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女性の健康の敵は長時間労働? 女性を守る「ワーク ライフ バランス」
2016年06月23日

長時間労働に従事する女性は、2型糖尿病、心臓病、がんなどの発症リスクが上昇することが、7,500人の女性を30年以上調査した研究で明らかになった。
女性の長時間労働の負担やストレスは男性を上回る
オハイオ州立大学の研究チームによると、週に平均60時間、30年以上は働いている女性は、2型糖尿病、がん、心臓病、関節炎の発症リスクがそれぞれ3倍に上昇するという。
こうした病気の危険性は、週の労働時間が40時間を過ぎると上昇をはじめて、50時間になると明らかに発症率が高まる。
しかも女性が長時間働いているときの負担やストレスは、同時間働いている男性よりも大きい可能性があるという。
「結婚している女性の多くには、仕事に家事の負担も加わります。仕事と家庭の両立をはかる"ワーク ライフ バランス"に対する満足度は、女性の年齢が上がると低下する傾向があるという調査結果があります」と、オハイオ州立大学公衆衛生学部のアラール デムベ教授は言う。
「企業と政府の双方が協力して、週の労働時間が40時間が超える女性の健康状態に対しては特に注意を払うべきでしょう。女性が健康であることは、企業の利益になるだけでなく、医療費の削減にもなつがります」と、デムベ氏は指摘している。
2型糖尿病、がん、心臓病のリスクが3倍に上昇
米国のオハイオ州立大学やメイヨークリニックの研究チームは、1998年に40歳以上だった労働者1万2,000人以上を対象に、労働時間と健康状態の関連を平均32年にわたって追跡して調査した。研究は米国労働省労働統計局によって支援された。
週の労働時間は41~60時間が56%、51~60時間が13%、60時間以上が3%だった。高血圧、糖尿病、心臓病、がん、関節炎、リウマチ、気管支炎、ぜんそく、うつ病などの発症リスクについて調査した。
その結果、女性では30年超にわたり1週間あたりの仕事時間が平均60時間であると、2型糖尿病、がん、心臓病、関節炎のリスクが3倍に増加することが示された。
男性ではこうした傾向はみられず、むしろ週の勤務時間が41?50時間の男性では、40時間以下の場合に比べね心臓病、肺疾患、うつ病のリスクは低くなっていた。
女性の健康管理を促進するプログラムが必要
「女性が実務経験を集中的に積むと、仕事で多数の役割を求められるようになり、仕事の負担やストレスは男性よりも重くなり、勤務期間も長くなる傾向があります。結果として、女性ではさまざまな病気のリスクも高くなるおそれがあります」と、デムベ氏は言う。
労働時間が長いと、ストレスや健康の管理が難しくなり疲れやすくなり、睡眠や胃腸の障害が起こりやすくなる。仕事のパフォーマンスにも悪影響をもたらす。
「仕事に熱心であることは労働者にとって有益なことですが、働き過ぎを抑えて、食事や運動などの健康管理にも時間を割くことが、長い間に大きな利益となることを知っておくべきです」と、デムベ氏は言う。
「女性の仕事のスケジューリングをより柔軟にし、仕事を続けながら定期健診をうけ健康コンディションにも気を配り、生活習慣病を予防するためのプログラムが必要です」と指摘している。
研究は医学誌「Journal of Occupational and Environmental Medicine」に発表された。
Women's long work hours linked to alarming increases in cancer, heart disease(オハイオ州立大学 2016年6月30日)
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労働安全衛生法

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