ニュース

認知症予防のための生活スタイル改善に年齢は関係ない 18歳の若者も80歳の老人も同じく必要

 認知症の危険因子のない高齢者は、10~20歳若い人と同じように、脳を健康に保てていることが明らかになった。

 「あなたが18歳の若者であっても、80歳の老人であっても、食事・運動・睡眠などの生活スタイルを改善することは、認知症リスクを減少するうえで、年齢よりも重要かもしれません」、と研究者は述べている。

健康的な生活スタイルは年齢よりも重要

 認知症の危険因子として糖尿病・喫煙習慣・難聴などが知られているが、これらのない高齢者は、10~20歳若い人と同じように、脳を健康に保てていることが、カナダのベイクレスト高齢者医療センターの研究で明らかになった。

 「今回の研究で、健康的な生活スタイルは、認知機能のレベルを決定するうえで、年齢よりも重要である可能性が示されました」と、トロント大学ロットマン研究所で認知神経学を研究しているアナリーズ ラプルーム氏は言う。

 「認知症を予防するために、2型糖尿病の予防、糖尿病のある人は血糖コンロールを良好に維持すること、難聴への対処、禁煙、必要に応じてサポートを取得するなど、できることはたくさんあります」としている。

認知症の危険因子をオンラインでチェック

 ベイクレスト高齢者医療センターやトロント大学は、脳の健康状態を簡単に評価できる「コグニシティ 脳の健康 評価ツール」を開発している。このツールはインターネットで無料で公開されており、20分ほどで自分の認知症リスクについて知ることができる。

 ツールで調べられるのは、認知症の危険因子として知られている、▼高血圧、▼糖尿病、▼喫煙習慣、▼難聴、▼外傷性脳損傷、▼アルコール・薬物乱用、▼うつ病、▼低教育などの項目で、いずれも生活スタイルの改善により修正が可能なものだ。

 ツールの点数に応じて、食事・運動などの生活スタイルを改善し、健康状態を全体的に高めるために役立つスマートトラッカーも提供される。認知機能の低下や認知症が疑われる場合には、フィードバックと推奨事項が表示され、医師の診療を受けることを勧め、医師と共有できるレポートも提供される。

認知症の危険因子のない高齢者の脳は若者と同等

 研究グループは今回、18~89歳の2万2,117人に参加してもらい、このツールを利用してもらった。参加者は、自宅でこのツールを使い、認知症リスクについて判定を受けた。

 その結果、高齢者(66~89歳)は、中年者(45~65歳)や若年者(18~44歳)に比べ、危険因子が多い傾向があったが、40代~70代で危険因子をもたない人は、多くの危険因子をもつ10~20歳年下の人と認知能力は同等であることが示された。

 さらに、危険因子が増えるにつれ、認知能力の低下も進み、これは3年の加齢に相当しており、年齢が上がるにつれてその関連性は大きくなることも、多項式回帰分析により明らかになった。

認知症対策は人生の早いうちに開始すると効果的

 「認知症予防に関する研究のほとんどは、中高年の成人を対象としていますが、今回の研究では、18歳以上の参加者のデータも含めました」と、同センターと同研究所のディレクターで脳神経学を研究しているニコール アンダーソン氏は言う。

 「この研究は、生涯にわたる認知症の危険因子を、生活スタイルから調べた最初のものです」としている。

 「認知症の危険因子は、できる限り人生の早期から対処することが必要で、またそれを実行することは可能であることが示されました」としている。

 危険因子が増えるにつれ、認知能力の低下も進みやすくなる。たとえば、3つの危険因子をもつ人は、9年もの加齢に相当する認知能力の低下につながる可能性がある。

 しかし、食事・運動・睡眠などの生活スタイルを改善することで、危険因子を減らすことができ、認知症のリスクも減少できる。

すべての人は認知症のリスクを減らす力がある

 「研究では全体として、すべての人は認知機能低下と認知症のリスクを減らす力をもっていることが示されました」と、ラプルーム氏は言う。

 「たとえば、糖尿病の人は、良好な血糖コントロールを維持し、食事や運動などを見直し、かかりつけの医師に処方された薬をきちんと服用し、血圧などについても管理し、タバコを吸っている人は禁煙すれば、認知症のリスクを減らすことができます」。

 「あなたが18歳であろうと90歳であろうと、ご自分の現在の危険因子について知り、生活スタイルを改善し対策をはじめてください。そうすれば、脳の健康を維持でき、おそれることなく年齢を重ねることができます」としている。

 今回の研究に、カナダ アルツハイマー病協会とカナダ自然科学工学研究評議会が支援している。研究グループは、心と体が何十年も若く、認知能力を良好に維持できている「スーパー高齢者」が、通常の高齢者とどう違うのかを調べる研究も計画している。

Whether you're 18 or 80, lifestyle may be more important than age in determining dementia risk, study reveals (ベイクレスト高齢者医療センター 2022年7月13日)
The adverse effect of modifiable dementia risk factors on cognition amplifies across the adult lifespan (Alzheimer's & Dementia: Diagnosis, Assessment & Disease Monitoring 2022年7月13日)
Brain Health Assessment - Cogniciti - Brain Health Powered by Science (コグニシティ)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「特定保健指導」に関するニュース

2025年07月28日
日本の「インターバル速歩」が世界で話題に 早歩きとゆっくり歩きを交互に メンタルヘルスも改善
2025年07月28日
肥満と糖尿病への積極的な対策を呼びかけ 中国の成人男性の半数が肥満・過体重 体重を減らしてリスク軽減
2025年07月28日
1日7000歩のウォーキングが肥満・がん・認知症・うつ病のリスクを大幅減少 完璧じゃなくて良い理由
2025年07月28日
【妊産婦を支援】妊娠時に頼れる人の数が産後うつを軽減 妊婦を支える社会環境とメンタルヘルスを調査
2025年07月22日
【大人の食育】企業や食品事業者などの取り組み事例を紹介 官民の連携・協働も必要 大人の食育プラットフォームを立ち上げ
2025年07月22日
高齢者の社会参加を促すには「得より損」 ナッジを活用し関心を2倍に引き上げ 低コストで広く展開でき効果も高い 健康長寿医療センター
2025年07月18日
日本人労働者の3人に1人が仕事に影響する健康問題を経験 腰痛やメンタルヘルスなどが要因 働きながら生産性低下を防ぐ対策が必要
2025年07月18日
「サルコペニア」のリスクは40代から上昇 4つの方法で予防・改善 筋肉の減少を簡単に知る方法も
2025年07月14日
適度なアルコール摂取は健康的? 大量飲酒の習慣は悪影響をもたらす お酒との良い関係
2025年07月14日
暑い夏の運動は涼しい夕方や夜に ウォーキングなどの運動を夜に行うと睡眠の質は低下?
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,800名)
登録者の内訳(職種)
  • 医 師 3%
  • 保健師 47%
  • 看護師 11%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 20%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶