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膵臓がんは早期診断が難しい 血液検査で早期発見する技術を開発
2016年06月08日

早期発見が難しい膵臓がんを血液検査で見つけ出す技術を開発したと、東京大学の研究チームが発表した。
膵臓がんは難治性のがんの代表
日本では膵臓がんの患者数は増加しており、がんの部位別の死因数の第4位になっている。国立がん研究センターによると、毎年3万人以上が膵臓がんで亡くなっている。
膵臓がんは早期診断が難しく、ほとんどの患者は診断時に高度進行の状態でみつかり、外科的な切除が難しいケースが多い。がんの治療法は進歩しているが、現在でも罹患者数と死亡者数がほぼ同数である難治性のがんの代表だ。
そのため、高感度で検診レベルに導入可能な、低侵襲・低コストなバイオマーカーを開発し、膵臓がんのリスクの高い人を早期発見できる検査法の導入が求められている。
膵臓がんに多くあり、血液中にわずかに流出している特定のリボ核酸(RNA)を測定する方法を開発したと、東京大学医学部付属病院の岸川孝弘氏、大塚基之氏らが米医学誌「JCIインサイト」に発表した。血液検査でこのRNAを調べれば、膵臓がんを早期発見できる可能性がある。
このRNAは、一定の塩基配列が数多く反復する領域から主に転写されて出てくる。通常の状態ではほとんど転写されないが、がんなどの異常に伴ってRNAとして発現するという。
膵臓がんを採血のみで早期に診断
このRNAが膵臓がんに多いことは2011年に米マサチューセッツ総合病院の研究チームが報告していたが、既存の方法では増幅が難しく、血液中の量を測定できていなかった。
研究チームが開発した2つの検査法を組み合わせることで、このRNAを簡便かつ鋭敏に検出することが可能になった。膵臓がん患者と健康な人それぞれ30人の血清で測定したところ、患者の方がこのRNAの量が5倍程度多かった。一定量を基準にしてみると、患者は22人が「陽性」となり、健康な人は27人が「陰性」となった。
さらに、膵臓がんの前癌病態と考えられている「膵管内乳頭粘液性腫瘍」(IPMN)のある人でも、この検査法が効果的であることを確かめた。
「検診での血液検査で膵臓がんが疑われる人をみつけられるようになれば、精密検査による早期発見につなげられる。今後はさらに多数の検体で検証を重ねていく。将来は膵臓がんを採血で早期に診断できるようになると期待している」と、東大病院消化器内科の岸川孝弘氏は述べている。
東京大学医学部付属病院
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