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精神疾患の労災認定の5割は20~30代の若者 ストレスチェックが必要
2016年10月27日

2010年からの5年間に精神疾患による労災認定の54%を20歳~30歳代の若者が占めるという調査結果が、厚生労働省の「過労死等防止対策推進協議会」で発表された。
精神障害の労災認定は30歳代がもっとも多い
調査は、「労働者健康安全機構」が過労死の実態を調べるため、2010年1月~2015年3月の労災認定事案(精神疾患 約2,000件、脳・心臓疾患 約1,600件)を集計し、発症年齢などによりデータにまとめたもの。「過労死等防止対策推進協議会」(座長:岩村正彦・東京大学大学院法学政治学研究科教授)で公表された。
長時間労働による過労や、職場内での優位性を背景にしたパワーハラスメントやセクシュアルハラスメントで精神的・身体的苦痛を与えられるなどでうつ病などの精神疾患を発症し、自殺するケースが後を絶たない。

若手社員が精神的に追い詰められるケースが増えている
脳卒中や心筋梗塞など脳・心臓疾患の労災事案では、発症時の平均が49.3歳、もっとも多いのは50歳代の36.7%、40歳代の31.9%、30歳代の13.7%と続いた。
長時間労働による脳・心臓疾患で死亡する中高年社員は依然として多いが、最近は若手社員が精神的に追い詰められて自殺するケースが増えている。
大手広告会社の電通で昨年12月、24歳の女性社員が自殺したのは、長時間労働による精神障害が原因だったとして、過労死として労災が認定された。
女性は昨年4月に入社し、最長月130時間の残業などが原因でうつ病を発症したという。
電通では1991年にも、入社2年目の男性社員が過労自殺している。当時24歳の同社の男性社員が、100時間を超える残業を継続的に行ったことからうつ病を発症し、入社から1年5ヵ月後に自殺に至った。
両親が起こした損害賠償請求訴訟で、最高裁が「企業は、働き手の労働時間や健康状態をしっかりと管理し、適切な調整を行わねばならない」と認定し、各企業の対策強化の転機となった。
長時間労働を許容する社会風潮を一掃することが必要
厚生労働省は10月に「過労死等防止対策白書」をはじめてまとめた。白書では、仕事に関するストレスの原因について、「仕事の量・質」が65.3%と、「対人関係」の33.7%に大差をつけて1位になっている。
責任感が強く、まじめな人ほど、会社内部の論理を真に受けて、追い詰められやすい。長時間労働を許容する社会風潮を一掃することが必要だ。
メンタルヘルスケアの中でも特に若者対策は、日本は立ち遅れているという。一方で、若者を対象とした精神疾患の早期介入研究はこの15年間で飛躍的に進展した。
厚労省は、若者が過労による精神疾患で労災認定を受けるケースが多い事態を重くみている。「社会人になれば、誰しも長時間労働が当たり前」という風潮を根絶するべきだとしている。
今年度から若者に特化したメンタルヘルス事業を始めており、産業医や保健師を企業に派遣して、若手従業員を対象とする研修会を開き、ストレスチェックを促す活動をしている。
第7回過労死等防止対策推進協議会(2016年10月25日 厚生労働省)過労死等の実態解明と防止対策に関する総合的な労働衛生研究・精神障害・自殺の労災認定事案の分析に関する研究
こころもメンテしよう~若者を支えるメンタルヘルスサイト(厚生労働省)
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