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家庭血圧測定で「仮面高血圧」を発見 血圧を測るメリットは大きい

 高血圧の多くは、自覚症状がなく、知らないうちに症状が進行していく。そのことから「サイレント・キラー」と呼ばれている。その中でも「仮面高血圧」が注目を集めている。
 診察室や健診で測ると正常なのに、家庭で測ると高血圧である場合が「仮面高血圧」。正常血圧という仮面をつけた隠れた高血圧という意味がある。
「家庭血圧」測定で隠れた高血圧が分かる
 家庭で測定した血圧では、最高血圧(収縮期血圧)が135mmHg以上、または最低血圧(拡張期血圧)が85mmHg以上あると高血圧が疑われる。診察室で測定した場合の140mmHg以上/90mmHg以上より5mmHgずつ低い値だ。

 家庭の血圧がこの基準を超えても、週に1回程度なら心配いらないが、週の平均がこれを超える場合は医師に相談する必要がある。また日によって血圧が激しく変動したり、朝晩の差が大きい場合も医師に伝えた方が良い。

 血圧は常に変動している。家庭で血圧を測ればそれを実感でき、思いがけない時間帯の高血圧を発見できる。高血圧の人はもちろん、そのリスクが高い人でも、毎日自分で血圧を測るメリットは大きい。

 朝の場合は起床して1時間以内、夜の場合は就寝前に測ることが勧められる。トイレの後、朝食の前、服薬の前に測ろう。

 大切なことは、同じ状態、同じ方法で測り、測定を続けることだ。週数回でも継続することが大切だ。そして測定した値は必ず記録して、診察時に主治医に見せると、より適切な治療が受けられるようになる。
家庭血圧を測り「仮面高血圧」を発見
 診察室の血圧は正常でも家庭の血圧が高血圧の場合を「仮面高血圧」という。「仮面高血圧」の人では、脳卒中や心筋梗塞などの病気が起きる可能性が、一般の高血圧の人と変わらないということが分かっている。

 「仮面高血圧」は家庭血圧を測っていないと見逃されてしまいがちだ。高血圧を治療している人の約3割は「仮面高血圧」とみられている。

 夜の測定は就寝直前に行う。朝晩、少なくとも1回測ることが推奨されている。1週間の平均値が最高血圧135mmHg以上、最低血圧85mmHg以上の場合は、測定結果を持って医療機関を受診しよう。

 「仮面高血圧」には「早朝高血圧」や「夜間高血圧」などがある。一般に血圧は夜間睡眠中に低下し、起床後に緩やかに上昇するという日内変動を示す。「夜間高血圧」は、睡眠中も血圧が低下せず、早朝まで持続するタイプだ。

 「夜間高血圧」は動脈硬化、脳卒中や心筋梗塞などの病気の発症リスクを高めるので、治療が必要となる。慢性腎臓病、糖尿病、心不全、睡眠時無呼吸症候群などがあると起こりやすい。
24時間血圧測定で「夜間高血圧」を発見
 「夜間高血圧」は睡眠中の血圧なので、朝や寝る前の血圧測定だけでは分からない。夜間高血圧を発見するには24時間の血圧測定をする必要がある。

 血圧を1日中連続して測定できる血圧計を、「携帯型自動血圧計」(ABPM)といい、この機器を用いて測定した血圧を24時間血圧という。ABPMは24時間装着したままで、ふだんどおりの仕事や家事をしながら、あらかじめ設定した時間間隔ごとに血圧を自動測定できる。

 睡眠中も装着したまま測定する。24時間血圧測定であれば、血圧の変動パターンなど、細かい点まで明らかにできるので、的確な治療方針をたてるうえで有用な方法となる。

 「自由行動下24時間血圧測定」について、気になる人は医師に相談してみよう。
「大迫研究」で家庭血圧が世界的に有名に
 「大迫研究」は、1986年に開始された高血圧・循環器疾患に関する、国際的な評価も高い前向きコホート研究だ。

 この研究で明らかになった「家庭血圧値で135/85mmHg以上は高血圧」という診断基準は、日本高血圧学会のガイドラインにも採用され、欧州高血圧学会のガイドラインなどでも採用されて国際的な基準として認められている。

 「大迫研究」では、研究に登録している住民1人ひとりにIC付きの家庭血圧計が配られ、家庭血圧が測られた。その結果、血圧コントロールでの家庭血圧や24時間血圧の測定の重要さが確かめられた。

 日本では、おおよそ1世帯に1台の割合で家庭血圧計が普及している。研究では家庭で測る血圧は信頼性高いとして、診察室で測定した血圧値に加えて「家庭血圧値」の重要性が確かめられた。

 家庭血圧を用いれば、高血圧に伴う脳卒中や心血管病、腎臓病などを高い精度で予測できるようになるので、特定健診・保健指導でも家庭血圧測定が勧められるようになっている。
米国成人の16%が「仮面高血圧」
 知らぬ間に血圧が高くなる「仮面高血圧」。どれくらいの人がその基準を満たしているのだろうか?

 米国のストーニーブルック大学精神医学・社会学のジョゼフ シュワルツ教授らは、高血圧の治療を受けていない健康な中年成人888人(平均年齢45歳)を対象に調査を行った。

 診察室血圧を3回の受診時に各3回、計9回にわたり測定し、さらに24時間血圧測定により30分ごとの測定も行った。

 その結果、診察室で測定した血圧値が正常であった参加者の15.7%が高血圧の基準を満たしており、「仮面高血圧」であることが判明した。

 「24時間血圧測定で仮面高血圧が発見でき、基準にあてはまる人が多いことが分かりました。そうした人たちが治療を受けることで、どんな恩恵を受けられるか、今後の研究で調査します」と、シュワルツ教授は述べている。

高血圧治療ガイドライン2014(日本高血圧学会)
Ohasama(大迫)研究(東北大学医薬開発構想講座)
Study Reveals More Individuals May Have "Masked" Hypertension Than Thought(ストーニーブルック大学 2016年12月6日)
[Terahata]
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