ニュース

肥満・メタボの人に「糖質制限ダイエット」は効果がある? 植物性食品を取り入れると成功しやすい 体重が減少

 血糖値を上げやすい糖質を制限する「糖質制限ダイエット」は、肥満やメタボのある人に効果があるという研究が発表されている。

 このほど糖質制限は、食物繊維が多く含まれる全粒穀物など、植物性食品を取り入れると成功しやすいという研究が発表された。

 糖質制限はすべてが同じではなく、低糖質の食事をしていても、動物性のタンパク質や脂肪を食べすぎている人は、効果を期待できないとしている。

 全粒穀物・野菜・大豆・豆類・ナッツ類・果物などの植物性食品を食べることが勧められている。

「糖質制限ダイエット」の人気は高い

 肥満やメタボリックシンドロームのある人の食事で勧められているのは、総エネルギー摂取量を適正化したうえで、栄養バランス(PFCバランス)を良好にすることだ。

 厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」では、一般的に勧められる食事は、エネルギー比で、炭水化物は50~65%、タンパク質は20%以下を目安にして、残りを脂質からとるのが良いとされている。飽和脂肪酸を7%以下にする、塩分を控える、アルコールを飲みすぎないようにする、食物繊維を十分にとることなども勧められている。

 しかし最近は、人や年齢によって必要な栄養バランスやカロリー摂取量などは異なる可能性もあるので、食事サポートも1人ひとりに合わせて個別化する必要があるという考え方が増えている。

 そうしたなかで、糖質を制限する食事スタイルが、肥満のある人の体重減少や、糖尿病の人の血糖管理に効果があるという報告が発表されている。

 もっとも血糖値を上げやすいのは糖質なので、糖質を制限することで、食後に血糖値が上がりすぎるのを抑制しようというのが、「糖質制限ダイエット」の考え方だ。

肥満やメタボを改善する効果を確認

 糖質制限ダイエットに、肥満やメタボなどの、代謝異常を改善する効果があるという研究を、米オハイオ州立大学が発表している。

 研究には、心臓病や脳卒中のリスクを高める要因であるメタボと判定された、平均年齢が41.3歳、体格指数(BMI)の平均が39.3の16人の男女が参加した。

 4週間の糖質制限ダイエットにより、参加者の半数以上(男性5人、女性4人)は、摂取エネルギーは同じで体重が変わらなかったにも関わらず、メタボから離脱するのに成功した。

 「肥満のある人が、低炭水化物の食事を短期間行うと、代謝異常が改善されるという結果になりました」と、同大学人間科学部のジェフ ヴォレック教授は言う。

 「ただし、今回の研究に参加したのは、メタボリックシンドロームのある肥満の人であり、低炭水化物の食事がすべての人に勧められるかは不明です」。

 「この食事スタイルをどのように行うと効果があり、どのような人に勧められるかを、今後の研究で解明する必要があります」としている。

糖質を制限すると体重が減少 脂肪燃焼も良くなる

 研究グループは、参加者に期間をおいて、▼中炭水化物(炭水化物32%、脂肪48%)、▼高炭水化物(炭水化物57%、脂肪23%)などの3つの食事スタイルに取り組んでもらった。

 どの食事パターンも、エネルギー量が同じになるように調整してあり、20%エネルギーのタンパク質が含まれていた。

 その結果、糖質制限を1ヵ月続けた場合、さまざまな検査値が改善することが明らかになった。中性脂肪値は低下し、コレステロール値も改善した。

 糖質を制限することで、脂肪燃焼の効率が良くなり、血糖値も改善することが示された。血圧やインスリン抵抗性については変化がみられなかった。

 「今回の研究は、体重が減少しなかった人でも改善がみられたのが特徴です。ただし、炭水化物を減らすダイエットの効果と安全性については、研究者のあいだでもさまざまな意見があり、長期的な安全性については確かめられていないことに注意する必要があります」と、ヴォレック教授は指摘する。

血糖値が高めの人にも勧められる

 米チューレーン大学も、糖質制限ダイエットは、肥満があり血糖値が高めの糖尿病予備群の食事療法として有用である可能性があるという研究を発表している。

 研究グループは、糖尿病の治療を受けていないが、1~2ヵ月の血糖値の平均を示すHbA1cが6.0%~6.9%と高めの、40歳~70歳の男女150人を対象に、6ヵ月間のランダム化比較試験を実施した。参加者の体格指数(BMI)の平均は35.9で多くは肥満だった。

 その結果、糖質制限ダイエットを行った群では、体重は5.9kg、HbA1cは0.23%、空腹時血糖値は10.3mg/dL、それぞれより減少した。

 「血糖値が高めと指摘された、肥満のある糖尿病予備群では、極端な糖質制限は勧められないにしても、糖質制限はある程度、有用であることが示されました」と、同大学公衆衛生学のキルステン ドランス氏は言う。

「糖質制限ダイエット」は植物性食品を取り入れると成功しやすい

糖質制限はどのように行うと上手くいく?

 それでは糖質制限ダイエットは、どのように行うと上手くいきやすいのだろうか?

 糖質制限は、植物性食品を取り入れると成功しやすいという研究を、米国のハーバード公衆衛生大学院が発表した。

 全粒穀物・野菜・大豆・豆類・ナッツ類・果物などの植物性食品には、食物繊維・タンパク質・ビタミン・ミネラル・抗酸化物質などが多く含まれているとしている。

 「植物ベースで糖質が少なく、植物性のタンパク質と脂肪で構成される糖質制限ダイエットは、もっとも体重を減らしやすいという結果になりました」と、同大学院栄養学科のビンカイ リュー氏は言う。

 「植物性食品は動物性食品に比べて、生産の過程での環境への負荷が少ないというメリットもあります」としている。

「糖質制限ダイエット」はすべてが同じではない

 研究グループは今回、米国で実施されているコホート研究である「看護師健康調査」「看護師健康調査II」「医療従事者追跡調査」に参加した、計12万3,332人の健康な成人を約20年間の追跡し、食事と体重の変化について分析した。

 その結果、植物性食品が中心の糖質制限を続けている人は、体重増加が長期的に少ないことが分かった。一方、動物性食品が中心の糖質制限をしている人は、体重が増加していた。

 とくに、玄米・麦ごはん・雑穀・ライ麦パン・全粒粉パンなどの、食物繊維が多く含まれる精製されていない全粒穀物を食べている人は、体重管理が良好である傾向がみられた。

 「長期的な体重管理という観点からみると、糖質制限ダイエットはすべてが同じではないことが示されました」と、同大学院栄養学科のチー サン氏は言う。

 「低糖質の食事をしていても、動物性のタンパク質や脂肪、精製された穀類を多く食べている人は、体重に好ましい影響はみられませんでした」としている。

 公衆衛生での取り組みとして、全粒穀物・野菜・大豆・豆類・ナッツ類・果物などの植物性食品、食物繊維が多く含まれる全粒穀物、さらには低脂肪の乳製品などを取り入れた食事スタイルが有利である可能性があるとしている。

Low-carb diet may reduce diabetes risk independent of weight loss (オハイオ州立大学 2019年6月20日)
Dietary carbohydrate restriction improves metabolic syndrome independent of weight loss (Journal of Clinical Investigation Insight 2019年6月20日)
At risk for diabetes? Cut the carbs, says new study (チューレーン大学 2022年10月26日)
Effects of a Low-Carbohydrate Dietary Intervention on Hemoglobin A1c: A Randomized Clinical Trial (JAMA Network Open 2022年10月26日)
Low-carbohydrate diets emphasizing healthy, plant-based sources associated with slower long-term weight gain (ハーバード公衆衛生大学院 2023年12月27日)
Low-Carbohydrate Diet Macronutrient Quality and Weight Change (JAMA Network Open 2023年12月27日)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「特定保健指導」に関するニュース

2024年04月30日
タバコは歯を失う原因に 認知症リスクも上昇 禁煙すれば歯を守れて認知症も予防できる可能性が
2024年04月25日
厚労省「地域・職域連携ポータルサイト」を開設
人生100年時代を迎え、保健事業の継続性は不可欠
2024年04月23日
生鮮食料品店が近くにある高齢者は介護費用が低くなる 自然に健康になれる環境づくりが大切
2024年04月22日
運動が心血管疾患リスクを23%低下 ストレス耐性も高められる 毎日11分間のウォーキングでも効果が
2024年04月22日
職場や家庭で怒りを爆発させても得はない 怒りを効果的に抑える2つの方法 「アンガーマネジメント」のすすめ
2024年04月22日
【更年期障害の最新情報】更年期は健康な老化の入り口 必要な治療を受けられることが望ましい
2024年04月22日
【肺がん】進行した人は「健診やがん検診を受けていれば良かった」と後悔 早期発見できた人は生存率が高い
2024年04月16日
塩分のとりすぎが高血圧や肥満の原因に 代替塩を使うと高血圧リスクは40%減少 日本人の減塩は優先課題
2024年04月16日
座ったままの時間が長いと肥満や死亡のリスクが上昇 ウォーキングなどの運動は夕方に行うと効果的
2024年04月15日
血圧が少し高いだけで脳・心血管疾患のリスクは2倍に上昇 日本の労働者8万人超を調査 早い段階の保健指導が必要
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶