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睡眠時間が1時間足りていない? たっぷり寝ると糖尿病リスクが低下
2016年11月09日

多くの人が慢性の睡眠不足を抱えていて、睡眠不足を解消すると、眠気を解消できるだけではなく、空腹時血糖値の低下、基礎インスリン分泌能の増大など、糖尿病のリスクを低下できる可能性があるという研究を、国立精神・神経医療研究センター(NCNP)が発表した。睡眠不足の解消により、ストレス応答に関わる内分泌機能の改善なども得られるという。
日本人の睡眠時間は減少を続けている
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は、多の人が自覚できない睡眠不足(潜在的睡眠負債)を抱えているおそれがあることを明らかにした。この「潜在的睡眠不足」を解消すれば、眠気のみならず、糖代謝、細胞代謝、ストレス応答などに関わる内分泌機能の改善を得られるという。
睡眠は生活の3分の1を占める必要不可欠な生活習慣だが、十分な睡眠時間を確保できない人が増加している。
日本人は世界的にみても睡眠時間が短いことが知られている。NHKの生活時間調査によると日本人の睡眠時間は過去40年間にわたり一貫して減少を続けている。
その結果、経済協力開発機構(OECD)の調査では日本は加盟国中でもっとも睡眠時間が短い国のひとつになった。
睡眠時間が短いと糖尿病やうつ病などのリスクが高まる
睡眠時間は長くても短くても、健康リスクが高まる。糖尿病やうつ病などさまざまな病気の健康リスクと睡眠時間との関係を調べた疫学調査では、日本人の睡眠時間は4時間以下から10時間以上まで幅広く、7~8時間を底としたU字型の分布を示すことが示された。
睡眠不足は眠気やパフォーマンスの低下をはじめ、記憶・学習、代謝、免疫などさまざまな精神・身体機能を阻害することが明らかになっている。
一方で、必要な睡眠時間には大きな個人差がある。そこで研究チームは、必要な睡眠時間を精密に測定し、個々の人に必要な睡眠時間を測る実験を行った。
睡眠時間が1日に1時間足りていない
研究には、健康な成人男性15名(平均年齢23.4歳)が参加。実験室内で9日間にわたり就床時間を12時間に延長して睡眠を充足(飽和)させる試験を行った。
試験期間中の睡眠時間の変動曲線から各被験者の必要睡眠時間を試算。試験に先立って2週間にわたり自宅で測定した習慣的睡眠時間との差を、自覚していない睡眠不足(潜在的睡眠不足)として算出した。
その結果、各被験者の必要睡眠時間は平均8.41時間(8時間25分)と試算された。一方で、自宅での習慣的睡眠時間は平均7.37時間(7時間22分)で、1日当たり平均1時間短いことが明らかになった。
睡眠時間を延長すると糖尿病リスクなどが低下
睡眠時間を延長すると、眠気を解消できるだけでなく、空腹時血糖値の低下、基礎インスリン分泌能(HOMA-β)の増大などを得られ、糖尿病のリスクが低下することが明らかになった。
さらに、副腎皮質刺激ホルモンやコルチゾール濃度の低下など、ストレスに対する内分泌機能も改善していた。甲状腺刺激ホルモンや遊離サイロキシン濃度の上昇など、細胞代謝に関わる機能も改善したという。

自覚していない睡眠不足=「潜在的睡眠不足」

Estimating individual optimal sleep duration and potential sleep debt(Scientific Reports 2016年10月24日)
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