ニュース
運動に認知症の予防効果が 仲間とともに行う運動はより効果が高い 運動と社会交流を両立
2023年02月06日

運動は1人で行うよりも、仲間といっしょに行った方が、認知機能の低下を予防するためにより効果的であることを、筑波大学が明らかにした。
⾼齢者の認知症を予防するのに運動が効果的であることよく知られているが、予防に不可⽋なもうひとつの因子である社会交流の充実については⼗分に分かっていなかった。
仲間との社会的なつながりが、抑うつなどのメンタルヘルスや死亡などの健康指標に、より好ましい影響をもたらすことも知られており、運動の効果とあわせることで、認知機能への影響をより高められることが示された。
「⾼齢者の認知症を予防するために、すでに広く実践されている1⼈で⾏う運動の意義を認めつつも、仲間と⾏う運動を推奨していくことが重要と考えられます」と、研究グループでは述べている。
仲間と行う運動が認知機能障害の抑制に効果的
運動は高齢者の認知症予防に有効であることが知られている。その効果を高めるためには、中・高強度運動を45分以上、高頻度に行うことが推奨されている。 こうした運動の時間・強度・頻度についての検討に加え、近年では、グループで行う運動が認知機能の低下を予防するのに効果的であることも報告されている。 社会交流の充実もまた、認知症予防のために不可欠な因子であり、グループでの活動は、社会的なつながりの強化や広がりをももたらすと考えられている。 しかし、これまでの研究では、運動サークルなどのグループ運動に着目しており、夫婦や友人などが2人以上で行う運動が認知機能に与える影響については検討されていなかった。 また、認知機能の低下予防効果を高める要素のひとつである、運動の頻度についても考慮されていなかった。 そこで研究グループは、高齢者を対象に、1人で行う運動および仲間と行う運動の実践状況を調査し、認知機能障害の抑制に効果的な運動スタイルと頻度を明らかにすることを目的に研究を行った。仲間と行う運動により認知機能障害の抑制効果をより強く得られる

認知機能障害の発⽣リスクは、1⼈で運動を行っている高齢者では22%低下、仲間と運動を行っている高齢者では34%低下
週2回以上の運動を実践している高齢者を、運動を実践していない高齢者と比較
週2回以上の運動を実践している高齢者を、運動を実践していない高齢者と比較

出典:筑波大学、2023年
⾼齢者がより多く実践しているのは1⼈で⾏う運動
研究グループは今回、茨城県笠間市在住の高齢者を対象に2017年の郵送調査を起点として、4,358人(平均年齢 76.9歳、女性 51.8%)を対象に、約4年間にわたり追跡調査を行った。 1人で行う運動と2人以上の仲間と行う運動の実践状況を調査するとともに、厚生労働省が基準を示す「認知症高齢者の日常生活自立度」を用いて認知機能障害を判定し、これらの関連を統計解析で検証した。 解析にあたっては、年齢、性別、教育歴、主観的経済状況、独居、喫煙状況、飲酒状況、ボディマス指数(BMI)、既往歴(高血圧、脂質異常症、糖尿病、心臓疾患、神経・関節痛)、睡眠時間、抑うつ傾向、主観的認知機能、他の運動方法(例:仲間と行う運動が認知機能障害の抑制に与える影響を検討する際には1人で行う運動の実践状況)を統計的に調整した。 まず、高齢者の運動実践状況を確認。1人で行う運動については、非実践者の割合は52.4%、週1回実践者は5.8%、週2回以上実践者は41.8%だった。また、仲間と行う運動の非実践者の割合は75.2%、週1回実践者6.1%は、週2回以上実践者の割合は18.7%で、1人で行う運動の方が仲間と行う運動よりも広く行われていることが分かった。
1人で運動を行っている高齢者の方が週2回以上実践している割合は高い

出典:筑波大学、2023年
1人で行う運動も効果はあるが、仲間と行うとより強い効果が
次に、1人で行う運動と仲間と行う運動が認知機能障害の抑制に与える影響について検討した。追跡期間中に認知機能障害が確認されたのは7.7%(337人)だった。 どちらの運動でも、週2回以上の実践により、認知機能障害の発生は有意に抑制された。しかし、効果の大きさという点では、1人で行う運動(22%のリスク減)よりも、仲間と行う運動(34%のリスク減)の方がより強い抑制効果を示した。 これらの結果から、高齢者の認知症予防では、1人で行う運動の意義を認めつつも、仲間と行う運動を推奨していくことが重要であることが示唆された。 「本研究では、1⼈で⾏う運動と仲間と⾏う運動の効果を認知機能障害の抑制という観点から検証し、どちらも認知機能障害の発⽣を抑制する⼀⽅で、仲間と⾏う運動でより⼤きな効果が期待できることを明らかにしました」と、研究グループでは述べている。 「しかし、運動での仲間の具体的な構成については考慮できておらず、今後は、運動中の他者との関わり⽅による認知機能への影響の違いを検討する必要があります」。 「たとえば、夫婦のみでの運動と、⽼若男⼥が混在する運動とでは、⼼理状態や会話のバリエーションが異なると考えられます。また、地域住⺠で集まって運動する際には、まとめ役の⼈とそれ以外の⼈とで認知機能への影響が変わる可能性もあります」としている。 筑波大学大学院人間総合科学研究科体育科学専攻 大藏研究室⼭⼝県⽴⼤学 社会福祉学部
Impact of exercising alone and exercising with others on the risk of cognitive impairment among older Japanese adults (Archives of Gerontology and Geriatrics 2022年12⽉23⽇)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2025 SOSHINSHA All Rights Reserved.


「特定保健指導」に関するニュース
- 2025年02月25日
- 【国際女性デー】女性と男性はストレスに対する反応が違う メンタルヘルス対策では性差も考慮したアプローチを
- 2025年02月25日
- 【国際女性デー】妊娠に関連する健康リスク 産後の検査が不十分 乳がん検診も 女性の「機会損失」は深刻
- 2025年02月25日
- ストレスは「脂肪肝」のリスクを高める 肥満やメタボとも関連 孤独や社会的孤立も高リスク
- 2025年02月25日
- 緑茶を飲むと脂肪肝リスクが軽減 緑茶が脂肪燃焼を高める? 茶カテキンは新型コロナの予防にも役立つ可能性が
- 2025年02月17日
- 働く中高年世代の全年齢でBMIが増加 日本でも肥満者は今後も増加 協会けんぽの815万人のデータを解析
- 2025年02月17日
- 肥満やメタボの人に「不規則な生活」はなぜNG? 概日リズムが乱れて食べすぎに 太陽光を浴びて体内時計をリセット
- 2025年02月17日
- 中年期にウォーキングなどの運動を習慣にして認知症を予防 運動を50歳前にはじめると脳の健康を高められる
- 2025年02月17日
- 高齢になっても働き続けるのは心身の健康に良いと多くの人が実感 高齢者のウェルビーイングを高める施策
- 2025年02月12日
-
肥満・メタボの割合が高いのは「建設業」 業態で健康状態に大きな差が
健保連「業態別にみた健康状態の調査分析」より - 2025年02月10日
- 【Web講演会を公開】毎年2月は「全国生活習慣病予防月間」2025年のテーマは「少酒~からだにやさしいお酒のたしなみ方」