ニュース
大豆など「植物性タンパク質」が寿命を延ばす 動物性の3%を置き換えただけで死亡リスクが低下
2020年08月03日

「動物性タンパク質」を「植物性タンパク質」に置き換えることで、心血管疾患や2型糖尿病のリスクが減少するという研究が発表された。
野菜や穀物、大豆などの植物性食品を食べることで、寿命を延ばせる可能性がある。
野菜や穀物、大豆などの植物性食品を食べることで、寿命を延ばせる可能性がある。
動物性食品の食べ過ぎに注意
タンパク質は、肉・卵・牛乳・魚などに多く含まれる「動物性タンパク質」と、野菜・全粒穀物・大豆・豆類、ナッツなどに含まれる「植物性タンパク質」に分けられる。
筋肉はタンパク質でできており、合成と分解が常に繰り返されているので、食事でタンパク質をしっかり摂ることが必要だ。
筋肉を維持するためには、1日に体重1kgあたりタンパク質1g以上を摂りたい。フレイルのリスクのある高齢者では、筋肉を増やす必要があるため、タンパク質は1日に体重1kgあたり1.2g以上が必要になる。
しかし、注意したいのは、動物性食品を食べ過ぎないようにした方が良いということだ。動物性タンパク質はアミノ酸スコアが高く、良質なタンパク源になるが、食べ過ぎると、飽和脂肪酸やコレステロールが増えるおそれがある。
植物性タンパク質を増やすメリット
植物性タンパク質を摂取すると、2型糖尿病や高血圧のリスクを抑えられるという研究が発表されている。植物性タンパク質を摂ることで、血圧、コレステロール、血糖値の好ましい変化を得られる。
東フィンランド大学の研究では、毎日約5gの動物性タンパク質を植物性タンパク質に置き換えると、糖尿病のリスクが18%減少することが示された。植物性タンパク質を摂ることで、血糖値が低下するという。
植物性食品は糖尿病にも良い
米国糖尿病教育者協会(AADE)によると、野菜、全粒穀物、果物、大豆、豆類、ナッツなどの植物性の食品を摂ることで、過剰にたまった体脂肪が減り、インスリン感受性が改善し、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞を保護する効果を期待でき、糖尿病合併症のリスクが低下する。
「植物性食品をベースとした食事療法は、糖尿病の治療と予防、減量のために勧められます。野菜などの植物性食品を中心とした食事スタイルをもつ人は、2型糖尿病と心臓病の発生率が低いという報告があります」と、AADEのジェイソン ギャレット氏は言う。
植物性食品には、食物繊維、抗酸化物質、ビタミン、ミネラルが豊富に含まれている。
抗酸化物質とは、動脈硬化を引き起こす活性酸素の発生やその働きを抑制したり、活性酸素そのものを取り除く物質のこと。抗酸化ビタミンやポリフェノール、カロテノイドなどの種類がある。
「植物性食品に含まれる食物繊維により、腸内細菌叢が改善し、短鎖脂肪酸の生産が増加します。短鎖脂肪酸は、有害な菌が増えるのを抑えたり、炎症を抑えるなど、有用な働きをします。そのほかにも、栄養素の吸収の改善、満腹感の改善、インスリン抵抗性の減少など多くの利点があります」と、ギャレット氏は言う。
植物性タンパク質に置き換えると死亡リスクが低下

動物性と植物性のバランスが大切
とくに卵を植物性食品になどに置き換えると、死亡リスクは男性で24%、女性で21%、赤身肉では男性で13%、女性で15%、それぞれ低下した。
対象者の食事に含まれるタンパク質の割合は平均で15%で、そのうち60%が動物性、40%が植物性だった。
「今回の研究は、植物性食品の摂取を勧める食事ガイドラインを支持するものになりました」と、米国立がん研究所のジアキ ヒュアン氏は言う。
「動物性食品は良質なタンパク源になりますが、食べ過ぎにはリスクがともないます。植物性食品と良好にバランスをとることが大切です」としている。
Plant protein may protect against type 2 diabetes, meat eaters at greater risk(東フィンランド大学 2017年4月19日)Intake of different dietary proteins and risk of type 2 diabetes in men: the Kuopio Ischaemic Heart Disease Risk Factor Study(British Journal of Nutrition 2017年3月28日)
Don't Miss: "Plant-Based Culinary Skills for a Healthy Gut" in Baltimore!(糖尿病ケア・教育専門家協会(ADCES) 2018年5月10日)
Higher Intake of Plant Protein Compared to Animal Protein Associated with Lower Mortality(米国立がん研究所 2020年7月13日)
Association Between Plant and Animal Protein Intake and Overall and Cause-Specific Mortality(JAMA Internal 2020年7月13日)
Diets high in protein, particularly plant protein, linked to lower risk of death(BMJ 2020年7月22日)
Dietary intake of total, animal, and plant proteins and risk of all cause, cardiovascular, and cancer mortality: systematic review and dose-response meta-analysis of prospective cohort studies(BMJ 2020年7月22日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2022 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「健診・検診」に関するニュース
- 2021年12月21日
- 特定健診・保健指導の効果を10年間のNDBで検証 体重や血糖値が減少し一定の効果 ただし体重減少は5年後には減弱
- 2021年12月21日
- 【申込開始】今注目のナッジ理論、感染症に関する教材が新登場!遠隔指導ツールも新作追加! 保健指導・健康事業用「教材・備品カタログ2022年版」
- 2021年12月13日
- 【新型コロナ】ファイザーのワクチンの3回目接種はオミクロン株にも効く? 抗体価は半分に減るものの2回接種より25倍に増加
- 2021年12月09日
- 保健師など保健衛生に関わる方必携の手帳「2022年版保健指導ノート」
- 2021年11月16日
- 思春期に糖質を摂り過ぎると成長後にメンタルヘルスに悪影響が 単純糖質の摂り過ぎに注意が必要
- 2021年11月09日
- 【世界糖尿病デー】東京都「今日から始めよう!糖尿病予防」キャンペーン 都民の4人に1人は糖尿病かその予備群
- 2021年11月08日
- 肥満のある人・肥満のない人の両方に保健指導が必要 日本人4.7万人の特定健診データを解析
- 2021年11月02日
- 【新型コロナ】ワクチン接種はコロナ禍を終わらせるための重要なツール 50歳以上で健康やワクチンに対する意識が上昇
- 2021年11月02日
- 健診や医療機関で腎臓の検査を受けていない高齢男性は透析のリスクが高い 7万人弱を5年間調査
- 2021年10月26日
- 「特定健診受診率向上プロジェクト」を実施 大阪府と大阪府立大学看護学科が協働 特定健診の対象者に合わせた効果的な受診勧奨
最新ニュース
- 2022年05月27日
- 子どもを亡くした家族への適切な支援を 自治体や医療機関に向けた支援の手引きを作成 グリーフケアに関する調査研究
- 2022年05月23日
- 【新型コロナ】保健師がコロナ禍の拡大を食い止めている 保健師の活動が活発な地域では罹患率は減少
- 2022年05月23日
- 【新型コロナ】起床・朝食が遅くなった子供で運動不足や栄養バランスの乱れが 規則正しい食事・睡眠が大切
- 2022年05月23日
- 【新型コロナ】コロナ禍で結婚数と出生数が減少 将来に対する不安や経済的な悩みが原因?
- 2022年05月23日
- 【子宮頸がん】HPVワクチンの予防効果は優れている 接種9年後の感染率は0% ワクチンの有効率は100%
~保健指導・健康事業用 教材~
-
アイテム数は3,000以上! 保健指導マーケットは、健診・保健指導に役立つ教材・備品などを取り揃えたオンラインストアです。 保健指導マーケットへ