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特定健診・保健指導の実施率を公開 ICTなど最新技術を活用 未来投資会議
2017年04月20日
政府の「未来投資会議」が4月14日に開催され、医療費や介護費の効率化に向けた提案が相次いだ。会議では健診データの利活用を進めるための環境整備を進める必要性について強調。特定保健指導の受診率が低い健保組合に対しペナルティを課す方針などが示された。
政府の「未来投資会議」は、新たな成長戦略として、質の高い医療や介護サービスを提供するために、ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)、ロボットなど、最先端の技術の活用をさらに進めることを盛り込む方針を示した。
ビッグデータを活用し従業員の行動変容を促す
医療・介護分野のビッグデータ(レセプトや健診データなど)を連結することで、医療の質を飛躍的に向上させる計画(データヘルス改革)が厚生労働省を中心に進められている。
「医療・介護費は経済の伸び以上に増加している。データにもとづく政策の戦略的展開により、個人・保険者・医療機関の自発的な行動変容を促すことが必須」と、塩崎恭久・厚生労働相は協調した。
「未来投資会議」では、健保組合ごとの従業員の健康状態や医療費などを全国平均と比較して企業経営者らに通知し、従業員の体調管理への取り組みを促す方針が示された。生産性の向上や医療費の節約につなげる狙いがある。
大企業向けの健康保険組合には約2,900万人、中小企業向けの協会けんぽには約3,600万人、自営業向けの国民健康保険には約3,300万人が加入している。
40~74歳が対象の受診者は増加傾向にあるが、2014年度の全組合平均の受診率は49%。厚労省が目指す70%に達していない。健診で異常がみられた人に対して保健師などが改善の行動計画を立てる特定保健指導の受診率も18%と、目標の45%にほど遠い。
塩崎氏は健診データの利活用を進めるための環境整備を進める必要性について強調。「データを活用した加入者の行動変容を促す働きかけは、保険者の責務」とし、「データが集まる支払基金などに、データヘルスのシステムを集約し、健保組合はもとより全ての保険者を強力に支援する」と述べている。
特定健診・保健指導の実施率を2017年度実績から公表
健保組合では2013年度から、特定保健指導の受診率が0.1%以下の組合に対し、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度への支援金を0.23%引き上げる仕組みが導入された。逆に受診率の高い組合の支援金は軽減される。
ところが、引き上げ対象となった組合の負担増は2015年度で平均約56万円にとどまった。「保険者の予防・健康づくりの取組は不十分。保険者に対するインセンティブを強化し、自発的な取組みを推進する必要がある」と強調している。
そこで打ち出したのが、「全保険者の特定健診・保健指導の実施率を、2017年度実績から公表し、開示を強化する」という方針。健保組合ごとの、従業員の健康状態、医療費、健康への投資などを全国平均と比較して示し、経営者に通知し関与を促す仕組みを作る。
この日の会議で、安倍晋三首相は「企業の経営者と健保組合が連携して職場で取組みを実践すれば、従業員が健康になり会社が支払う医療費の低下につながる。国民全体の健康づくりへの意識が高まっていくことを期待している」と述べた。
従業員の体調管理を重視する「健康経営」を実行する企業に対する優遇措置を作る方針も示された。健康経営に取り組む企業の健保組合の負担を軽くするという。健康経営に取り組む企業の健保組合に対しては、後期高齢者医療制度への支援金を引き上げる一方で、消極的な企業に対してはペナルティとして引き下げを行う。
糖尿病などの遠隔診療を拡大 2018年度診療報酬改定で評価
「未来投資会議」では、医療費や介護費の効率化に向けた提案が相次いだ。塩崎恭久・厚生労働相は、オンライン診察による遠隔診療の拡大や高齢者の自立を目指す介護の導入などを挙げた。
塩崎厚労相は、2018年度の診療報酬改定では、ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)などの最新の技術を取り入れ、「対面診療」と「遠隔診療」とを適切に組み合わせて、かかりつけ医による日常的な健康指導・疾病管理を評価する考えを表明。
具体的には、▽オンライン診療を組み合わせた2型糖尿病などの生活習慣病患者の効果的な指導・管理、▽血圧、血糖などの遠隔モニタリングを活用した、早期の重症化予防――を挙げ、2018年度の診療報酬改定に向けて準備する。さらに、有効性・安全性などに関する知見を集積し、2020年度改定以降でもこうした流れを加速する考えも示した。
遠隔診療では、かかりつけ医が対面診療とオンライン診療を組み合わせることで、患者の通院の手間が省け、より効果的に健康指導や疾病管理ができると期待されている。パソコンを使ったオンラインの診察で2型糖尿病などの生活習慣病の患者を指導したり、血圧や血糖などのデータを送ってもらい重症化を予防するケースなどを想定している。
安倍首相は会議で、「病気になった時、重症化を防ぎ回復を早めるため、かかりつけ医による継続的な経過観察が大切。対面診療とオンラインでの遠隔診療を組み合わせれば、これを無理なく効果的に受けられるようになる。こうした新しい医療を次の診療報酬改定でしっかり評価する」と述べた。
介護現場へのロボット導入 効果を検証
また塩崎氏は、科学的に自立支援などの効果が裏付けられた介護を実現するため、科学的分析に必要なデータを新たに収集し、世界に例のないデータベースをゼロから構築する方針を示した。
国立長寿医療研究センターなどの研究機関を活用して、介護サービスが利用者の状態に与えた効果を分析。科学的に自立支援等の効果が裏付けられた介護の具体像を国民に提示する。
介護報酬上の評価を用いて、科学的に効果が裏付けられたサービスを受けられる事業所を、厚生労働省のウェブサイトなどで公表する計画も明示した。
介護現場へのロボット導入の効果については、高齢者の生活向上や職員の負担軽減にどうつながるかを2017年度に検証し、2018年度に介護報酬を増やす考えを表明。現場のニーズをロボット開発につなげる「プロジェクト・コーディネーター」を育成し、18年度以降の新たな開発戦略を定める考えも示した。
塩崎氏は、医療の提供体制を示す「地域医療構想」を実現させるための計画も表明した。入院ベッドの機能を転換してもらう個別の病院名や病床数などを具体的に示す事業計画を策定した都道府県に対し、財政的に支援。入院ベッドの削減を後押しする方針だ。
安倍首相は会議で「医療・介護の分野におけるICTやデータの活用は、技術が飛躍的に進歩したことで、いよいよ現場で実現しはじめている。2025年には、団塊の世代が全員75歳以上となる。この山場を乗り越えるため、国民一人ひとりが、新しい技術を手軽に生活に取り込み、自らの健康と真摯に向き合い、健康寿命を延ばせるようにしていきたい」と強調した。
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