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抗菌薬は風邪には効かないのに半数が思い違い 抗菌薬が効かなくなる「AMR」とは? 調査

 風邪症状で医療機関を受診した人の4割は、「抗菌薬(抗生物質)」の効果について「ウイルスをやっつける」と誤解しており、実際の抗菌薬処方の有無にかかわらず、半数は抗菌薬を処方されたと思っていることが、抗菌薬(抗生物質)の処方についての調査で明らかになった。

 「抗菌薬が効かなくなる"薬剤耐性(AMR)"が起こる要因のひとつに、抗菌薬の不適切な使用があげられます。薬を安全に正しく使用するための第一歩として、自身が服用する薬の種類を正しく認識することが重要です」と、研究者は指摘している。

抗菌薬はウイルスには効かない

 調査は、国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンターが、全国の20歳~69歳の成人を対象に、2022年11月~12月にインターネットで実施したもの(有効回答数:400サンプル)。

 対象となったのは、過去3年以内に風邪症状(発熱・のどの痛み・咳・鼻水・くしゃみなど)で医療機関を受診し、お薬手帳で処方薬を確認できた人(健康診断やワクチン接種などでの診察を除く)。

 感染症を引き起こす原因には、細菌とウイルスがあり、これらは大きさや仕組みがまったく異なる。一般的な「風邪」や「インフルエンザ」などは、ウイルスが原因で発症する。

 一方、「抗菌薬(抗生物質)」は、細菌による感染症の治療に用いられる薬で、ウイルスには効かない。一般的に、治療に利用できる抗ウイルス薬は少数だ。

抗菌薬を不適切に飲むことで薬剤耐性菌が出現

 調査では、抗菌薬の誤解について質問された。誤解が多かったのは「抗菌薬はウイルスをやっつける」(40.0%)、「抗菌薬は風邪症状が治ったら早くのむのをやめる方がよい」(26.5%)、「抗菌薬は熱を下げる」(24.0%)だった。

 実際には、不適切に抗菌薬を飲むことで、薬が効かない薬剤耐性菌が出現するリスクが高まる。

 「薬剤耐性(AMR)」とは、感染症の原因となる細菌に、抗菌薬が効かなくなること。細菌が体に入り、病気を引き起こしたときには、抗菌薬を服用して治療することもあるが、一部の菌は「薬剤耐性菌」に変化することがある。

 さらに、抗菌薬は病原菌だけでなく、健康バランスを保っている細菌(常在菌)も排除して、細菌同士のバランスも崩してしまうので、薬剤耐性菌はなおも増えやすくなる。

約半数が抗菌薬が処方されていると誤解

 また、「抗菌薬は風邪に効かない」にもかかわらず、約半数が風邪症状で抗菌薬が処方されていると誤解していることが分かった。

 処方薬のなかに、実際に抗菌薬が含まれていた人は19.0%で、60代が28.4%ともっとも多く、50代は12.4%ともっとも少なかった。

 「処方薬のなかに抗菌薬が含まれていると思うか」を尋ねたところ、「含まれていると思う」と答えた人は全体で49.3%となり、実際の抗菌薬処方の有無にかかわらず、半数近くが風邪症状で医療機関を受診した際に抗菌薬を処方されたと思っていることが分かった。

 年代別にみると、「含まれていると思う」と答えた人は、20代で58.3%、50代で41.2%だった。

「抗菌薬が処方されている」と思っている人の6割以上は誤り

出典:国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンター、2023年

抗菌薬は万能薬ではない ウイルスはやっつけない!

 さらに、風邪症状で医療機関を受診した際に処方された薬のなかに、「抗菌薬が含まれていると思うか否か」と、「実際に処方されているか否か」が一致しているかを確かめた。

 その結果、正答率(一致率)は66.3%で、3人に1人が自身への処方薬のなかに抗菌薬が含まれているかについて誤認していることが判明した。年代別にみると、60代は正答率が71.6%ともっとも高かった。

 「抗菌薬を、自己判断で服用したり、医師の処方指示を守らずに服用しなかったりすると、病気が治らないばかりか、副作用や薬剤耐性菌の出現などの問題に直面します」と、研究グループでは指摘している。

 「抗菌薬には、喉の痛みや鼻水を止める効果はなく、万能薬ではありません! ウイルスはやっつけません! 薬剤耐性は、感染症の治療や予防の妨げになります」と強調している。

 抗菌薬は、風邪やインフルエンザの熱を下げる効果はなく、風邪などを早く治すことはない。さらには、処方された日数、用量を守って飲み切ることが重要となる。

 「自身が処方された薬の種類を理解することが、薬を正しく安全に利用するための第一歩となるため、処方せんを受け取るだけでなく、処方内容について、医師や薬剤師の説明を聞いたり、服薬指示を確認して正しく服用しましょう」と、アドバイスしている。

自分の飲んでいる薬について確かな知識をもつことは重要

 国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンターでは、感染症に対して抗菌薬(抗生物質)が効かなくなる「薬剤耐性(AMR)」に対策するため、AMRに関する情報を広く集め問題を分析し、結果を分かりやすく伝える活動をしている。

 「今回の調査で、風邪症状で受診した際に、抗菌薬を処方されたと思っている人のうち、実際に抗菌薬を処方されていたのは35.0%であることが示されました。逆に言えば"処方された"と思って家に帰ってきた人の65.0%は、抗菌薬は実際には含まれていなかったということです」と、同センター情報・教育支援室長の藤友結実子氏は言う。

 「これは、抗菌薬が具体的にどの薬か分かっていない人が多くいることを示しています。抗菌薬だけでなく自分が服用する薬について確かな知識を得ることは、自分の病気や治療、健康状態をよく知り、ひいてはより良く生きることにつながります。抗菌薬だけでなく、自分の薬についてもっと知っていただきたいと思います」。

 「ほとんどの人は医師や薬剤師の説明を聞いているものの、あまり話を聞いていないという人も少なからずいます。聞いていない理由として、"聞いても難しくて分からないから"というのがもっとも多くみられました。これらの結果から、医療従事者は、患者さんが理解しやすい説明を工夫することが必要だと考えます」としている。

国立国際医療研究センター AMR臨床リファレンスセンター かしこく治して、明日につなぐ~抗菌薬を上手に使って薬剤耐性(AMR)対策~ AMR(薬剤耐性)ワンヘルス動向調査
[Terahata]
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