ニュース

若い女性が羨望する「シンデレラ体重」 実は健康リスクを高めていることが判明 必要な栄養を摂り低体重を予防

 若くて低体重の女性は、ビタミン欠乏を含めた栄養障害におちいりやすいことが、藤田医科大学の調査で明らかになった。とくに1人暮らしの女性は、魚料理や野菜の摂取が不足しがちだという。

 「やせ願望の高い若い女性に、魚(ビタミンB12やビタミンDを含む)や野菜(食物繊維や葉酸を含む)なども豊富に含む食事をして、必要な栄養を十分に摂ることを勧める必要があります」と、研究者は指摘している。

 「女性の低体重は、不妊、骨粗鬆症、耐糖能障害、低出生体重児などの原因になります。社会的に取り組むべき課題といえます」としている。

肥満だけでなく若い女性のやせも課題に

 「シンデレラ体重」という言葉をご存知だろうか? SNSなどを通じ、モデル体型にあこがれる若い女性のあいだで話題になっている、「モデルのように美しく見える体重」のこと。

 「BMI」は、肥満度をあらわす指標として用いられている体格指数で、[体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)]で求められる。日本の基準では、BMI 18.5未満が「低体重(やせ)」、18.5以上25未満が「普通体重」、25以上が「肥満」と判定される。

 シンデレラ体重は、「BMI 18」を理想としているそうで、これは低体重にあたる。

 日本では一般的に、肥満や肥満と関連のある2型糖尿病などの疾患のリスクは、男性でより深刻である一方で、女性ではとくに若い人の「やせ」も課題となっている。

 2019年の国民健康・栄養調査では、BMI 25以上の肥満の割合は、男性で33.0%、女性で22.3%に上るが、BMI 18.5未満のやせの割合は、女性では11.5%で、とくに20代の女性では20.7%にも上ることが示されている。

 「低体重(やせ)」により、不妊、骨粗鬆症、耐糖能障害、低出生体重児、免疫力の低下、低体温などが引き起こされることもあり、健康的な体重を維持することは大切だ。

低体重の女性は栄養状態が悪化 握力低下やリンパ球減少なども

 藤田医科大学の研究グループは今回、若年女性の栄養状態に着目し、大学の教職員(20~39歳の女性1,457人)のうち、若年かつ低体重(BMI 17.5未満)が認められた健康診断受診者44人に対して、栄養評価を行った。

 教職員を対象とした健康診断で、低体重が占める割合は、20~39歳の女性では16.8%、20~39歳の男性では4.5%と、圧倒的に女性の方で多かった。

 その結果、若年で低体重の女性の特徴として、「握力が低い」「コレステロールやリンパ球といった栄養マーカーが低い」ことが浮き彫りになった。

 次に、低体重について二次健診を行い、栄養評価外来を受診した教職員についてさらに調べたところ、血中プレアルブミン、リンパ球、コレステロール濃度が低く、栄養状態が悪化していることが示唆された。

 さらに、食事内容をみたところ、▼食物繊維を含めた炭水化物、▼鉄分、▼カルシウムの摂取の低い女性が9割程度いた。

 詳しくみると、▼ビタミンD欠乏が98%に、▼ビタミンB1欠乏が4.6%に、▼ビタミンB12欠乏が20%に、▼葉酸欠乏が14%にそれぞれみられた。どれも女性にとって大切な栄養素だ。

 ビタミンDは、腸からのカルシウムやリンの吸収を調節することで、正常な骨格と歯の発育を促す。またビタミンBは、エネルギーや糖質、アミノ酸の代謝に欠かせない栄養素で、食事から摂取した糖質を体内でエネルギーに変えたり、疲労回復を促す働きがある。葉酸は、ビタミンB12とともに赤血球の生産や神経の働きを助けるビタミン。

 さらに、モデル体型(シンデレラ体重)の20~39歳の女性では、栄養障害のほかにも、▼握力低下、▼コレステロール低下(59%)、▼リンパ球数低下(32%)、▼プレアルブミン低下(34%)などもみられた。

「魚や野菜を食べる」など食生活に関する啓発が必要

 研究は、藤田医科大学臨床栄養学講座の飯塚勝美教授、健康管理部の成瀬寛之教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nutrients」にオンライン掲載された。

 「若年女性は今後、妊娠出産を控えており、低体重のもたらす健康リスクを再度周知する必要があります」と、研究者は述べている。

 「とくに1人暮らしの方では、魚料理や野菜の摂取が不足がちになるので、魚(ビタミンB12、ビタミンD)や野菜(食物繊維や葉酸)などを豊富に含む食事を推奨するなど、食生活に関する啓発を合わせて行う必要があります」。

 「今後は、過去からさかのぼって栄養障害をともなう低体重の頻度を調査し、環境要因の寄与を明らかにし、同時に、若年女性の低栄養についての全国的な調査が必要と考えられます」としている。

藤田医科大学臨床栄養学講座
Young Japanese Underweight Women with "Cinderella Weight" Are Prone to Malnutrition, including Vitamin Deficiencies (Nutrients 2023年5月7日)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「特定保健指導」に関するニュース

2025年02月25日
【国際女性デー】女性と男性はストレスに対する反応が違う メンタルヘルス対策では性差も考慮したアプローチを
2025年02月25日
【国際女性デー】妊娠に関連する健康リスク 産後の検査が不十分 乳がん検診も 女性の「機会損失」は深刻
2025年02月25日
ストレスは「脂肪肝」のリスクを高める 肥満やメタボとも関連 孤独や社会的孤立も高リスク
2025年02月25日
緑茶を飲むと脂肪肝リスクが軽減 緑茶が脂肪燃焼を高める? 茶カテキンは新型コロナの予防にも役立つ可能性が
2025年02月17日
働く中高年世代の全年齢でBMIが増加 日本でも肥満者は今後も増加 協会けんぽの815万人のデータを解析
2025年02月17日
肥満やメタボの人に「不規則な生活」はなぜNG? 概日リズムが乱れて食べすぎに 太陽光を浴びて体内時計をリセット
2025年02月17日
中年期にウォーキングなどの運動を習慣にして認知症を予防 運動を50歳前にはじめると脳の健康を高められる
2025年02月17日
高齢になっても働き続けるのは心身の健康に良いと多くの人が実感 高齢者のウェルビーイングを高める施策
2025年02月12日
肥満・メタボの割合が高いのは「建設業」 業態で健康状態に大きな差が
健保連「業態別にみた健康状態の調査分析」より
2025年02月10日
【Web講演会を公開】毎年2月は「全国生活習慣病予防月間」
2025年のテーマは「少酒~からだにやさしいお酒のたしなみ方」
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶