ニュース

「妊娠糖尿病」の遺伝リスクの高い女性も生活スタイル改善により健康を高められる

 妊娠糖尿病(GDM)の遺伝的リスクが高い女性であっても、健康的な生活スタイルにより、糖尿病の発症を予防できたり、糖尿病のコントロールが容易になる可能性がある。

 フィンランドのヘルシンキ大学は、妊娠中および産後の糖尿病を予防するための生活指導からもっとも恩恵を受ける可能性のある妊婦を特定するための遺伝的リスクスコアを開発した。

 このスコアをもとに、妊娠糖尿病の遺伝的リスクが高い女性を発見し、集中的に生活スタイル改善をはかる治療法の開発を目指している。

妊娠をきっかけに発症する妊娠糖尿病

 妊娠糖尿病(GDM)は、妊娠が原因となり、血糖値が高くなる疾患。原因ははっきりとは分かっていないが、胎盤から、血糖を正常に保つために必要なインスリンの働きを妨害するホルモンが分泌され(インスリン抵抗性)、血糖値が高くなると考えられている。

 日本でも高齢出産の増加にともない、妊娠糖尿病は増加傾向にある。妊娠糖尿病があると、妊婦自身の体にも、生まれてくる赤ちゃんにも負担がかかる。血糖コントロールが悪い状態で妊娠・出産すると、妊婦と赤ちゃんにさまざまな併発症が起こるおそれがある。

 妊婦は妊娠高血圧症候群や羊水量の異常などのリスクが高まり、赤ちゃんも巨大児や心臓の肥大などのリスクがある。また、出産後に血糖値が正常に戻っても、年齢を重ねると糖尿病を発症しやすくなる。

 妊娠中の糖代謝異常には、妊娠前から糖尿病がある妊婦の糖尿病合併妊娠と、妊娠中にはじめて発見される糖代謝異常の2種類がある。一般的に、血糖を調整するインスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性は、妊娠後期になるにつれて強くなる。

 妊娠糖尿病のある妊婦は、安全に妊娠を継続し出産するために、血糖を可能な限り正常にコントロールする必要がある。また、糖尿病がある女性が妊娠を希望する場合は、事前に血糖を十分にコントロールしたうえで、計画的に妊娠することが望ましいと考えられている。

妊娠糖尿病のリスクの高い女性を発見する遺伝的リスクスコアを開発

 妊娠糖尿病(GDM)の遺伝的リスクが高い女性であっても、生活スタイルの改善により、糖尿病の発症を予防できたり、コントールが容易になる可能性がある。

 フィンランドのヘルシンキ大学は、妊娠中および産後の糖尿病を予防するための生活指導からもっとも恩恵を受ける可能性のある妊婦を特定するための遺伝的リスクスコアを開発した。

 このスコアをもとに、妊娠糖尿病の遺伝的リスクが高い女性を発見し、集中的に生活スタイル改善をはかる治療法の開発を目指している。

 研究は、「フィンランド妊娠糖尿病予防研究(RADIEL)」の成果。フィンランドの妊婦の5人に1人が妊娠糖尿病と診断されており、優先して取り組むべき健康上の課題とされている。

 研究グループは、糖尿病の遺伝的リスクと関連の深いポリジェニックリスクスコア(遺伝的リスクスコア)と、2型糖尿病のリスクを高めることが知られている遺伝子多型について調査した。

 516人の妊婦、356人の産後女性から提供を受けた妊娠糖尿病のデータを解析した。その結果、糖尿病の遺伝的リスクスコアは、妊娠中期・後期・出産後1年の血糖値の上昇と関連していることが明らかになった。

妊娠糖尿病の遺伝子リスクの高い女性も生活スタイル改善で健康を高められる

 研究グループはさらに、妊娠糖尿病の遺伝的リスクが高いと判定された妊婦を対象に、妊娠中および出産後の最初の1年間に、食事療法と運動療法によるカウンセリングを提供した。

 その結果、妊娠糖尿病の遺伝的リスクの高い女性では、生活スタイルのカウンセリングは、妊娠糖尿病の発症を63%減らすのに効果的であることが示された。

 「研究では、妊娠糖尿病の遺伝的リスクの高い女性でも、生活スタイルを改善することで、予防・改善が可能であることが示されました」と、同大学産婦人科の専門医であるエミリア フビネン氏は言う。

 「2型糖尿病を発症する遺伝子リスクがもっとも高い女性は、生活スタイル介入を強化することで、ベネフィトがもたらされました」。

 フビネン氏によると、遺伝子リスクスコアを活用することは、妊娠糖尿病のリスクの高い妊婦を特定することを可能にするだけでなく、予防・改善に向けた効果の高いリソースをもたらすことにつながる。限られた医療資源を、母親と子供の両方の健康を守るために役立てられるようになるという。

 ただし、「私たちの遺伝的背景が未来のすべてを決定するものではないことを理解することも重要です。これは、糖尿病にもあてはまります。健康的な生活スタイルを促進するために支援し、糖尿病の遺伝的リスクが高い場合に、これを打ち消すために役立てるべきです」としている。

A healthy lifestyle helps to prevent gestational diabetes in those at highest genetic risk (ヘルシンキ大学 2022年5月4日)
Genetic risk of type 2 diabetes modifies the effects of a lifestyle intervention aimed at the prevention of gestational and postpartum diabetes (Diabetologia 2022年4月30日)

一般社団法人 日本糖尿病・妊娠学会
[Terahata]
side_メルマガバナー

「特定保健指導」に関するニュース

2025年02月25日
【国際女性デー】女性と男性はストレスに対する反応が違う メンタルヘルス対策では性差も考慮したアプローチを
2025年02月25日
【国際女性デー】妊娠に関連する健康リスク 産後の検査が不十分 乳がん検診も 女性の「機会損失」は深刻
2025年02月25日
ストレスは「脂肪肝」のリスクを高める 肥満やメタボとも関連 孤独や社会的孤立も高リスク
2025年02月25日
緑茶を飲むと脂肪肝リスクが軽減 緑茶が脂肪燃焼を高める? 茶カテキンは新型コロナの予防にも役立つ可能性が
2025年02月17日
働く中高年世代の全年齢でBMIが増加 日本でも肥満者は今後も増加 協会けんぽの815万人のデータを解析
2025年02月17日
肥満やメタボの人に「不規則な生活」はなぜNG? 概日リズムが乱れて食べすぎに 太陽光を浴びて体内時計をリセット
2025年02月17日
中年期にウォーキングなどの運動を習慣にして認知症を予防 運動を50歳前にはじめると脳の健康を高められる
2025年02月17日
高齢になっても働き続けるのは心身の健康に良いと多くの人が実感 高齢者のウェルビーイングを高める施策
2025年02月12日
肥満・メタボの割合が高いのは「建設業」 業態で健康状態に大きな差が
健保連「業態別にみた健康状態の調査分析」より
2025年02月10日
【Web講演会を公開】毎年2月は「全国生活習慣病予防月間」
2025年のテーマは「少酒~からだにやさしいお酒のたしなみ方」
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶