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10月10日は「転倒予防の日」
小売業や社会福祉施設に急増する「行動災害」に注意を
―「転倒防止・腰痛予防対策の在り方に関する検討会」より

背景には高年齢労働者の増加

 この背景には高年齢労働者の増加がある。雇用者数に占める60歳以上の割合は、2000年の約9%から2018年には約17%まで上昇。これに伴うような形で、労働災害による死傷者数に占める60歳以上の割合も、2000年の約15%から2018年には約26%に上昇している。

 高年齢労働者の労働災害をみると、墜落・転落では、男性で60歳代後半では20歳代の約4倍。転倒では、女性の60歳代後半は20歳代に比べて実に16倍と大幅に増加しており、高齢年齢労働者の増加が労働災害増加要因になっている。
 また、労働災害による休業期間をみても年齢が上がるにつれて休業期間が長くなっており、60歳以上では6割強、70歳以上では7割ほどが休業1か月以上。しかも高年齢者ほど災害が重篤化しやすく、人的資源の観点からも影響が大きい。

図5 高齢者の就労と労働災害の状況
(画像をクリックすると、大きな画像が表示されます)

図6 高年齢労働者の労働災害の特徴
(画像をクリックすると、大きな画像が表示されます)

 このような労働災害状況やこれまでの対策も踏まえて、検討会では今後の方策について議論を重ね、前述したとおり8月30日に検討事項の中間整理案を提示した。
 中間整理案は、大きく以下の6項目にわけて構成されている。

 ① エビデンスに基づいた対策の推進
 ② 安全衛生教育の在り方、関係者の意識改革
 ③ 業種や業務の特性に応じた取り組み
 ④ 職場における対策の実施体制の強化
 ⑤ 労働者の健康づくり等
 ⑥ 中小企業等事業者への支援

 このうち①では、労働災害統計の基となる労働者死傷病報告について電子申請を原則とし、報告者の負担軽減や報告内容の適正化、統計処理の効率化をいっそう推進するように要請。これに関連し、厚生労働省は関係省令を改正する考えだ。
 ③では、腰痛予防対策として介護職員の身体の負担軽減を図る「ノーリフトケア」や介護機器等の導入について積極的な普及を図ることを提案。転倒防止では滑りやつまずき等を防ぐよう、段差の解消など基本的な取り組みを徹底し、器具・設備の開発促進・普及を求めている。
 ⑤では、理学療法士等の活用やスポーツの習慣化、骨密度・「ロコモ度」・視力等の転倒災害の発生リスクの「見える化」による健康づくりの推進などをあげている。
 ⑥について、従来から高年齢労働者の安全対策に要した費用を補助する「エイジフレンドリー補助金」により職場環境の改善に取り組む中小企業を支援してきた。この補助金についていっそうの活用に向け運用を見直すとともに、拡充を図る方向だ。

これを機会にエイジフレンドリーガイドラインの活用を

 この検討会では、小売業や社会福祉施設などを視野に入れて議論が進められている。しかし、その他のどの業種の企業においても高年齢労働者が増加していることは論を俟たない。10月10日の「転倒予防の日」を機会に、あらためて職場の労働環境や安全対策を確認することも一考だろう。

 また、2020年3月に厚生労働省が公表した「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(エイジフレンドリーガイドライン)」をあらためて振り返るチャンスでもある。チェックリストなども公表されているので、職場で活用できるものがあれば活用し、自分たちの職場を見直し、「場のリスク」「人のリスク」を確認して、よりいっそうの職場改善に努めてはいかがだろうか。

【あわせて読みたい】
オピニオン「高齢者の特性に配慮した「エイジフレンドリー職場」を目指して」
(日本産業衛生学会エイジマネジメント研究会)

<参考資料>
転倒防止・腰痛予防対策の在り方に関する検討会(厚生労働省)
令和3年の労働災害発生状況を公表(厚生労働省)
高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(厚生労働省)
行動災害の予防対策の推進について(厚生労働省)
高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(エイジフレンドリーガイドライン)(中央労働災害防止協会)

[保健指導リソースガイド編集部]
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