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妊娠中に発酵食品を食べると生まれた子供は睡眠不足が少ない? 母親の腸内細菌叢は子供に受け継がれる
2022年09月20日

出典:富山大学、2022年
富山大学は、妊娠中の発酵食品(味噌汁・ヨーグルト・チーズ・納豆)の摂取量と、生まれた子の睡眠時間との関連を調べた結果、チーズを多く摂取した母親から生まれてきた子供は、3歳時点で睡眠不足になるリスクが低くなることを明らかにした。
母親由来の腸内細菌叢は、子供に受け継がれる可能性があり、また発酵食品の積極的な摂取が、腸内細菌叢に好ましい変化を与え、腸内細菌叢の多様性は覚醒・睡眠リズムを良好にすることが知られている。
研究は、環境省が全国の10万組の子供とその両親の参加を得て進めている大規模な疫学調査「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」のデータを用いたもの。
日本の子供は睡眠不足 妊娠中の発酵食品摂取量との関連は?
5年毎に総務省が実施している社会生活基本調査によると、平均睡眠時間は男女ともに前世紀から減少傾向にあり、特に10代の睡眠時間が短いことが明らかになっている。また、日本の子どもの睡眠時間は他の国に比べると短いとされている。
一方、発酵食品の積極的な摂取は、腸内細菌叢に変化を与え、腸内細菌叢の多様性は覚醒・睡眠リズムを良好にすることが知られている。
富山大学の研究グループは以前、妊娠中に味噌汁を多く摂取していた母親から生まれた子供は、1歳時点で睡眠不足のリスクが低くなることを報告していた。しかし、妊娠中の発酵食品の摂取と、生まれた子の1歳以降の影響についてはよく分かっていなかった。
そこで研究グループは今回、「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」に参加している6万4,200組の妊婦とその子供を対象に、妊娠判明から妊娠約7ヵ月目までに摂取した発酵食品の摂取量と、3歳時点での子供の睡眠不足との関連を調べた。
妊娠中のチーズ摂取量が多いと、生まれた子供の睡眠不足が少ない
その結果、チーズの摂取量がもっとも少ない群を基準(1.0)にして、チーズの摂取量と睡眠不足の子供の発生率を比べた場合、妊娠中のチーズ摂取量がより多い群では、3歳時点の子供の睡眠不足の割合が少なくなることが明らかになった。
一方、味噌汁、ヨーグルト、納豆では、摂取量と睡眠不足の関連はみられなかった。
チーズには、生きた乳酸菌と酵素を含む「ナチュラルチーズ」と、熱処理で乳酸菌を死滅させた「プロセスチーズ」があり、日本ではナチュラルチーズの消費量は比較的少ない。
また、日本の年間消費量は年々増加しているものの、ヨーロッパの国々に比べると少ないことが知られている。
妊娠中のチーズ摂取量と生まれた子供の3歳時点における睡眠不足の関連
妊娠中のチーズ摂取量がより多いと、3歳時点の子供の睡眠不足の割合が少なくなった
妊娠中のチーズ摂取量がより多いと、3歳時点の子供の睡眠不足の割合が少なくなった

出典:富山大学、2022年
母親由来の腸内細菌叢が子供に受け継がれる可能性を示唆

エコチル調査 富山ユニットセンター 子どもの健康と環境に関する全国調査
子どもの健康と環境に関する全国調査 エコチル調査 (環境省)
Association between maternal fermented food consumption and child sleep duration at the age of 3 years: the Japan Environment and Children's Study (BMC Public Health 2022年8月6日)
Association between maternal fermented food consumption and infant sleep duration: The Japan Environment and Children's Study (PLOS ONE 2019年10月4日)
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