ニュース

糖尿病予備群の段階で合併症リスクは上昇 血糖値が高めの時期が続くのは危険 早めに対策を

 糖尿病予備群の段階で、血糖値が正常な人に比べ、心筋梗塞、脳卒中などの心血管疾患を発症するリスクが大幅に上昇することが、米国の調査で明らかになった。
 2万5,829人を対象とした5年間の追跡期間により、血糖値が正常な人では深刻な心血管イベントの発症リスクが11%だったのに対し、糖尿病予備群では18%に上ることが分かった。
 「糖尿病を予防するだけでは十分ではありません。前糖尿病の予防にも力を入れるべきです」としている。Web開催された第70回米国心臓病学会年次学術集会で発表された。
糖尿病予備群の段階で心血管疾患のリスクが上昇
 糖尿病予備群(前糖尿病:prediabetes)の段階で、血糖値が正常な人に比べ、心筋梗塞や脳卒中などの主要な心血管疾患を発症するリスクが大幅に上昇することが、米国の調査で明らかになった。

 「前糖尿病は、これまで考えられていた以上に深刻なものである可能性があります。今回研究では、深刻な心臓イベントのリスクを高めることが示されました。糖尿病予備群の段階で、より積極的な治療を行う必要があります」と、米国心臓病学会では述べている。

 「一般的に、前糖尿病の段階では、健康リスクはそれほど深刻ではないものと考えがちです。しかし実際には、たとえ2型糖尿病に進行しなかったとしても、主要な心血管イベントを起こす可能性を大幅に高めることが分かってきました」と、米ミシガン州のボーモント病院内科のエイドリアン ミシェル医師は言う。
米国では成人の3人に1人が糖尿病予備群
 前糖尿病は、血糖値が慢性的に高めだが、2型糖尿病と診断されるほど高くはない状態だ。米国疾病予防管理センター(CDC)は、成人の10人に1人にあたる3,400万人が糖尿病を発症しており、さらに3人に1人にあたる8,800万人が前糖尿病だと推定している。

 米国糖尿病学会(ADA)によると、1~2ヵ月の血糖値を反映するHbA1cが5.7~6.4%、空腹時血糖値が100~125mg/dL、または経口ブドウ糖負荷試験で140~199mg/dLであると、前糖尿病であることが疑われる。

 血糖値が高いと、血管内で炎症が引き起こされやすくなり、血管に損傷を与えることになる。やがて血管に狭窄が起こり、最終的には心臓血管の損傷を引き起こす危険性が高まる。

 2型糖尿病が、心筋梗塞などの虚血性心疾患や脳卒中などの主要な危険因子であることはよく知られているが、糖尿病予備群の段階で健康リスクがどれだけ上昇するかはよく分かっていなかった。

関連情報
糖尿病予備群の段階で心血管疾患リスクが2倍に
 今回の単一施設での後ろ向き研究は、ミシガン州のボーモント医療システムで2006~2020年に治療を受けた、18~104歳の2万5,829人の患者を対象に行われた。うち前糖尿病と判定されたのは1万2,691人で、HbA1cが正常な患者1万3,138人が対照群とされた。

 研究グループは、すべての患者を14年間の追跡し、心筋梗塞や脳卒中など、主要な心血管疾患の発症について調べた。

 その結果、5年間の追跡期間(中央値)で、血糖値が正常な人では深刻な心血管イベントの発症リスクが11%だったのに対し、前糖尿病の人では18%に上ることが分かった。

 年齢、性別、体格指数(BMI)、血圧、コレステロール、睡眠時無呼吸症候群、喫煙、末梢動脈疾患など、他の要因を考慮した後でも、高血糖と心血管イベントとの関係は深刻であることが示された。

 「糖尿病予備群の段階で、主要な心血管疾患の危険性がほぼ2倍に上昇することが分かりました。これらは米国の4人に1人の死亡原因になっています」と、ミシェル氏は言う。
血糖値が高めの時期が続くのはリスク
 さらに懸念されるは、糖尿病予備群と判定されたグループでは、その後に血糖値を正常に戻すことができたとしても、心血管イベントを起こすリスクは依然としてかなり高いままだったということだ。心血管イベントのリスクは、糖尿病・前糖尿病ではない患者では6%だったが、前糖尿病では10.5%に上った。

 「血糖値が高めの時期が続くと、その後に血糖値を正常範囲に戻したとしても、心血管疾患を発生するリスクは高いままであることが分かりました。最善のアプローチは、最初から前糖尿病を予防することでしょう」と、ミシェル氏は指摘している。

 前糖尿病と心血管イベントとの関係は、男性であったり、心血管疾患の家族歴や、心臓病の危険因子をもつ人でとくに強かった。また、肥満や過体重の人では、心血管イベントの発生率がとくに高かった。

 「臨床医として、血糖値の上昇のリスクと、それが心臓の健康にどう悪影響をもたらすかについて、患者さんとよく話し合うために、より多くの時間を費やす必要があると感じています。健康的な食事や運動についてアドバイスをし、危険因子を減らし、必要に応じて早い段階で薬物療法を開始する必要もあるかもれません」と、ミシェル氏は指摘している。

Prediabetes May Not Be as Benign as Once Thought(米国心臓病学会 2021年5月5日)
第70回米国心臓病学会年次学術集会
[Terahata]
side_メルマガバナー

「特定保健指導」に関するニュース

2025年06月10日
【アプリ活用で運動不足を解消】1日の歩数を増やすのに効果的 大阪府健康アプリの効果を8万人超で検証
2025年06月09日
【睡眠改善の最新情報】大人も子供も睡眠不足 スマホと専用アプリで睡眠を改善 良い睡眠をとるためのポイントは?
2025年06月09日
健康状態が良好で職場で働きがいがあると仕事のパフォーマンスが向上 労働者の健康を良好に維持する取り組みが必要
2025年06月09日
ヨガは肥満・メタボのある人の体重管理に役立つ ヨガは暑い夏にも涼しい部屋でできる ひざの痛みも軽減
2025年06月05日
【専門職向けアンケート】飲酒量低減・減酒に向けた酒類メーカーの取り組みについての意識調査(第2回)
2025年06月02日
【熱中症予防の最新情報】職場の熱中症対策に取り組む企業が増加 全国の熱中症搬送者数を予測するサイトを公開
2025年06月02日
【勤労者の長期病休を調査】長期病休の年齢にともなう変化は男女で異なる 産業保健では性差や年齢差を考慮した支援が必要
2025年06月02日
女性の月経不順リスクに職場の心身ストレスが影響 ストレスチェック活用により女性の健康を支援
2025年06月02日
自然とのふれあいがメンタルヘルスを改善 森が人間の健康とウェルビーイングを高める
2025年05月30日
都民の健康意識は高まるも特定健診の受診率は66% 「都民の健康と医療に関する実態と意識」調査
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶