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WHOが「5つの食事のヒント」を提案 基本を押さえれば食事改善は難しくない

 世界保健機関(WHO)は、肥満やメタボ、2型糖尿病、がんなどを予防するための「5つの食事のヒント」を提案している。
 5つの食事のヒントとは、▼バランスのとれた食事、▼食塩を減らす、▼脂肪の摂り方に注意する、▼糖質を摂り過ぎない、▼アルコールに注意――食事の改善にあわせて運動も行うとより効果的だとアドバイスしている。
健康・長寿のための食事は万国共通
 世界保健機関(WHO)は、各国の食文化の違いを超えて共通している、より健康的に生きるために必要な「5つの食事のヒント」を提案している。

 栄養バランスが良く、エネルギー摂取量を適正にコントロールした食事は、肥満、2型糖尿病、心臓病、さまざまな種類のがんなどを予防・改善するために不可欠だ。健康的な食事により免疫も改善し、体が感染症と闘う能力を高めるのにも役立つ。

 「健康的な食事の内容や、必要なエネルギー量は、年齢や身体活動レベル、在住している地域で利用できる食品などによって変わってきます。しかし、国や文化を超えて、健康で長生きするために勧められる食事には共通する特徴があります」としている。

1 バランスのとれた食事

 体に必要なすべての栄養素を含む完璧な食品は、母が子を育てるための母乳を除くと、実は存在しない。そのため、食事では、さまざまな新鮮で栄養価の高い食物をとり混ぜることが大切になる。

 具体的には、米や小麦、トウモロコシ、ジャガイモなどの主食と、大豆、インゲンマメ、レンズ豆などの豆類、新鮮な野菜や果物、肉・魚・卵・牛乳などの動物性食品をバランス良くとり混ぜて食べることが大切だ。

 可能な場合は、精製されていない玄米や小麦、トウモロコシ、ヒエ・アワ・キビなどの雑穀も有用だ。これらは低カロリーであるだけでなく、タンパク質やミネラル、ビタミンが多く含まれる。さらには、食物繊維が豊富に含まれ、満腹感が持続しやすいというメリットがある。

 スナックや間食としては、糖質や脂肪、塩分が多い食品を避け、生野菜、ナッツ類(塩を添加していないものが良い)、新鮮な果物を選ぶ。

2 食塩を減らす

 食塩の摂り過ぎは高血圧の原因になり、心臓病や脳卒中の危険因子になる。世界中のほとんどの人が食塩を摂り過ぎており、WHOが推奨する1日の摂取量である5g(小さじ1杯に相当)の2倍を平均して摂取している。

 食塩は加工食品や清涼飲料にも含まれており、見ただけではどれくらい含まれるのかが分からないので注意が必要だ。栄養表示をよく見ることが大切となる。

食塩の摂取量を減らすためのアドバイス
▼料理や調理では、塩を控えめに使い、醤油や塩辛いソースなどの調味料も少なめにする。
▼料理では、ハーブ、スパイス、果物の酸味などを利用する。
▼加工食品を利用するときは、栄養表示をよく見て、食塩(ナトリウム)の多いスナックなどを避ける。
▼乾燥野菜やドライフルーツ、ナッツ、缶詰を使用するときは、塩と砂糖を加えずに食べる。
▼テーブルには塩などの調味料を置かないようにする。

3 脂肪の摂り方に注意する

 特定の脂肪は体に悪いことが明らかになっている。なかでも、マーガリンやドーナッツなどの洋菓子、揚げ物など、工業生産された食品に含まれるトランス脂肪酸は、肥満、心臓病、脳卒中のリスクを高めるので、なるべく摂らないようにする。

 油の多い肉類、ラード、バターなど、主に動物性食品に含まれる飽和脂肪酸も、摂り過ぎると動脈硬化を進行させる。油というと、炒めたり揚げたりする目に見えるものをイメージしがちだが、菓子やパン類、カレールーなどの加工食品にも含まれる。

 一方、不飽和脂肪酸は、サケ・ニシン・イワシなどの魚の脂や、植物性食品に多く含まれ、動脈硬化や血栓を防ぎ、血圧を下げるほか、悪玉のLDLコレステロールを減らすなど、さまざまな効果を期待できる。

 飽和脂肪酸を控えて、魚介類、ナッツ類、豆類、オリーブ油・キャノーラ油・大豆油などの植物油を摂取することで、脂肪酸のバランスを整えられる。

 肉を調理するときは、油を揚げるのではなく、蒸したり煮たりして、なるべく脂肪を摂り過ぎないようにする。

4 糖質を摂り過ぎない

 糖質を摂り過ぎは、体重増加や肥満につながり、2型糖尿病のリスクを高める。糖質は食塩と同じように、加工食品に多く含まれ、見ただけではどれだけ含まれるのかは分からない。実際には、1缶の清涼飲料に小さじ10杯の砂糖に相当する糖質が含まれる。

 加工食品や清涼飲料を利用するときは栄養表示をよく見るようにする。エネルギードリンクやスポーツドリンク、缶コーヒー、フレーバーミルクなどの甘い食品を摂るときには注意が必要だ。

 低カロリー甘味料は、血糖を上げることがなく、体重管理に有用で、肥満や2型糖尿病の改善に役立つという報告がある。しかし、摂り過ぎると味覚が甘味に慣れてしまい、結果として食べ過ぎにつながるおそれもあるので、過剰摂取にはやはり注意が必要。

5 アルコールに注意

 多くの国でアルコールは新年のお祝いの席やパーティーなどで供されており、大量摂取が問題になっている。アルコールの摂り過ぎは、長期的には肥満、高血圧、2型糖尿病、脂肪肝、がん、心臓病、精神疾患などのリスクを高める。

 アルコールの摂取量が少ない人も、ちょっと飲み過ぎただけでリスクが上昇する場合が多い。運転中の人や、アルコールとの相互作用で、作用が増強したり副作用が起こるおそれのある薬を飲んでいる人も注意が必要だ。

 飲めない体質の人は、無理に飲まないようにすることが大切。適量のアルコールを飲む習慣により、心臓病などのリスクが低下するという報告もあるが、飲まないことには問題はまったくない

 夜によく眠るためにアルコールを飲むという人も多いが、慢性的にアルコールを摂取すると、睡眠の質は結果として低下する。寝つきが悪い、睡眠が分断されやすいなどの睡眠の悩みをもっていて改善しない場合は医師に相談しよう。
食事の改善にあわせて運動も行うと効果的
 米国のミシガン大学医学部の管理栄養士であるフェイス ブレア氏は「食事は高血圧、2型糖尿病、肥満、高コレステロール、炎症などに直接に影響します。植物性食品をよく食べる食事スタイルは、食物繊維、ビタミンやミネラルを十分に摂れるので、お勧めします」とアドバイスしている。

 米国人に多い心臓病を予防・改善するためには、野菜、果物、全粒穀物、大豆、ナッツ類、健康的な植物油など、植物性食品を意識して摂るのが効果的だという。

 ミシガン大学などの研究では、植物性食品の多い食事がアテローム性動脈硬化などの心血管疾患の予防に役立つことが示された。血管の内膜にコレステロールが蓄積すると、次第に脂肪分が沈着して、血管が狭くなり、血栓ができる原因になる。

 「食事だけで高血圧や糖尿病、高コレステロールに対策するのは難しいので、食事改善にあわせて運動も習慣化することをお勧めします。食事と運動を改善することで、健康的な生活を実現できます」と、ブレア氏はアドバイスしている。

5 tips for a healthy diet this New Year(世界保健機関(WHO) 2019年12月26日)
5 Eating Tips for a Healthy Heart(ミシガン大学医学部 2020年2月26日)
Diet alone can improve older adults' health(サウス・ダゴタ州立大学 2020年2月25日)
[Terahata]
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