ニュース

30代~40代に健診で高血圧や肥満を指摘された人は高齢になると認知症リスクが上昇 若いうちから健康改善を

 30代から40代の成人初期に健康診断などで高血圧や肥満を指摘された人は、高齢化して70代になると、脳の健康状態が悪化しやすく、認知症リスクが高いことが明らかになった。

 とくに男性では若い頃の高血圧は、高齢化すると脳に悪影響を及ぼしやすいとしている。

 「肥満や高血圧は保健指導などで改善が可能です。若年期に健診などで危険因子を指摘されても、自身の健康に気を付けない人も多い。生涯を通じて自身の健康を守ることが大切です」と、研究者は指摘している。

30代~40代に健診で高血圧を指摘された人は認知症リスクが高い

 30代から40代の成人初期に健康診断などで高血圧を指摘された人は、高齢化して70代になると、脳の健康状態が悪化しやすく、認知症リスクが高いことが明らかになった。

 これは、米カリフォルニア大学が、研究開始当時に30代から40代だった427人の男女を、40年以上追跡した調査で明らかになったもの。

 研究グループは、1964年~1985年の30代から40代の頃に健康診断を受けた427人の男女を、2017年~2022年まで追跡して調査し、磁気共鳴画像法(MRI)による脳スキャンを実施した。

 その結果、若いころに高血圧を指摘されたグループは、高齢化すると局所的な脳容積が著しく低下し、白質の完全性が悪化しやすいことが明らかになった。どちらの要因も認知症に関連している。

 さらに、脳の灰白質や前頭皮質の体積が減少するなど、脳の領域のマイナスの変化は、男性の方が女性よりも強いことも示された。

 神経細胞が集まっている灰白質は、認知機能とも関連しており、高齢になると委縮していく。前頭皮質は、思考や創造性にも関わっている。

 女性は、閉経前には女性ホルモンであるエストロゲンが分泌されており、これが脳の保護に関連しており、脳への影響が男性よりも少なかった可能性があると指摘している。

若いうちから生活改善に取り組み認知症リスクを減らすことが重要

 このように研究では、30~40歳の成人初期の段階で、高血圧などの危険因子をもっていると、数十年後の脳の健康に影響がもたらされることが示された。

 「認知症と診断された時点の数十年前から、脳に異常タンパクが蓄積され、認知症の前兆がはじまっていることが分かっています。若いうちから生活スタイルを見直して、認知症のリスクを減らす対策を開始する必要があります」と、同大学公衆衛生学部のクリステン ジョージ氏は言う。

 「現在のところ、認知症の治療法は非常に限られています。そのため、年齢を重ねてから認知症を発症するのを防ぐため、若いうちから生活改善に取り組み、リスクをなるべく減らすことがカギとなります」。

 「高血圧は認知症の発症につながりやすい、もっとも多くみられる危険因子です。しかし、食事や運動などの生活スタイルを見直し、治療を受ければ、高血圧は改善が可能です」としている。

 米国では、収縮期血圧(上の血圧)が140mmHg以上、拡張期血圧(下の血圧)が90mmHg以上だと、高血圧と判定されるが、上の血圧が130mmHg以上、下の血圧が80mmHg以上でも「血圧高値」として、食事や運動などの生活改善が必要とされている。

 米国疾病予防管理センター(CDC)は、米国の成人の47%が高血圧だと推定している。高血圧の割合は性別で異なり、男性の50%が高血圧であるのに対し、女性は44%だ。

20代~40代の肥満・メタボも認知症リスクを上昇

 20~49歳の成人初期に肥満だった人は、高齢化すると認知症になりやすいという、別の研究も発表されている。研究は、英国アルツハイマー病協会の国際会議で発表されたもの。

 研究グループは、5,104人の高齢者を対象に、それぞれの20歳の頃からのBMIの推移を調査した。

 その結果、成人初期に過体重だったと推定された男性は、そうでない男性に比べて、認知症のリスクが1.5倍高いことが示された。肥満だったと推定された男性は、認知症リスクは2.5倍とさらに高かった。

 女性でも認知症のリスクは、成人初期に過体重だったと推定された女性は1.8倍に、肥満だったと推定された女性は2.5倍にそれぞれ上昇した。

 「20代から40代にBMIが高く、肥満と判定された人は、年齢を重ねると認知症のリスクが高いことと関連していることが示されました」と、同協会のローザ サンチョ氏は言う。

 「健診などで肥満を指摘された若い人は、それを放っておかないで、生活改善に取り組み、将来に認知症を発症するリスクを減らすことをお勧めましす」としている。

High blood pressure in your 30s associated with worse brain health in your 70sHigh Blood Pressure in Your 30s Is Associated With Worse Brain Health in Your 70s (カリフォルニア大学 2023年4月7日)
Association of Early Adulthood Hypertension and Blood Pressure Change With Late-Life Neuroimaging Biomarkers (JAMA Network Open 2023年4月3日)
Being overweight is linked with an increased risk of dementia in new research(英国国立衛生研究所 2021年3月19日)
Higher risk of dementia in English older individuals who are overweight or obese (International Journal of Epidemiology 2020年6月23日)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「特定保健指導」に関するニュース

2023年10月03日
肥満・メタボとも関連の深い「脂肪肝」 成人の4人に1人にリスクが 予防・改善する方法は?
2023年10月02日
高齢者の高血圧はウォーキングの歩数を3000歩増やすと改善できる 毎日の運動に薬と同等の効果
2023年10月02日
うつ病は「7つの生活スタイル」により低減できる ソーシャルメディアの有効活用もメンタルに良い影響
2023年10月02日
コロナ禍で妊娠を延期した女性の半数以上に強い孤独感 32%が心理的苦痛 危機時のメンタルヘルスケアが必要
2023年10月02日
女生徒の月経にともなう諸症状を高等学校の6割が把握 相談・保健指導・婦人科の受診勧奨で対策 全国の養護教諭を対象に調査
2023年09月29日
厚労省「身体活動基準2023(仮称)」案で「座位行動」推奨値を提示
「健康づくりのための身体活動基準・指針の改訂に関する検討会」より
2023年09月25日
日本人は「睡眠不足」 良い睡眠はメンタルヘルスも高める 快眠に必要な2つのこととは?
2023年09月25日
「家庭血圧測定」が脳卒中や心筋梗塞のリスクを減らす 医療費の負担軽減にも コロナ禍で注目が集まる
2023年09月25日
子供の頃に座りっぱなしの生活をしていると成人してから健康障害が 保健指導は子供や若者のうちから必要
2023年09月25日
「膝の痛み」に運動が効く 減量して膝への負担を軽減 ウォーキングが膝痛を40%減少
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶