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高齢者による「老老介護」が社会問題に 重い介護負担で高齢者のインフルエンザ予防接種が6割減少

 高齢者による介護(老老介護)の負担が社会問題化している。「ほぼ毎日介護」あるいは「ほぼ1日中介護」をしている高齢者では、介護をしていない高齢者に比べ、インフルエンザの予防接種が6割少ないことが、日本の高齢者2万6,177人を対象とした新潟大学の調査で明らかになった。

 「高齢者の重い介護負担は、インフルエンザ予防接種の妨げになっている可能性が明らかになりました。かかりつけ医によるワクチン接種の勧めが、介護を行なっている高齢者のワクチン接種を促進するために重要と考えられます」と、研究者は述べている。

介護負担が重い高齢者の多くがインフルエンザの予防接種を受けられていない

 高齢化が進んでいる日本で、高齢者による配偶者や親の介護(老老介護)の負担が社会問題化しており、介護をしている高齢者では、健康的な生活習慣が損なわれがちという報告が増えつつある。

 高齢者はインフルエンザや肺炎が重症になりやすく、ワクチン接種によりこれらの病気の重症化を防げるが、老々介護がインフルエンザなどの予防接種にもたらす影響については良く分かっていない。

 そこで新潟大学の研究グループは、高齢者2万6,177人を対象に調査を実施。「ほぼ毎日介護」あるいは「ほぼ1日中介護」をしている高齢者では、介護をしていない高齢者に比べ、インフルエンザの予防接種が6割少なく、重い介護負担が高齢者のインフルエンザ予防接種の妨げになっている可能性が示された。

 一方、かかりつけ医がいる高齢者では、かかりつけ医がいない高齢者に比べ、重い介護負担があってもインフルエンザ予防接種を受けていることも分かった。

 「高齢化により、重い介護負担を抱える高齢者が今後増えていく可能性を考慮すると、介護負担が重い高齢者でも予防接種が受けやすくなるような対策が必要であると考えられます」と、研究者は述べている。

介護をしている高齢者ではその頻度によりインフルエンザ予防接種が4割~6割少ない

かかりつけ医がいる高齢者では重い介護負担があってもインフルエンザ予防接種を受ける割合が高い
出典:新潟大学、2023年

関連情報

かかりつけ医によるワクチン接種の勧めが重要

 研究は、新潟大学大学院医歯学総合研究科助教の齋藤孔良氏らによるもの。研究成果は、「Vaccine」に掲載された。

 「JAGES(日本老年学的評価研究)」は、65歳以上の要介護認定を受けていない高齢者を対象に、健康と暮らしについての総合的な調査を行なっている大規模研究で、全国の大学・国立研究センターなど研究機関が協力している。

 研究グループは今回、JAGES研究の一環として、2019年に行なわれた調査の参加者のうち2万6,177人を対象に、インフルエンザおよび肺炎球菌ワクチン接種と介護負担を調べ統計した。

 分析の際には、介護負担以外で予防接種に影響する可能性のある、インフルエンザや肺炎が重要化しやすい疾患(糖尿病・脳卒中・心臓の病気・呼吸器の病気・前立腺または腎臓の病気・血液または免疫の病気)、過去1年間のインフルエンザまたは肺炎の罹患歴などの影響を取り除いた。

 その結果、「ほぼ毎日介護」あるいは「ほぼ1日中介護」をしている高齢者では、介護をしていない高齢者に比べ、インフルエンザ予防接種が6割減少していることが示された。一方で、肺炎球菌ワクチンと介護負担には関連がみられなかった。

 また、かかりつけ医がいる高齢者では、かかりつけ医がいない高齢者に比べ、重い介護負担があってもインフルエンザ予防接種を受けられていることが分かった。

 「高齢者の重い介護負担は、インフルエンザ予防接種の妨げになっている可能性が明らかになりました。かかりつけ医によるワクチン接種の勧めが、介護を行なっている高齢者のワクチン接種を促進するために重要であると考えられます」と、研究者は述べている。

JAGES(日本老年学的評価研究)プロジェクト
Associations of influenza and pneumococcal vaccinations with burdens of older family caregivers: The Japan Gerontological Evaluation study (JAGES) cross-sectional study (Vaccine 2023年1月9日)
[Terahata]
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