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ブドウ種子エキスが閉経女性の「肥満」を予防 腸内の「デブ菌」を抑制
2018年06月27日

日本人女性の平均寿命は86.99歳に達しており(厚生労働省「完全生命表」)、閉経後も多くの女性は20~40年と長生きをする。しかし、閉経は内臓脂肪の増加と、それにともなう血糖上昇、いわゆるメタボリックシンドロームのリスクを高めることが知られている。
閉経後女性では「デブ菌」が増える
閉経は、肥満や耐糖能低下の危険因子だ。閉経後女性の腹囲は増加し、内臓脂肪の増加にともない耐糖能低下が起こり、メタボリックシンドロームの罹患率が増加する傾向があるが、この現象の背景にある分子メカニズムは十分に解明されていなかった。
東京医科歯科大学と東北大学の研究グループは、閉経後女性のモデルである卵巣摘出マウスでは、腸内フローラで、いわゆる「デブ菌」と呼ばれる「ファーミキューテス門」に属する細菌が増加することを確かめた。
一方、「プロアントシアニジン」は、さまざまな疾患に対する治療効果のある抗酸化物質として注目されているポリフェノールで、ブドウ種子エキスに多く含まれる。
研究グループは、プロアントシアニジンを多く投与することで、腸内フローラの変化が抑制され、脂肪蓄積による肥満および血糖調節機能の低下が抑えられることを突き止めた。プロアントシアニジンには、メタボ化を予防する効果があることが明らかになった。
関連情報
腸内細菌が肥満やメタボの原因に ポリフェノールが腸内バランスを調整
近年の研究で、腸内細菌が、食物の消化活動のみならず、肥満やメタボをはじめとするさまざまな疾患の原因となることが解明されている。
たとえば腸内細菌叢は脂質吸収を制御し、肥満者の腸内細菌を移植されたマウスは痩身者の腸内細菌を移植されたマウスよりも太る。腸内細菌叢におけるファーミキューテス門の比率が増加し、脂肪吸収の効率が増加し、結果として肥満をまねく。
研究チームは、閉経のモデル動物である卵巣摘出マウスの腸内細菌叢を解析した。その結果、「デブ菌」ファーミキューテス門に属する細菌が腸内に増加し、痩せ型の人に多く存在するバクテロイデーテス門に属する細菌が減少することを見出した。
このモデル動物は、内臓脂肪、皮下脂肪の蓄積により肥満になり、血糖値が上昇した。しかし、ブドウ種子エキスを連日摂取させると、ファーミキューテス門細菌の増加とバクテロイデーテス門細菌の減少が抑制され、肥満指数とよばれるファーミキューテス門/バクテロイデーテス門比(F/B比)が改善した。
これにともない、内臓脂肪、皮下脂肪の蓄積がともに抑制された。また、内臓脂肪の蓄積は血糖値上昇の原因となるが、ブドウ種子エキスの投与により、糖負荷試験時の血糖値も改善された。一方、ブドウ種子エキス投与による、餌の摂取量、筋肉重量や内臓重量への影響は認められなかった。
研究は、東北大学大学院歯学研究科先端フリーラジカル制御学共同研究講座の菅野太郎教授、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科整形外傷外科治療開発学の庭野吉己寄附講座教授(東北大学名誉教授)と同整形外傷外科治療開発学の麻生義則寄附講座准教授のグループによるもの。詳細は科学誌「Journal of Food Science」および「Journal of Medical and Dental Sciences」に掲載された。

Proanthocyanidin-rich grape seed extract modulates intestinal microbiota in ovariectomized mice(Journal of Food Science 2018年3月26日)
Proanthocyanidin-rich seed extract prevent estrogen deficiency-induced metabolic disorders(Journal of Medical and Dental Sciences 2018年6月23日)
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