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妊娠初期に野菜を食べると児の喘息を軽減できる 予防効果の高い野菜は?
2018年03月07日

国立成育医療研究センターは、妊婦が妊娠初期に野菜を多く摂取すると、児が出生後、2歳になったときの喘息症状(喘鳴)の発症率が低くなることを確かめたと発表した。野菜の種類のうち葉野菜(レタス、ほうれんそうなど)やアブラナ科野菜(ブロッコリー、カリフラワーなど)が、特に喘息症状(喘鳴)の予防効果が高いという。
つわりの有無によらず栄養摂取状態を評価
これまで、小児喘息のリスク因子として受動喫煙、大気汚染、気道ウィルス感染などさまざまな因子が報告されている。その中には妊娠中の喫煙など、出産前の母親(妊婦)の生活に関連した因子も報告されており、そのような因子を調査することも将来の児の疾病の予防のため重要であると考えられる。
一般の小児や成人では、野菜摂取はその後の喘息リスクの軽減に寄与するという報告が複数あり、妊娠中の野菜摂取も同様に出生後の児の喘息リスク軽減につながる可能性があると考えられる。しかし、つわりなどの影響があるため、妊娠中の栄養摂取を評価することは難しく、妊娠中の野菜摂取と児の喘息のリスクの関係を調査した研究はほとんどない。
そこで研究グループは、栄養摂取を評価するための質問紙票を妊婦用に調整。この質問紙を使用すれば、つわりの有無によらず比較的正確に栄養摂取状態を評価できることを過去の研究で明らかにしていた。今回は、この質問紙を用いて妊娠初期の野菜摂取状況を明らかにし、児の成長後(2歳時)の喘息症状(喘鳴)の発症率との関連を調査した。
関連情報
妊娠初期の野菜摂取量が多いほど児の喘息症状の発症率は低下
今回の研究には、2010年から2013年の妊娠女性を登録し、女性とその児を継続的に追跡調査している国立成育医療研究センターの出生コホート研究データベース(母子コホート研究)を使用。喘息症状(喘鳴)の有無は2歳時に質問紙を用いて評価したため、質問紙の回答が得られなかった症例などは除外して解析した。
対象となった511人を野菜(総野菜)の摂取量により5群に分け、それぞれの群における喘息症状(喘鳴)の発症率を比較した。また、さらに細かい解析として、総野菜だけではなく、葉野菜、アブラナ科野菜(ブロッコリー、キャベツなど)、緑黄色野菜毎に対象者を5群に分け、追加で検討した。
その結果、妊娠初期の総野菜摂取量が多いほど、2歳の児の喘息症状(喘鳴)発症率は低下した。もっとも多く摂取している集団(Q5)は、もっとも少なく摂取している集団(Q1)と比較して、喘息症状(喘鳴)発症のオッズ比が0.59だった。
また、妊娠初期にアブラナ科野菜や葉野菜の摂取量が多いほど2歳の児の喘息症状(喘鳴)発症率が低下することが示された。もっとも多く摂取している集団(Q5)は、もっとも少なく摂取している集団(Q1)と比較して、喘息症状(喘鳴)発症のオッズ比が0.48でした。
また、同様に妊娠初期の葉野菜の摂取量が多いほど2歳の児の喘息症状(喘鳴)発症率は低くなっていた。もっとも多く摂取している集団(Q5)は、もっとも少なく摂取している集団(Q1)と比較して、喘息症状(喘鳴)発症のオッズ比が0.47だった。緑黄色野菜については、発症率は少し低くなっていたが、統計的に有意な差にはならなかった。



葉野菜やアブラナ科野菜を摂取するよう指導
今回の研究結果について、研究グループは「妊娠初期の妊婦に葉野菜やアブラナ科野菜を中心とした野菜を摂取するように指導することで将来の喘息発症率を低下できる可能性がある」としている。
一方で、「本研究における対象者は必ずしも多くはなく、他の集団でも同様の結果が得られるのかどうか検証する必要がある」と述べ、「今回の研究は特定の集団に対する疫学研究成果。臨床的応用に関してはこれからの問題になりますので、実際の対応につきましては専門医の指導を仰いでください」と注意を促している。
この研究は、国立成育医療研究センター産科の小川浩平医師らのグループによるもの。研究成果は、臨床栄養学関連の国際誌である「European Journal of Clinical Nutrition」に発表された。
国立成育医療研究センターMaternal vegetable intake in early pregnancy and wheeze in offspring at age two years(European Journal of Clinical Nutrition 2018年2月12日)
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