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肥満者向けの減量プログラムにお金を支給するインセンティブを付けると成功率は大幅に向上
2023年02月06日

肥満のある人向けの減量プログラムに、目標を達成した場合に金銭を支給するインセンティブを付けると、減量の成功率は大幅に向上するという研究を、米ニューヨーク大学医学部などが発表した。
金銭によるインセンティブは、一般的に行われている、活動量計、スマホアプリ、ダイエット本や無料ツールなどを使った減量プログラムよりも効果が高いとしている。
研究成果は、「JAMA Internal Medicine online」にオンライン掲載された。
既存の支援や教育を超えた新しいツールが必要
肥満は、2型糖尿病、心臓病、がんなどのリスクを高める。肥満の解消に取組んでいる人々を支援するために、さまざまな支援や教育が提供されているが、十分な成果を得られにくいことが課題になっている。 「米国では、成人の40%以上はBMI(体格指数)が30を超える肥満であり、肥満は爆発的に増えています。肥満の問題を一気に解決する方法はありませんが、既存の支援や教育を超えた新しいツールが必要とされています」と、米ニューヨーク大学医学部内科・臨床イノベーション学科のメラニー ジェイ氏は言う。 研究グループは今回、ニューヨーク市とロサンゼルス市にある病院や診療所で募集した、低所得地域に住む、平均体重が99kgで平均年齢が48歳だった668人の男女を対象に、減量プログラムを提供し、1年間追跡して調査した。 参加者に、もとの体重から5%(4.5kg)以上を減らすのを目標して、無料の減量プログラムに取組んでもらった。参加者を無作為に3つの群に割り付け、6ヵ月後と1年後に比較した。 3つの群とは、(1) 減量プログラムによる支援と、減量に成功した場合に金銭を支給するインセンティブを提供する群、(2) 減量プログラムによる支援のみの群、(3) 減量について解説した無料のツールのみを提供する群。 関連情報金銭インセンティブにより半年後の減量成功率は49%に向上
金銭によるインセンティブを受け取る群は、減量または目標達成に応じて毎月支払いを受け取った。その額は、合計すると平均して440ドル(5万6,600円)で、最大750ドル(9万6,500円)だった。 減量プログラムは、毎月2回以上の減量カウンセリングの教室に参加し、食事日誌を毎日つけ、体重測定を週に3回以上行い、活動量計を持ち歩き、運動を週に75分以上行うというもの。 その結果、金銭インセンティブを受け取った群では、6ヵ月後に49%が減量に成功し、目標を達成した。1年後も目標体重を維持できている人は減ったものの、それでも41%の人が目標を達成できていた。 一方、インセンティブを受け取らなかった対照群では、体重の5%を減らした人の割合は、6ヵ月後には39%で、1年後には42%だった。 さらに、無料ツールのみを提供された群では、目標を達成できていたのは、6ヵ月後は5人に1人、1年後は3人に1人にとどまった。インセンティブにより6ヵ月の短期でも効果を期待できる
「今回の研究で、インセンティブ、とくに金銭による報酬を提供することは、6ヵ月という短期間であっても、肥満を解消するためのリソースをあまりもたない人々の減量を成功させるのに有用であることが示されました」と、ジェイ氏は述べている。 一方で、インセンティブを提供しなかった群でも、1年後の減量の成功率は、インセンティブを提供した群と同等になったことも注目するべきだとしている。 また、インセンティブによる減量効果が、今後何年にもわたり維持できるかどうか、さらには、体重管理を長期的に維持するために、さらに強力な「ブースター」となるインセンティブが必要なのかを知るために、今後も研究を続ける必要があるとしている。 Financial Incentives Boost Weight-Loss Programs (NYU Langone Health / NYU Grossman School of Medicine 2022年12月5日)Effectiveness of Goal-Directed and Outcome-Based Financial Incentives for Weight Loss in Primary Care Patients With Obesity Living in Socioeconomically Disadvantaged Neighborhoods: A Randomized Clinical Trial (JAMA Internal Medicine 2022年12月5日)
Financial Incentives for Weight Reduction Study (FIReWoRk) (ClinicalTrials.gov)
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