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【新型コロナ】ブロッコリーの「スルフォラファン」が新型コロナに効果 ウイルス増殖や炎症を抑制

 ブロッコリーやキャベツなどのアブラナ科の野菜に含まれる「スルフォラファン」が、新型コロナウイルスの体内での増殖を抑え、新型コロナの予防と治療に役立つ可能性があるという研究を、米ジョンズ ホプキンス大学医学部が発表した。

 スルフォラファンが、新型コロナや一般的な風邪を引き起こすウイルスに対する、潜在的で新しい強力な武器になりえるとしている。新型コロナの予防や治療に効果的であるかどうかを確かめるために、ヒトを対象とした試験を計画している。

アブラナ科の野菜のスルフォラファンの健康機能に着目

 ブロッコリー・キャベツ・芽キャベツ・大根・白菜・カリフラワー・クレソンなどのアブラナ科の野菜は、動脈硬化や、心臓病や脳卒中などの心血管疾患の進行を予防するのに有用という研究が発表されている。

 なかでもブロッコリー・キャベツ・ケール・芽キャベツには、「スルフォラファン」の天然前駆体が豊富に含まれる。ブロッコリーの新芽であるブロッコリースプラウトは、スーパーなどで入手しやすくなってきたが、とくにスルフォラファンの含有量が多い。

 スルフォラファンは、植物由来の有機硫黄化合物の一種で、さまざまな生理活性をもち、その健康機能が注目されている。

 天然のスルフォラファンには、抗炎症や解毒の作用などを高め、免疫細胞の働きを助ける作用があると考えられている。がん細胞やウイルスの増殖を抑制し、免疫力を高めるという報告がある。

 スルフォラファンを摂取すると、インスリン抵抗性や炎症、腸内環境の改善も期待できるという研究も発表されている。

スルフォラファンがウイルスの増殖を抑える

 米国のジョンズ ホプキンス大学では、早くからスルフォラファンに注目し、1990年代のはじめに抗がん効果があることを発見するなど、その働きのメカニズムを解明する研究をしている。

 同大学は今回、新型コロナや一般的な風邪を引き起こすウイルスに対して、スルフォラファンがその増殖を抑えるなど、潜在的な作用があることを、研究室での実験で明らかにした。

 新型コロナは世界中で600万人以上の死亡の原因となり、一般的な風邪も米国だけで毎年3.5兆円(250億ドル)と推定される経済的損失をもたらしているという。

 「新型コロナのパンデミックがはじまったとき、私たちは抗ウイルス活性について複数の化合物をスクリーニングし、スルフォラファンが他のウイルスに対して中程度の活性を示していたので、新型コロナウイルスに対して試してみました」と、同大学小児センターでウイルス学を研究しているロリ ジョーンズ-ブランド氏は言う。

スルフォラファンと抗ウイルス薬と組み合わせると効果が高まる

 研究グループはまず、細胞をスルフォラファンに1~2時間曝露した後、新型コロナウイルスと一般的なコールドコロナウイルスであるHCoV-OC43に感染させた。

 その結果、低マイクロモル(µM)濃度のスルフォラファン(2.4-31µM)が、デルタおよびオミクロン変異体を含む新型コロナウイルス6株、およびHCoV-OC43コロナウイルスの複製を50%減少させ、保護効果があることを確認した。以前にウイルスに感染した細胞でも同様の結果がみられた。

 次に、スルフォラファンを、新型コロナで入院した成人の回復を促進するために使用されている抗ウイルス薬であるレムデシビルと組み合わせた場合の効果を調べた。

 その結果、スルフォラファンとレムデシビルがいくつかの組み合わせ比率で相乗的に相互作用が起こり、新型コロナウイルスおよびHCoV-OC43に感染した細胞のウイルス量を50%減らしたことを確かめた。スルフォラファンとレムデシビルを低用量を組み合わせると、どちらか単独で治療するよりも、ウイルスに対してより効果的であることが示された。

スルフォラファンがウイルス量と炎症を減らす効果を確認

 「ウイルス感染症の治療では、複数の化合物の組み合わせることがより強力な戦略となることは、これまでも示されています。スルフォラファンとレムデシビルを上手に組み合わせると、単独で使用するよりも、より効果的な治療になる可能性が示されたのは興味深いです」と、同大学医学部のアルバロ オルドネス氏は言う。

 研究グループはさらに、新型コロナに感染したマウスモデルに、感染前に体重1kgあたり30mgのスルフォラファンを投与すると、投与しかったマウスに比べ、ウイルス感染に関連する体重減少が大幅に抑えられることを発見した(7.5%減少)。

 さらに、ウイルス量も、肺(17%減少)、上気道(9%減少)、肺損傷(29%減少)と、有意に減少したことを確かめた。スルフォラファンは肺の炎症を減少し、免疫システムが正常に働かなくなると起こる過剰な免疫反応から細胞を保護することも判明した。

 「研究では、スルフォラファンが、新型コロナウイルスとHCoV-OC43コロナウイルスに対する抗ウイルス性をもち、免疫応答の制御にも役立つこきとが示されました。この多機能活性は、新型コロナ以外のウイルス感染の治療にも役立てられる可能性があります」と、オルドネス氏は言う。

ヒトを対象とした試験を計画

 「ただし、研究で確認されたのは、動物実験によるもので、今後はヒトを対象とした研究が必要です。また、使用したのは天然のスルフォラファンであり、オンラインや店舗で入手可能なサプリメントで同様な効果を得られるかは分かりません。そうしたサプリメントを急いで購入しないように、注意が必要です」と、ジョーンズ-ブランド氏は述べている。

 研究グループは、スルフォラファンがこれらの感染症の予防と治療に効果的であるかを評価するために、ヒトを対象とした試験を実施することを計画している。

 「新型コロナを予防・治療するためにワクチンと抗ウイルス薬が必要です。ウイルスの新しい変異体が発生しており、集団での潜在的な影響が大きい現在では、そうした薬剤はとくに求められています。しかし、副反応や副作用も懸念されています」。

 「スルフォラファンはより安価で安全で、入手しやすいので、有望な治療法になる可能性があります」としている。

Chemical found in leafy greens shown to slow growth of COVID-19 and common cold viruses (ジョンズ ホプキンス大学医学部 2022年3月23日)
Sulforaphane exhibits antiviral activity against pandemic SARS-CoV-2 and seasonal HCoV-OC43 coronaviruses in vitro and in mice (Communications Biology 2022年3月18日)
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