ニュース

急性心腎症候群の管理 ~虚血ストレスマーカー L-FABPの可能性~

新規バイオマーカーを用いて、AKIを"aborted AKI"にできないか?

 かつて、急性心筋梗塞を超早期に検出しCKが上がる前の治療をめざす"aborted AMI"という概念が提唱されたことがあるが、AKIについても何らかのバイオマーカーで検出し的確に介入すれば、血清クレアチニンを上昇させない予防的治療も可能であろう。いわば"aborted AKI"である(図2)。このような中、KDIGOのAKIガイドラインでは注目のマーカーの一つとしてL-FABPを取り上げている11)

図2 バイオマーカーによる早期診断でAKIの'abort'を目指す

図2 バイオマーカーによる早期診断でAKIの'abort'を目指す

 L-FABPは、虚血や低灌流の影響を最も受けやすいとされる腎尿細管のストレスマーカーだ。東大の土井先生らの報告からは、数種のAKI新規バイオマーカーの中でL-FABPは比較的有用性が高いことが見てとれる(図3)。

図3 ICU患者を対象とした各種バイオマーカーによるAKI診断能

〔Crit Care Med 39:2464-2469,2011〕
図3 ICU患者を対象とした各種バイオマーカーによるAKI診断能

 L-FABPと他のマーカーとの違いが何かというと、β2MGやNAGなどのマーカーは尿細管"障害"マーカーであるのに対し、L-FABPは虚血や低灌流により発生する過酸化脂質を尿中に排泄する役目を担う"ストレス"マーカーであるという点である。つまり、尿細管障害が起きる前にL-FABPを下げるような治療を行えば、AKIをabortできるかもしれないわけだ。

 幸い日本ではANP、カルペリチドという薬剤を使用できる。急性心不全に対するカルペリチドの有用性を評価した我々の検討からは、同薬が対照の硝酸薬に比し有意にL-FABPを抑制することが示された(図4)。また我々は心不全治療では使われるもののAKI領域では否定的に扱われているドパミンについて、腎臓に対しても保護的に作用する可能性があることを、L-FABPを用いた検討から報告している12)

図4 急性心不全に対するANP投与によるL-FABPの改善

〔Circ J 71(Suppl 1):384-385,2007〕
図4 急性心不全に対するANP投与によるL-FABPの改善

次は...
L-FABPによる急性心腎症候群の早期診断と予後予測の可能性

[保健指導リソースガイド編集部]
side_メルマガバナー

「健診・検診」に関するニュース

2025年02月25日
【国際女性デー】妊娠に関連する健康リスク 産後の検査が不十分 乳がん検診も 女性の「機会損失」は深刻
2025年02月17日
働く中高年世代の全年齢でBMIが増加 日本でも肥満者は今後も増加 協会けんぽの815万人のデータを解析
2025年02月12日
肥満・メタボの割合が高いのは「建設業」 業態で健康状態に大きな差が
健保連「業態別にみた健康状態の調査分析」より
2025年02月10日
【Web講演会を公開】毎年2月は「全国生活習慣病予防月間」
2025年のテーマは「少酒~からだにやさしいお酒のたしなみ方」
2025年02月10日
[高血圧・肥満・喫煙・糖尿病]は日本人の寿命を縮める要因 4つがあると健康寿命が10年短縮
2025年01月23日
高齢者の要介護化リスクを簡単な3つの体力テストで予測 体力を維持・向上するための保健指導や支援で活用
2025年01月14日
特定健診を受けた人は高血圧と糖尿病のリスクが低い 健診を受けることは予防対策として重要 29万人超を調査
2025年01月06日
【申込受付中】保健事業に関わる専門職・関係者必携
保健指導・健康事業用「教材・備品カタログ2025年版」
2024年12月24日
「2025年版保健指導ノート」刊行
~保健師など保健衛生に関わる方必携の手帳です~
2024年12月17日
子宮頸がん検診で横浜市が自治体初の「HPV検査」導入
70歳以上の精密検査無料化など、来年1月からがん対策強化へ
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶