ニュース
「妊娠糖尿病」の遺伝リスクの高い女性も生活スタイル改善により健康を高められる
2022年06月07日
妊娠糖尿病(GDM)の遺伝的リスクが高い女性であっても、健康的な生活スタイルにより、糖尿病の発症を予防できたり、糖尿病のコントロールが容易になる可能性がある。
フィンランドのヘルシンキ大学は、妊娠中および産後の糖尿病を予防するための生活指導からもっとも恩恵を受ける可能性のある妊婦を特定するための遺伝的リスクスコアを開発した。
このスコアをもとに、妊娠糖尿病の遺伝的リスクが高い女性を発見し、集中的に生活スタイル改善をはかる治療法の開発を目指している。
妊娠をきっかけに発症する妊娠糖尿病
妊娠糖尿病(GDM)は、妊娠が原因となり、血糖値が高くなる疾患。原因ははっきりとは分かっていないが、胎盤から、血糖を正常に保つために必要なインスリンの働きを妨害するホルモンが分泌され(インスリン抵抗性)、血糖値が高くなると考えられている。 日本でも高齢出産の増加にともない、妊娠糖尿病は増加傾向にある。妊娠糖尿病があると、妊婦自身の体にも、生まれてくる赤ちゃんにも負担がかかる。血糖コントロールが悪い状態で妊娠・出産すると、妊婦と赤ちゃんにさまざまな併発症が起こるおそれがある。 妊婦は妊娠高血圧症候群や羊水量の異常などのリスクが高まり、赤ちゃんも巨大児や心臓の肥大などのリスクがある。また、出産後に血糖値が正常に戻っても、年齢を重ねると糖尿病を発症しやすくなる。 妊娠中の糖代謝異常には、妊娠前から糖尿病がある妊婦の糖尿病合併妊娠と、妊娠中にはじめて発見される糖代謝異常の2種類がある。一般的に、血糖を調整するインスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性は、妊娠後期になるにつれて強くなる。 妊娠糖尿病のある妊婦は、安全に妊娠を継続し出産するために、血糖を可能な限り正常にコントロールする必要がある。また、糖尿病がある女性が妊娠を希望する場合は、事前に血糖を十分にコントロールしたうえで、計画的に妊娠することが望ましいと考えられている。妊娠糖尿病のリスクの高い女性を発見する遺伝的リスクスコアを開発
妊娠糖尿病(GDM)の遺伝的リスクが高い女性であっても、生活スタイルの改善により、糖尿病の発症を予防できたり、コントールが容易になる可能性がある。 フィンランドのヘルシンキ大学は、妊娠中および産後の糖尿病を予防するための生活指導からもっとも恩恵を受ける可能性のある妊婦を特定するための遺伝的リスクスコアを開発した。 このスコアをもとに、妊娠糖尿病の遺伝的リスクが高い女性を発見し、集中的に生活スタイル改善をはかる治療法の開発を目指している。 研究は、「フィンランド妊娠糖尿病予防研究(RADIEL)」の成果。フィンランドの妊婦の5人に1人が妊娠糖尿病と診断されており、優先して取り組むべき健康上の課題とされている。 研究グループは、糖尿病の遺伝的リスクと関連の深いポリジェニックリスクスコア(遺伝的リスクスコア)と、2型糖尿病のリスクを高めることが知られている遺伝子多型について調査した。 516人の妊婦、356人の産後女性から提供を受けた妊娠糖尿病のデータを解析した。その結果、糖尿病の遺伝的リスクスコアは、妊娠中期・後期・出産後1年の血糖値の上昇と関連していることが明らかになった。妊娠糖尿病の遺伝子リスクの高い女性も生活スタイル改善で健康を高められる
研究グループはさらに、妊娠糖尿病の遺伝的リスクが高いと判定された妊婦を対象に、妊娠中および出産後の最初の1年間に、食事療法と運動療法によるカウンセリングを提供した。 その結果、妊娠糖尿病の遺伝的リスクの高い女性では、生活スタイルのカウンセリングは、妊娠糖尿病の発症を63%減らすのに効果的であることが示された。 「研究では、妊娠糖尿病の遺伝的リスクの高い女性でも、生活スタイルを改善することで、予防・改善が可能であることが示されました」と、同大学産婦人科の専門医であるエミリア フビネン氏は言う。 「2型糖尿病を発症する遺伝子リスクがもっとも高い女性は、生活スタイル介入を強化することで、ベネフィトがもたらされました」。 フビネン氏によると、遺伝子リスクスコアを活用することは、妊娠糖尿病のリスクの高い妊婦を特定することを可能にするだけでなく、予防・改善に向けた効果の高いリソースをもたらすことにつながる。限られた医療資源を、母親と子供の両方の健康を守るために役立てられるようになるという。 ただし、「私たちの遺伝的背景が未来のすべてを決定するものではないことを理解することも重要です。これは、糖尿病にもあてはまります。健康的な生活スタイルを促進するために支援し、糖尿病の遺伝的リスクが高い場合に、これを打ち消すために役立てるべきです」としている。 A healthy lifestyle helps to prevent gestational diabetes in those at highest genetic risk (ヘルシンキ大学 2022年5月4日)Genetic risk of type 2 diabetes modifies the effects of a lifestyle intervention aimed at the prevention of gestational and postpartum diabetes (Diabetologia 2022年4月30日) 一般社団法人 日本糖尿病・妊娠学会
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2024 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「特定保健指導」に関するニュース
- 2024年04月30日
- タバコは歯を失う原因に 認知症リスクも上昇 禁煙すれば歯を守れて認知症も予防できる可能性が
- 2024年04月25日
-
厚労省「地域・職域連携ポータルサイト」を開設
人生100年時代を迎え、保健事業の継続性は不可欠 - 2024年04月23日
- 生鮮食料品店が近くにある高齢者は介護費用が低くなる 自然に健康になれる環境づくりが大切
- 2024年04月22日
- 運動が心血管疾患リスクを23%低下 ストレス耐性も高められる 毎日11分間のウォーキングでも効果が
- 2024年04月22日
- 職場や家庭で怒りを爆発させても得はない 怒りを効果的に抑える2つの方法 「アンガーマネジメント」のすすめ
- 2024年04月22日
- 【更年期障害の最新情報】更年期は健康な老化の入り口 必要な治療を受けられることが望ましい
- 2024年04月22日
- 【肺がん】進行した人は「健診やがん検診を受けていれば良かった」と後悔 早期発見できた人は生存率が高い
- 2024年04月16日
- 塩分のとりすぎが高血圧や肥満の原因に 代替塩を使うと高血圧リスクは40%減少 日本人の減塩は優先課題
- 2024年04月16日
- 座ったままの時間が長いと肥満や死亡のリスクが上昇 ウォーキングなどの運動は夕方に行うと効果的
- 2024年04月15日
- 血圧が少し高いだけで脳・心血管疾患のリスクは2倍に上昇 日本の労働者8万人超を調査 早い段階の保健指導が必要