ニュース

近くにファストフード店があると肥満や糖尿病になりやすい? ファストフードの栄養は30年間で悪化

 ファストフードの栄養は、30年間で悪化しているという調査結果が発表された。
 健康的なメニューも出てきたが、カロリー、サイズ、塩分含有量などは全体的に悪化しているという。
 ファストフード店の多い地域では、2型糖尿病の発症リスクが高い傾向があることも分かった。
 「健康的なメニューを増やし、消費者が選択しやすくする工夫が必要です」と研究者は指摘している。
ファストフードは低栄養で高カロリー?
 ファストフードは、短時間で調理され、注文してからすぐ食べられる、手軽な食事のこと。ハンバーガー、フライドチキン、フライドポテト、ピザ、ドーナツなど、さまざまなメニューがある。

 ファストフードは米国で1950年代に登場し、世界の食文化を劇的に変えた。日本でも利用者はこの30年間で大幅に増えた。

 「ファストフードの普及は、費用対効果と時間の節約をもたらしましたが、その代償として低栄養と高カロリーの食事の摂取の増加をもたらしました」と、ボストン大学公衆衛生学部のミーガン マクロリー氏は言う。

 「ファストフードのメニューは、30年間で3倍近くに増えました。ファストフードにも健康的なメニューはありますが、カロリー、サイズ、塩分含有量などの栄養は、全体的にはむしろ悪化しています」としている。
30年前よりカロリーと塩分は増えているという結果に
ファストフードのポーションサイズは30年間で増えた

 マクロリー氏らは、ファストフードが肥満や2型糖尿病などの慢性疾患や心臓病などにどのように影響しているかを調査した。研究は米国農務省の農業研究サービスの支援を受けて行われ、詳細は米国栄養士会が発行する「Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics」に発表された。

 研究によると、現在のファストフードで摂取するカロリーは、メインメニューにサイドメニューを付けると、平均で767kcalになる。1日の成人の総摂取カロリーの平均を2,000kcalとすると、ファストフードが40%近くを占めることになる。これに高カロリーの清涼飲料を追加すると、カロリー比率は45~50%に上昇する。

 研究グループは、米国人のファストフードの利用状況について、1986年、1991年、2016年の3回に分けて、ファストフードを1,787のカテゴリーに分類して調査した。マクドナルド、デイリークイーン、ケンタッキーフライドチキンなど、米国の上位10位のファストフードチェーン店のメニューを調査した。

 その結果、ファストフードのメインメニューは10年間で30kcal、30年間で100kcal近く増加したことが分かった。これらは主にポーションサイズの増加によるものだ。

 カロリーだけでなく、塩分(ナトリウム)もほとんどのメニューで増加している。塩分は30年間に1日あたりメインメニューで4.6%、サイドメニューで3.9%、デザートで1.2%、それぞれ増えた。
ファストフードにも変化が求められている
 ファストフードのカロリーと塩分が増えていることは、肥満や2型糖尿病、高血圧、脂質異常症の予防・改善の観点からみると好ましくない。

 世界的に肥満や2型糖尿病の増加は深刻な問題になっており、食事スタイルをいかに改善するかが課題になっている。「消費者が自分の健康について関心をもち、健康的な選択をしやすくする工夫が必要です」と、マクロリー氏は強調している。

 「ファストフードのメニューにカロリーや栄養の表示をする店が増えてきたのは歓迎しますが、その数は十分ではありません。サイズを小さくし価格も安くしたメニューを増やしたり、野菜を増やすなど、もっと変化が必要です」としている。

自宅そばにファストフード店があると糖尿病になりやすい?

 ファストフード店の多い地域では、2型糖尿病の発症リスクが高い傾向があることが、全米で行われた調査で明らかになった。逆に、野菜などの健康的な食品を購入しやすいスーパーマーケットの多い地域では、糖尿病リスクは低下するという。

 研究は、ニューヨーク大学医療センターのポピュレーション健康領域のラニア カンチ氏らによるもの。研究グループは、退役軍人縦断コホート研究から、400万人(平均年齢59.4歳)を超える電子医療記録(EHR)のデータを解析した。

 5年半の追跡期間に13.2%が新たに2型糖尿病と診断された。人口密度の高い都市では、2型糖尿病の発症率は14.3%と高く、郊外では12.6%と低かった。

 さらに、2型糖尿病の発症リスクは、ファストフード店が密集する都市では1.01倍に増え、スーパーマーケットの多い郊外では0.97倍に減った。

 「ファストフード店では、カロリー・脂質・糖質・塩分などをチェックして、健康的なメニューを選択したり、自宅で調理する機会を増やすことが、健康改善と2型糖尿病の予防・改善に役立つ可能性があります」と、カンチ氏は言う。

 「レストランや食料品店で、健康的な食品オプションを組み合わせて販売するなど、消費者が最適な食品を選択しやすくする政策が必要です」としている。

Thirty years of fast food: Greater variety, but more salt, larger portions, and added calories(Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics 2019年2月27日)
Fast Food Restaurants Have Expanded More Than Their Menus(ボストン大学 2019年2月27日)
Thirty years of fast food: Greater variety, but more salt, larger portions, and added calories(Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics 2019年2月27日)
High Availability of Fast-Food Outlets Across All U.S. Neighborhood Types Linked to Increased Type 2 Diabetes(ニューヨーク大学医療センター 2021年10月29日)
Longitudinal Analysis of Neighborhood Food Environment and Diabetes Risk in the Veterans Administration Diabetes Risk Cohort(JAMA Network Open 2021年10月29日)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「特定保健指導」に関するニュース

2025年07月28日
日本の「インターバル速歩」が世界で話題に 早歩きとゆっくり歩きを交互に メンタルヘルスも改善
2025年07月28日
肥満と糖尿病への積極的な対策を呼びかけ 中国の成人男性の半数が肥満・過体重 体重を減らしてリスク軽減
2025年07月28日
1日7000歩のウォーキングが肥満・がん・認知症・うつ病のリスクを大幅減少 完璧じゃなくて良い理由
2025年07月28日
【妊産婦を支援】妊娠時に頼れる人の数が産後うつを軽減 妊婦を支える社会環境とメンタルヘルスを調査
2025年07月22日
【大人の食育】企業や食品事業者などの取り組み事例を紹介 官民の連携・協働も必要 大人の食育プラットフォームを立ち上げ
2025年07月22日
高齢者の社会参加を促すには「得より損」 ナッジを活用し関心を2倍に引き上げ 低コストで広く展開でき効果も高い 健康長寿医療センター
2025年07月18日
日本人労働者の3人に1人が仕事に影響する健康問題を経験 腰痛やメンタルヘルスなどが要因 働きながら生産性低下を防ぐ対策が必要
2025年07月18日
「サルコペニア」のリスクは40代から上昇 4つの方法で予防・改善 筋肉の減少を簡単に知る方法も
2025年07月14日
適度なアルコール摂取は健康的? 大量飲酒の習慣は悪影響をもたらす お酒との良い関係
2025年07月14日
暑い夏の運動は涼しい夕方や夜に ウォーキングなどの運動を夜に行うと睡眠の質は低下?
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,800名)
登録者の内訳(職種)
  • 医 師 3%
  • 保健師 47%
  • 看護師 11%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 20%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶