ニュース

甘いものを食べるなら日中の活動時間を選ぶとメタボになりにくい

 糖質の摂り過ぎはメタボリックシンドロームの原因になる。しかし、糖質を摂取する時間帯を日中の活動時間帯に調整すれば、糖質がエネルギーとして利用されやすくなり、過剰摂取によって起こる脂肪肝や高中性脂肪などの脂質代謝異常、メタボリックシンドロームを抑えられる可能性があるという研究を名古屋大学が発表した。
糖質は日中の活動時間帯に摂ると悪影響を抑えられる
 糖質を摂り過ぎるとメタボリックシンドロームを発症しやすくなるが、摂取するタイミングを日中の活動している時間帯に限ると、肝臓に中性脂肪がたまる「脂肪肝」と、動脈硬化の原因になる「高中性脂肪」が改善することが、名古屋大学の研究で明らかになった。

 研究は、名古屋大学大学院生命農学研究科の小田裕昭准教授を中心とする研究グループによるもので、米国科学雑誌「PLOS ONE」電子版に掲載された。

関連情報
糖質の甘味には習慣性がある
 これまで、メタボリックシンドロームは、食べ過ぎ(エネルギーの摂り過ぎ)や運動不足、動物性食品に含まれる飽和脂肪酸の過剰摂取などが原因と考えられてきたが、最近では、「果糖ブドウ糖液糖」などの糖質を含む清涼飲料やお菓子などの食べ過ぎも原因であることが明らかになっている。

 ジュースやコーラなどに使われている果糖ブドウ糖液糖は「異性化糖」とも呼ばれ、デンプンを加水分解してグルコースに変えて、そのおよそ半分をフルクトースに異性化させ作られる。安価に大量生産でき甘味が強いので、さまざまな食品に使われている。

 糖質の摂り過ぎがもたらす危険性の多くは、異性化糖などを構成するフルクトース(果糖)が原因であることが分かっている。こうした糖質は高カロリーで、その甘味には習慣性があり、完全に抑えるのは難しい。

 世界保健機関(WHO)は、糖質による健康被害を抑えるため、1日のエネルギー摂取量の5%未満に抑えることを奨励するガイドイランを2015年に発表した。これは砂糖に換算すると1日小さじ6杯分程度(約24g)に相当する。
「時間栄養学」に着目 食事が体内時計を調整
 メタボリックシンドロームは、「内臓脂肪症候群」とも呼ばれ、複数の病気や異常が重なっている状態をさす。腸のまわり、または腹腔内にたまる「内臓脂肪の蓄積」によって、高血圧や2型糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病の重なりが起こっている状態だ。

 メタボリックシンドロームの基盤となるのは、血糖を下げるインスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」であることが知られている。日本人は体質的に、痩せていてもこのインスリン抵抗性が起こりやすい。この状態は、心筋梗塞や脳梗塞の原因となる動脈硬化を急速に進行させてしまう。

 研究グループは今回の研究で「時間栄養学」に着目した。時間栄養学とは、「何を、どれだけ」食べるかということに加え、「いつ食べるか」を考慮した新しい栄養学。食事は体内時計のもっとも強い同調因子として働いていると考えられている。

 研究グループは、食べる量を制限するのではなく、食べるタイミングを調整することで、メタボリックシンドロームを改善できるのではないかと考えた。
日中の活動時間帯に摂ると脂肪肝が改善
 具体的には、夜行性のラットを用いて、人間なら日中の活動時間帯に当たる夜間にだけ餌を食べるグループと、時間にかかわらず食べるグループに分けて実験した。糖質やデンプンを4週間与えた後、肝臓の脂肪量などを調べた。

 その結果、活動時間帯に糖質を与えられたグループでは、肝臓1gに含まれる脂肪は平均で約69mgだったが、時間調整のないグループは約85mgと多かった。血液中の中性脂肪の量も、時間調整のないグループの方が、夜間にだけ与えられたグループの約1.2倍多かった。
糖質を抑えるのはなかなか難しい
 研究グループはこれまで、昼夜を問わず、四六時中食べていると、主に悪玉のLDLコレステロールが増加し「高コレステロール血症」が起きることを報告している。逆に、メリハリのある摂取法として、主に日中に限って食事をする「時間制限摂取」をすることで、高脂肪食による肥満などを改善できると考えられる。

 逆に糖質を夜間など活動時間外に摂ってしまうと、脂肪肝や脂質異常症を引き起こし、肥満やメタボになりやすくなるおそれがある。

 「甘味は特別な魅力があり、一種の習慣性があります。糖質を控えなければいけないことは理解していても、糖質摂取を抑えるのはなかなか難しい。もちろん、糖質の悪影響を避けるため、摂取量を抑えることも重要ですが、甘いものを食べるのは日中の活動時間帯だけに調整することで、糖質の取りすぎの悪影響をある程度抑制できる可能性があります」と、研究グループは述べている。

 「今回の研究で、肝臓脂質代謝のリズムには振幅があり、摂食時間を日中の活動時間帯だけに調整することで、脂質代謝異常を改善できることが分かりました。時間栄養学の観点から、糖質の過剰摂取によるメタボリックシンドロームを予防するために、時間制限摂取が効果的と考えられます」としている。

名古屋大学大学院生命農学研究科
Time-restricted feeding suppresses excess sucrose-induced plasma and liver lipid accumulation in rats(PLOS ONE 2018年8月15日)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「特定保健指導」に関するニュース

2025年06月10日
【アプリ活用で運動不足を解消】1日の歩数を増やすのに効果的 大阪府健康アプリの効果を8万人超で検証
2025年06月09日
【睡眠改善の最新情報】大人も子供も睡眠不足 スマホと専用アプリで睡眠を改善 良い睡眠をとるためのポイントは?
2025年06月09日
健康状態が良好で職場で働きがいがあると仕事のパフォーマンスが向上 労働者の健康を良好に維持する取り組みが必要
2025年06月09日
ヨガは肥満・メタボのある人の体重管理に役立つ ヨガは暑い夏にも涼しい部屋でできる ひざの痛みも軽減
2025年06月05日
【専門職向けアンケート】飲酒量低減・減酒に向けた酒類メーカーの取り組みについての意識調査(第2回)
2025年06月02日
【熱中症予防の最新情報】職場の熱中症対策に取り組む企業が増加 全国の熱中症搬送者数を予測するサイトを公開
2025年06月02日
【勤労者の長期病休を調査】長期病休の年齢にともなう変化は男女で異なる 産業保健では性差や年齢差を考慮した支援が必要
2025年06月02日
女性の月経不順リスクに職場の心身ストレスが影響 ストレスチェック活用により女性の健康を支援
2025年06月02日
自然とのふれあいがメンタルヘルスを改善 森が人間の健康とウェルビーイングを高める
2025年05月30日
都民の健康意識は高まるも特定健診の受診率は66% 「都民の健康と医療に関する実態と意識」調査
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶