ニュース

医療ビッグデータの利活用が本格化 EHRは医療者にも患者にもメリットがある 「千年カルテプロジェクト」が進行中

 電子カルテなどの医療情報を大量に収集し、診療や研究、行政、AI(人工知能)の開発などに活用する「千年カルテプロジェクト」が進行している。
 日本でも医療ビッグデータの利活用が本格化している。PHRによりカルテ情報を開示する、患者参加型の医療の実現も視野に入っている。
EHRのデータを匿名加工して医療・研究に活用
 日本でも医療ビッグデータの利活用が本格的にはじまっている。電子カルテなどの医療情報を大量に収集し、診療や研究、行政、AI(人工知能)の開発などに活用するための基盤が整いつつある。

 EHR(電子健康記録:Electronic Health Record)は、全国の医療機関の診療データを集積し、診療データを患者に開示、さらに複数の医療機関が連携して診療するというもの。

 EHRで得られたデータを匿名加工して研究に利用し、未来の医療発展に役立てようという動きが本格化している。
EHR(電子健康記録)のイメージ
 日本は、国民皆保険制度や優れた公衆衛生対策、高度な医療技術などの成果により、世界最高水準の平均寿命を達成している。

 その一方で、健康寿命と平均寿命の乖離が大きいということが、社会保障関係費の増加にもつながり国家的課題になっている。

 情報を集約し、安全かつ有効に活用し研究開発につなげ、世界最高水準の技術を用いたデータベースを構築することが、日本の健康長寿社会の形成に欠かせないと考えられている。
「千年カルテプロジェクト」が進行中
 2015年に開始された「次世代医療ICT基盤協議会」で、新たに大規模なデータセンターを立ち上げ、「千年カルテ」としてスタートすることが決められた。

 「千年カルテプロジェクト」は、参加医療施設や患者にEHR機能などによる付加価値を提供したうえで、医療情報利活用を促進し、自立採算で継続するというもの。
「千年カルテ」のイメージ
 2015~2018年度まで日本医療研究開発機構(AMED)の助成を受け推進され、2019年4月時点で、すでに全国で100以上の医療機関が参加し、EHRとして機能しはじめている。

 3年後には300医療機関と協力して年間500万人の医療情報を収集することを目指している。

 日本全国の病院を中心とした医療施設からレセプトデータ、カルテからの匿名化情報であるDPCの調査データ、診療行為結果(アウトカム)情報などを収集している。

 個人が特定できない情報(匿名加工医療情報)を作成し、研究者や製薬企業へ提供することで、アウトカム情報を用いた高度な分析が可能となり、臨床研究などの研究開発なども活性化できると期待されている。

 診療科をまたがった検査・診療の結果を含むさまざまな医療情報を活用することで、これまで活用が難しかった検査値や医師所見といった情報も多角的に分析することが可能になる。
匿名加工医療情報の利活用を促進する団体を認定
 2018年5月に施行された「次世代医療基盤法」にもとづき、医療情報を収集・匿名加工する認定匿名加工医療情報作成事業者が認定された。

 これに合わせて、匿名加工医療情報の利活用を促進する団体として、一般社団法人ライフデータイニシアティブ(LDI)が2018年4月に発足した。

 LDIは、「千年カルテプロジェクト」を推進する日本医療ネットワーク協会(JMNA)と連携し、次世代医療基盤法の施行にもとない認定事業者として認定を受けた。

 LDI代表理事で、宮崎大学病院EHR普及推進センター特別教授と京都大学大学院医学研究科EHR共同研究講座ディレクターを務める、京都大学名誉教授・宮崎大学名誉教授の吉原博幸氏は、「健康・医療・介護分野での情報通信の利活用を推進することが、日本が抱えている医療費の高騰、介護負担の増大などの問題への対処策になる」と指摘している。
「千年カルテ」にはこんなメリットがある
 「千年カルテプロジェクト」の利点として、▼災害に備えたバックアップ、▼医療施設間情報連携(EHRサービス)、▼患者への情報提供(PHRサービス)、▼患者様の申込みにより本人の治療/健康に関する情報を提供――を挙げている。

 全国の医療機関等の診療データを安全に集積し、診療データを患者に開示、そして、複数の医療機関同士が連携して診療することが、医療や研究開発の質の向上につながる。

 「千年カルテプロジェクト」では患者と医療者がそれぞれインターネット経由でカルテを閲覧することができる。地域を超えて患者が安全にアクセスできるようにするとともに、次世代医療基盤法に沿ったかたちで二次利用することを視野に入れている。
認定匿名加工医療情報作成事業者が行う医療分野の研究開発に資する匿名加工のイメージ
一般社団法人 ライフデータイニシアティブ(LDI)
千年カルテプロジェクト
日本医療研究開発機構・医療情報基盤担当室(内閣府)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「健診・検診」に関するニュース

2023年08月09日
8020達成率は5割以上 若い世代の歯周病増、口腔ケアが課題に
厚労省「令和4年歯科疾患実態調査」より
2023年08月08日
若い世代でも「脂肪肝疾患」が増加 やせていても体脂肪が蓄積 肥満とどう違う?
2023年07月28日
2022年度版「健診・保健指導施設リスト」状況を報告します【保健指導リソースガイド】
2023年07月24日
標準体重でも3分の1は実は「肥満」 BMIは健康状態をみる指標として不十分 やせていても安心できない
2023年07月11日
自治体健診で高齢者のフレイルを簡便に判定 「後期高齢者の質問票」でリスクが分かる 「フレイル関連12項目」とは?
2023年06月20日
肝臓学会が「奈良宣言2023」を発表 肥満・メタボの人は「脂肪肝」にもご注意 検査を受けることが大切
2023年06月12日
自治体健診で「心房細動」を早期発見 健康寿命と平均寿命の差を縮める 日本初の「健康寿命延伸事業」 大分県
2023年06月05日
要介護認定リスクと関連の深い健診6項目が明らかに 特定健診・後期高齢者健診のデータから判明 名古屋市
2023年05月19日
令和4年度「東京都がん予防・検診等実態調査」 受診者増加のための取組み率は健康保険組合で85%に上昇
2023年05月18日
さんぽセンター利用の5割以上「健診結果の措置に関する説明力が向上」
-『令和4年度産業保健活動総合支援事業アウトカム調査報告書』-
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶