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5大陸のがん罹患状況が明らかに〜日本全体としては初の掲載
2023年12月27日

「5大陸のがん罹患(Cancer Incidence in 5 Continents, 以下、CI5)第12版」が公表され、世界と日本における最新のがん罹患状況が明らかになった。
今回は第12版だが都道府県単位だけではなく、47都道府県をまとめた「日本」という単位で初めて掲載された。
CI5は5年おきに世界のがん罹患数・率をデータブックとしてまとめている。国際的な標準化と精度管理が行われた、最も信頼性の高いデータと言われ、各国のがん対策資料に役立てられている。
日本は、1966年のCI5第1版から宮城、第3版から大阪、第4版から長崎、第5版から広島などが継続参加していて関わりの歴史は長い。
第12版は2013年~17年の診断症例が対象。日本からは11府県の行政とがん登録従事者が協力して各府県のデータの提出に関わった。
データ精度評価の結果、全てが採択とはならず、青森県、宮城県、秋田県、群馬県、愛知県、大阪府、広島県の7府県と日本全体のデータのみの掲載だった。日本全体のデータが採用されたのは初。
また2016年にがん登録推進法が施行されてからも初めての国際共同研究となった。第12版の編集者として国立がん研究センター職員が日本で初めて関わっているのも特徴。
CI5第12版は、国際比較可能な統計値としては最新のもので、日本のがん罹患の特徴やアジア諸国との類似、欧米諸国との相違が、具体的な数値とともに明らかになっている。
全部位の年齢調整罹患率を欧米諸国と比較すると、男性では同程度か少し低く、女性では低い結果だった。
欧米より罹患率の高い部位は食道がん、胃がん、大腸がん、肝臓がん、膵臓がん、肺がん、胆のう・胆管がん。一方、口腔・咽頭がん、喉頭がん、皮膚がん、前立腺がん、腎・尿路がん、膀胱がん、脳・中枢神経系、造血器腫瘍(悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、白血病)は罹患率が低かった。
女性の乳がんは欧米諸国より低いものの、子宮頸がんは高く、子宮体がんや卵巣がんは欧米並みだった。
肺がんや子宮頸がんなどは、予防対策の遅れが懸念されており、今回の結果を見ても欧米諸国と比較して罹患率が高い。
胃がん、肝臓がん、胆のう・胆管がんの年齢調整罹患率は中国、韓国と類似し、生物・遺伝学的な背景など何らかの共通したリスク要因が示唆されている。
今回の結果は「第4期がん対策推進基本計画」のベースラインデータともなる指標で、がん対策やがん研究の優先順位の決定や、基礎・臨床分野における他国との国際共同研究の立ち上げが進むことが期待される。
世界の最新がん罹患状況の公表~70カ国455地域参加による国際共同研究~(国立がん研究センター/2023年12月7日) 5大陸のがん罹患(Cancer Incidence in 5 Continents)第12版
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