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日本人の98%が「ビタミンD不足」 丈夫な骨づくりに不可欠 ビタミンDの摂取が多いと死亡リスクは低下

 ビタミンDには、体内のカルシウム吸収を促して骨を増強するとともに、筋肉の合成を促す作用もあるとみられている。

 食事からのビタミンDの摂取が多い人は、死亡リスクが低い傾向があることが、10万人近くの日本人を19年間追跡した大規模な調査で明らかになっている。

 しかし、日本人の98%は、ビタミンDが不足していることも分かった。

 ビタミンD不足をなくす効果的な方法をご紹介する。

丈夫な骨をつくるためにビタミンDは不可欠

 骨を健康にするために、食事で注意したのは、カルシウムとビタミンD、良質なタンパク質、さらにはビタミンKをバランス良く摂ること。

 カルシウムは、乳製品・大豆製品・緑黄色野菜・海藻・魚などに多く含まれる。カルシウムは乳製品から効率良く摂ることができる。コップ1杯の牛乳(200mL)に200mgのカルシウムが含まれている。

 また、丈夫な骨をつくるために、ビタミンDも不可欠だ。ビタミンDには、体内のカルシウム吸収を促して骨を増強する作用がある。ビタミンDが著しく足りていないと、骨折リスクが大幅に上昇するという報告がある。

 ビタミンDの不足を防ぐには、ビタミンDを多く含む食品を食べることが大切。ビタミンDは、サバ・アジ・サケ・マグロ・サンマといった脂肪性の魚や、卵、チーズ、シイタケ・エリンギなどのキノコ類などに多く含まれている。

日光を浴びるとビタミンDが生成

 ビタミンDの不足を防ぐには、日光を適度に浴びることも大切だ。紫外線を浴びることで、皮膚でビタミンDの生成が促される。1日に1回は日光を浴びたい。

 日光の紫外線の量は季節や緯度、時刻によって異なるが、東京では、7月の晴天日のお昼頃であれば5分くらい、午後であれば10分くらい日の光を浴びれば、必要なビタミンDを生成できるとみられている。

 さらに、ビタミンKは骨をつくる働きを促す。ビタミンKは、納豆などの大豆食品、キャベツ・ホウレンソウ・小松菜などの葉物野菜、ブロッコリーなどの緑黄色野菜、豆類、海藻類、卵などに多く含まれる。

ビタミンDには筋肉の合成を促す作用も

 筋肉を増やすためには、運動をするとともに栄養が重要。ビタミンDは、筋肉にとっても大切な栄養素。ビタミンDには、骨を増強するとともに、筋肉の合成を促す作用もあるとみられている。

 さらに、筋肉を減らさないようにするために、タンパク質を十分に摂ることがやはり必要。とくに高齢者は、肉や魚などのタンパク質が足りていなかったり、ごはんなどの糖質を中心とした食事に偏ることがある。食事制限をしている女性も、タンパク質は不足しがちだ。

 肉・魚・卵・牛乳などに多く含まれる「動物性タンパク質」と、大豆や穀物などに多く含まれる「植物性タンパク質」をバランスよく摂ることが必要となる。

ビタミンDの摂取が多い人は死亡リスクが低い 日本人9万人超を調査

 食事からのビタミンDの摂取が多い人は、死亡リスクが低い傾向があることが、10万人近くの日本人を19年間追跡した大規模な調査でも明らかになっている。

 とくに、女性や、太陽光線の量の少ない高緯度地域に住んでいる人、高血圧のある人、カルシウム摂取量が多い人で、食事からのビタミンD摂取による健康効果は高いことが示された。

 また、ビタミンDの摂取が多い人では、脳梗塞と肺炎の死亡リスクも低いことも明らかになった。ビタミンD摂取がもっとも多い人では、脳梗塞は38%、肺炎は21%、それぞれ死亡リスクが低下した。

 ただし、ビタミンD摂取と死亡リスク低下との関連は、カルシウムの摂取量によって異なり、カルシウムの多いグループでのみ関連がみられた。

 研究は、国立国際医療研究センターや国立がん研究センターなどの研究グループが、45~74歳の男女9万3,685人を追跡して調査したもの。

 「日本人のような、カルシウム摂取量が比較的少ない集団では、十分な量のカルシウムとビタミンDにより、循環器疾患の発症が予防され、結果として死亡リスクの低下につながる可能性があります」と、研究グループでは指摘している。

日本人の98%が「ビタミンD不足」

 日本人の98%が、ビタミンDが不足していることが、東京慈恵会医科大学による大規模な調査で明らかになった。

 研究グループは、2019年4月~2020年3月に東京都内で健康診断を受けた5,518人を対象に調査を実施。

 研究グループによると、ビタミンDの不足は、骨粗鬆症だけでなく、感染症、心血管疾患、神経筋疾患、自己免疫疾患発症などにも関連し、新型コロナの重症化因子としても注目されている。

 世界的にもビタミンDの不足について関心が高まっている一方で、必要基準範囲が完全には確立されていないことが課題となっている。

 研究グループは今回、島津製作所と新開発した液体クロマトグラフィー・質量分析法(LC-MS/MS)システムを使用して、日本ではじめて血清中25-ヒドロキシビタミンD(25(OH)Dの基準濃度を計算した。

 その結果、女性では7~30ng/mL、男性では5~27ng/mL、全体で6~29ng/mLとなり、健常人の98%が日本代謝内分泌学会・日本整形外科学会が提唱するビタミンD基準濃度である<30 ng/mLに達していないことが判明した。

 さらに、測定されたビタミンDのほとんどは、動物あるいは日光由来のビタミンD3であり、シイタケなどの植物由来のビタミンD2はほぼ検出されなかった。また、年齢が低いほど、ビタミンD不足の割合が高くなった。

日本人の食生活が変化 植物性食品が足りていない?

 研究は、東京慈恵会医科大学 臨床検査医学講座の越智小枝教授、整形外科学講座の斎藤 充教授らによるもの。研究成果は、「Journal of Nutrition」に掲載された。

 藤田医科大学による別の研究でも、とくに若年で低体重の女性で、ビタミンDやビタミンBが足りていないことが示されている。とくに、低体重の女性のビタミンD欠乏は98%にも上るという。

 「今回の研究結果から、日本人の食生活の変化によって、現代社会ではとくに植物由来のビタミンDが摂取されなくなっていることが推察されます」と、越智教授らの研究グループでは述べている。

 「今後の超高齢化社会へ向け、ビタミンDの摂取は、骨粗鬆症や骨折の予防につながるため、ますます重要になっています。ビタミンDが不足している現状への早急な介入とともに、ビタミンD不足を引き起こすその他の原因についても解析が必要です」としている。

Vitamin D and Risk for Type 2 Diabetes in People With Prediabetes: A Systematic Review and Meta-analysis of Individual Participant Data From 3 Randomized Clinical Trials (Annals of Internal Medicine 2023年2月7日)
Determination of a Serum 25-Hydroxyvitamin D Reference Ranges in Japanese Adults Using Fully Automated Liquid Chromatography-Tandem Mass Spectrometry (Journal of Nutrition April 2023年4月23日)
多目的コホート研究「JPHC Study」(国立がん研究センター がん対策研究所 予防関連プロジェクト)
Vitamin D intake and all-cause and cause-specific mortality in Japanese men and women: the Japan Public Health Center-based prospective study (European Journal of Epidemiology 2023年1月31日)
Young Japanese Underweight Women with "Cinderella Weight" Are Prone to Malnutrition, including Vitamin Deficiencies (Nutrients 2023年5月7日)
[Terahata]
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