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ジカ熱が日本で発生する確率は16.6% 夏に備えて蚊の駆除など対策
2016年04月14日

中南米を中心に流行が広がっているジカ熱の感染が、2016年に日本で発生する確率は「16.6%」と、北海道大学の研究チームが発表した。
日本は感染リスクの低い国 過度の社会的不安を煽る必要はない
ジカ熱は、日本のほとんどの地域でみられるヒトスジシマカを媒介とするウイルス感染症。主な症状は高熱や頭痛、関節痛、発疹などで、感染しても症状がないか、症状が軽いため気付きにくいこともあり、症状が2~7日続いた後にほとんどが治る。
しかし有効なワクチンがなく、妊娠初期の女性がジカウイルスに感染すると、胎児の一部に小頭症が発生するリスクがあることが明らかになっている。また、手足のまひを伴う病気「ギラン・バレー症候群」を引き起こす可能性も指摘されている。
研究グループは独自に統計モデルを開発し、ジカ熱の流行に関する地理情報システム(GIS)のデータや、航空機による渡航客の移動、さらにウイルスを媒介する蚊に関するデータなどをもとに、各国内でジカ熱が広がる可能性を推計した。
その結果、2016年に日本で感染が発生する推計値は16.6%であることが判明。この数値はメキシコで48.8%、台湾で36.7%と亜熱帯や熱帯地域で高い。一方、英国は6.7%、オランダは5.3%と、温帯地域の国では日本よりも低い数値が出た。
研究グループは、「日本のような国内での感染リスクが低い国では、過度の社会的不安を煽る必要はない。妊婦や妊娠の可能性がある女性は流行地への渡航を控え、流行地への渡航者は防蚊対策を徹底して、感染を避けることに注力するべきだ」と述べている。
地方自治体や企業は全国で蚊の駆除などの対策を計画
これまで国内でジカ熱の感染が広がった報告例はないが、中南米で流行が拡大した昨年5月以降、ブラジルなど中南米に滞在、帰国した7人が発症している。
世界保健機関(WHO)は2月1日に緊急事態を宣言し、日本政府も感染症法の「4類感染症」に指定した。感染者が出た場合は医師による保健所への届出が義務となり、検疫所での診察・検査、汚染場所の消毒などの措置が必要となる。
日本感染症学会もジカウイルス感染症の専門医療機関のリストを公表し、診療体制の整備が進められている。
8月のリオデジャネイロ五輪・パラリンピックが始まるとブラジルへの渡航者は少なくとも1万人を超えると予想されている。
このため政府は4月1日、地方自治体や企業など国全体で蚊の駆除対策をとる国民運動を展開することや、感染を心配する妊婦からの電話相談に応じる仕組みを5月上旬をめどにつくることなどを盛り込んだ対策を公表している。
この研究は、北海道大学大学院医学研究科社会医学講座の西浦博教授らによるもで、科学誌「PeerJ」に発表された。
北海道大学大学院 医学研究科 社会医学講座 公衆衛生学分野ジカウイルス感染症について(厚生労働省)
ジカウイルス感染症専門医療機関(日本感染症学会)
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