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未認定施設での検査中止を要請 ~母体血による出生前遺伝学的検査
2016年11月18日
日本医師会、日本医学会、日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、日本人類遺伝学会は11月2日、「母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査」についての共同声明を発表した。2013年に日本産科婦人科学会が策定した指針や、当時出された上記5団体の共同声明に反し、認定や登録を行わずに同検査を実施している医療・検査機関があるとの報道がなされたことによるもの。
母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査(NIPT)は、母体の血液中に浮遊しているDNA断片を分析し、胎児の染色体の数的異常を診断する。採血のみで診断できるため、羊水検査などに比べて妊婦や胎児への負担、リスクは少ないが、現在、普及している技術では特定の染色体(13番、18番、21番)の数的異常のみを対象としている。これら3つの染色体の数的異常については、NIPTで診断を行っても治療にはつながらない。
そのためNIPTが普及すると染色体数的異常胎児の出生の排除や、異常を有する人の生命の否定へとつながりかねない、として日本産科婦人科学会は2013年3月9日、「母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査に関する指針」を発表。
同時に、日本医師会、日本医学会、日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、日本人類遺伝学会で共同声明を発表し、NIPTを実施する施設の認定、登録を「母体血を用いた出生前遺伝学的検査」施設認定・登録部会(日本医学会臨床部会運営委員会「遺伝子・健康・社会」検討委員会の下に設置)で行うこととした。その後、厚生労働省も医療機関などに学会指針を尊重するよう周知依頼を全国の都道府県などに通知している。
10月12日現在、母体血を用いた出生前遺伝学的検査に関する臨床研究施設として認定を受けているのは全国75施設。しかしこのほど、指針などに従わず、未認定でNIPTを実施している施設がある、との報道があったことから、再び啓発のため共同宣言を出すに至った。
共同声明では、未認定で検査を実施している医療機関や医療従事者、また検査機関や仲介業者などに対して、いずれも直ちに中止するよう促すとともに、出生前診断の実施については十分な遺伝カウンセリングが行われることが必要であると改めて表明。今回の事態は極めて遺憾であり、類似の事案が再発しないよう日本医学会に所属するすべての学会が会員の監督を適正に行い、また日本医師会に所属するすべての会員が指針などを遵守するよう求めた。
「母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査」についての共同声明(日本産科婦人科学会)
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