産後うつ対策が進む 妊娠中の保健指導でも産後のメンタルヘルスについて伝える機会が増加-母子保健事業の実施状況調査
母子保健事業については、産後うつ病をスクリーニングする「エジンバラ産後うつ病自己評価票(EPDS)」を実施している自治体が前年に比べて増加。産後うつ病の可能性が高い母親への電話による状況確認や、家庭訪問といったフォロー体制も整ってきている様子が垣間見られた。
地方自治体における母子保健事業の実施状況等の把握や、健やか親子21(第2次)における評価、地域の母子保健事業の推進に活用してもらうのを目的に公表した。
母子保健事業の実施状況については1,741市区町村、353県型保健所、47都道府県が回答。母子保健計画の策定状況や母子保健連絡協議会などの開催状況などについて調査結果をまとめている。
このうち市区町村には乳幼児健康診査の実施状況や、産後・育児期の支援状況などを調査。産後のメンタルヘルス対策についても聞いている。
産後の母親は「産後うつ」に代表されるように、メンタルヘルスの不調をきたしやすい。放置すれば養育不全や児童虐待につながる可能性もあることから、早期介入・早期支援が重要だと考えられている。
今回の結果では、妊娠中の保健指導で産後のメンタルヘルスについて、妊婦とその家族に伝える機会を「設けている」と回答した自治体は57.7%で、前年の55.5%を上回った。妊娠中から啓発に努める動きが広がってきている。

一方、産後うつ病をスクリーニングするうえで、国際的な評価を得ている「エジンバラ産後うつ病自己評価票(EPDS)」を実施しているかどうか聞いた設問では、「全ての褥婦を原則対象として実施」と答えた自治体が1,425と全体の81.8%を占めた。これは前年の1,358自治体より増加している。
「一部の濁婦を対象」も含めると9割を超え、「EPDS以外の連絡票や他の調査方法等を実施して把握」も含めると95%の自治体が、何らかのスクリーニングを実施していることになる。「何も実施していない」自治体は67で、前年の96より減少している。
また産後1カ月で、EPDSの点数が30満点中9点以上を示し、産後うつ病になる可能性が高い母親へのフォロー体制は「母子保健担当署内で対象者の情報を共有し、今後の対応を検討している」が92.2%で、前年比2.6ポイント増加。そのほか「2週間以内に電話にて状況を確認」が62.4%、「1カ月以内に家庭訪問」が70.5%で、いずれも前年より増えた。
令和3年度については、産後1カ月までにEPDSを実施した褥婦の人数合計は427,991人、産後1カ月までのEPDSが9点以上の褥婦の人数合計は41,510人だった。
EPDSの質問票や採点用資料は、日本産婦人科医会による妊産婦のメンタルヘルスを守るための活動「MCMC(Mental Health Care for Mother & Child)」でダウンロードできる。日本語のほか36カ国語でも掲載されている。
一方、全国における乳幼児健康診査問診回答状況のまとめでは、「妊娠・出産について満足している者の割合」は、「はい」が509,814人で全体の84.3%(前年比1.7ポイント増)を占めた。
また「積極的に育児をしている父親の割合」について聞いた設問で「よくやっている」と答えた人は、3・4カ月児で70.1%、1歳6カ月児で68.4%、3歳児で63.6%となっており、いずれも前年比で増加。これら3つの健診時点で「よくやっている」と回答した人の割合の平均値は67.4%で、前年比1.6ポイント増だった。


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