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「ガーデニング」で肥満・メタボを改善 野菜を食べられ運動にもなる メンタルヘルスも向上

 ガーデニングを通して、植物や土、自然に直接ふれることが、健康増進に役立つという研究が増えている。

 ガーデニングを行うことは、2型糖尿病や肥満の予防・改善、うつ・不安症状、ストレスの低下、生活満足度の向上につながるという。

 ガーデニングは、健康や生活の質を向上させるうえで、有効な手段となる可能性がある。

自然に直接ふれることが心身の健康増進に役立つ

 ガーデニングとは、草木や花の手入れ、野菜作りなどを、趣味として行う庭仕事のこと。自然の趣を生かした英国風のガーデニングが有名だ。

 米国のコロラド大学の研究によると、ガーデニングは肥満症や2型糖尿病などの慢性疾患、がんなどのリスクを減らし、メンタルヘルスを高めるのにも役立つ可能性がある。

 ガーデニングをはじめた人の多くは、野菜や果物などからより多くの食物繊維を摂るようになり、より多くの身体活動も行うようになり、健康的な体重になったという。

 ガーデニングにより、社会的な交流の幅が広がり、精神的な健康も高められることも分かった。

 「ガーデニングに参加した人からは、ガーデニングは心が疲れたときの気分転換になり、明るく元気な気分になるのに役立つといった感想も聞かれました」と、同大学環境学部のジル リット教授は言う。

 「ガーデニングには、気分を良くする何かがあると考えられます。手頃な費用負担ではじめられ、続けられるのも魅力的です。公共の菜園を解放している地域も増えてきました」と指摘している。

ガーデニングに取り組むと食物繊維の摂取量が増え、運動量も増加

 研究は、ガーデニングに関するはじめての無作為化比較試験として、米国がん学会(ACS)の支援を得て行われた。研究成果は、「Lancet Planetary Health」に発表された。

 研究には、デンバー地域に在住している、ガーデニング歴のない平均年齢41歳の成人291人が参加した。

 参加者の半数に、コミュニティガーデンや、種子や苗木、道具、ガーデニングに関するレクチャーなどを無料で提供し、ガーデニングに取り組んでもらった。

 1年後、ガーデニングに取り組んだグループは、取り組まなかったグループに比べ、1日に摂取する食物繊維の量が平均1.4g(7%)増えていた。食事ガイドラインでは、1日に25~38gの食物繊維を摂ることが勧められている。

 ガーデニングを行うことで、運動や身体活動の時間も、週に42分増えていた。運動ガイドラインでは、週に150分の活発な身体活動を行うことが推奨されているが、ガーデニングを週に2~3回行うと、その28%を満たすことができたという。

 さらには、ガーデニングにより、ストレスと不安のレベルも減少した。ガーデニングが、精神的健康を高めるのにも効果的であることが示された。

 「ガーデニングは、年齢、社会経済的地位、人種、学歴などに関係なく、手頃な費用負担で取り組め、生涯にわたり続けることができます」と、リット教授は言う。

 「さらに、野菜などの新鮮な食物を提供し、都市部に自然をもたらし、近隣の環境を改善する効果も期待できます」としている。

ガーデニングは小児や若年者の健康改善にも役立つ

 ガーデニングは、小児や若年者の肥満の予防・改善にも役立つという、別の研究も発表されている。都市で育った子供の多くは、ガーデニングの経験をもたないまま成長している。

 英国の6,467人の小児を対象とした調査では、3~5歳のときにガーデニングや自然とふれあう機会をもてなかった子供は、7歳までに肥満になるリスクが高くなることが示された。

 研究は、オランダのアムステルダム自由大学医療センターなどによるもので、詳細は欧州糖尿病学会(EASD)の年次総会で発表された。

 「子供の頃に過体重や肥満の傾向があると、成人してから肥満になるリスクが高くなります。肥満は、2型糖尿病の発症リスクを高める重要な危険因子です」と、同センターのアンネマリー シャルクウェイク氏は言う。

小児期や若年期から対策し、将来の糖尿病発症を予防

 過体重や肥満の発症には、環境・家庭・社会経済的な因子が関わっていると考えられている。研究グループは、3歳~5歳の子供を取り巻く環境が、7歳になってから過体重や肥満にどう影響するかを評価した。

 2000年~2001年に英国で生まれた約1万9,000人の子供や若者を対象に実施されている「ミレニアムコホート研究(MCS)」に参加した6,467人の子供を対象に、生後9ヵ月、3歳、5歳、7歳の時点まで追跡して調査した。

 その結果、3~5歳のときにガーデニングや自然とふれあう機会をもてなかった子供は、7歳までに肥満になるリスクが38%上昇したことが明らかになった。

 「小児や若年者の過体重や肥満を抑えるために、ガーデニングや自然体験も必要である可能性があります。屋外空間へのアクセスを増やすことは、教育である程度補うことができます」と、シャルクウェイク氏は指摘する。

 「成人してから2型糖尿病などを発症するのを予防するために、小児期や若年期にどのような教育や環境の整備が必要となるかを解明するために、さらに多くの研究が必要です」としている。

ガーデニングに取り組むと血糖値やコレステロール値が改善

 米国のヒューストン公衆衛生大学院やテキサス大学健康科学センターによる別の研究でも、学校でガーデニングに取り組むことで、子供の血糖値やコレステロール値などが改善することが示されている。

 「ガーデニングに、栄養や料理の教育を組み合わせることで、血糖管理を改善し、悪玉コレステロールを減らす効果を得られることが示されました」と、同大学公衆衛生学のアドリアナ ペレス教授は言う。

 研究グループは2016年~2019年に、テキサス州オースティン地区の16の小学校を対象に、9ヵ月のガーデニングなどに取り組む子供と、取り組まない子供に分けて、どのような影響があらわれるかを調べた。

 その結果、ガーデニングに取り組んだ子供は、1~2ヵ月の血糖値の平均を示すHbA1cが0.02%低下し、悪玉のLDLコレステロールも6.4mg/dL低下した。

 「ガーデニングや料理教室により、野菜や食物繊維の摂取量が増え、吸収が早く血糖値を上げやすい単純糖質の摂取量が減りました。これらが、血糖管理の改善と悪玉コレステロールの低下につながった可能性があります」と、ペレス教授は指摘している。

The scientific reasons you should resolve to start gardening in 2023 (コロラド大学ボルダー校 2023年1月5日)
Effects of a community gardening intervention on diet, physical activity, and anthropometry outcomes in the USA (CAPS): an observer-blind, randomised controlled trial (Lancet Planetary Health 2023年1月)
New research on community gardening reveals the roots of emotional and physical health (コロラド大学ボルダー校 2011年6月21日)
Children growing up without a garden more likely to be obese (ユニヴァーシティ カレッジ ロンドン 2015年9月16日)
Study from England shows no garden access for young children linked to childhood obesity later in childhood (Diabetologia 2015年9月15日)
Millennium Cohort Study
School garden-based interventions can improve blood sugar, reduce bad cholesterol in children (テキサス大学健康科学センター 2023年1月10日)
Effects of a School-Based Nutrition, Gardening, and Cooking Intervention on Metabolic Parameters in High-risk Youth: A Secondary Analysis of a Cluster Randomized Clinical Trial (JAMA Network Open 2023年1月10日)
[Terahata]
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