん検診の充実などの対策を加速 高齢者だけでなく女性や若い人のがん対策も推進 自治体初の試みも
2024年02月26日
近くの「検体測定室」で糖尿病チェック PHRアプリでデータ連携 保健指導のフォローアップなどへの活用も
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶