ニュース

人気の「加熱式タバコ」も健康への害は大きい 心臓・肺・脳に影響 「禁煙がより難しくなる」という懸念も

 加熱式タバコは紙巻きタバコに較べて、健康への害が少ないと思っている人が多く、人気が高まっている。

 しかし、加熱式タバコも心臓・肺・脳に悪影響をもたらすことが示されている。「加熱式タバコを利用すると、禁煙がより難しくなる」という懸念もある。

 「加熱式タバコであれば無害であり、禁煙も容易にできると思いこみ、喫煙を続けるのは危険なことです」と、専門家は指摘している。

加熱式タバコは無害ではない 不整脈リスクが上昇

 加熱式タバコは紙巻きタバコに較べて、健康への害が少ないと思っている人が多く、人気が高まっている。

 しかし、米カリフォルニア大学の実験では、加熱式タバコも心拍リズムを異常にし、不整脈のリスクを高めることが示されている。

 「加熱式タバコを吸うと、心臓の活動や神経による電気制御などに干渉し、心臓に対する悪影響は広範囲に及ぶことが分かりました」と、同大学心臓病学部のフイリャン チウ氏は言う。

 これらの変化があると、心臓の電気信号を正しく処理できなくなり、心臓のポンプ機能が正常に働かなくなり、命に関わる不整脈のリスクが高まるおそれがあるという。

 「加熱式タバコの製品はどれも、紙巻きタバコの無害な代替品だと考えるべきではありません。健康への悪影響がもっとも少ないのは、タバコをまったく吸わないことです」と、チウ氏は指摘している。

関連情報

加熱式タバコが肺の炎症を引き起こす

 欧州肺財団(ELF)が発表した別の研究では、加熱式タバコは肺細胞に対して有毒であることが示されている。

 「喫煙は予防可能な死亡の主な原因です。各国で禁煙を勧める保健指導が行われ、この傾向が続けば、タバコの使用は減少するだろうと予測されます」と、オーストラリアのタスマニア大学などで呼吸器疾患などを研究しているスクウィンダー ソーハル氏は言う。

 「しかし、この10年間で加熱式タバコが普及してきたので、ニコチン摂取の傾向が鈍化することはないだろうとみられます。喫煙習慣は、2030年までに世界中で年間800万人以上が死亡することにつながります」としている。

 研究グループは、ヒトの気道から採取した上皮細胞と平滑筋細胞に対する、加熱式タバコなどによる影響をテストした。

 その結果、加熱式タバコが気道に異物が侵入するのを防御する細胞の正常な機能を妨げ、呼吸困難を引き起こす可能性が示唆された。

 「加熱式タバコは、タバコが燃焼するのではなく加熱されるため、有毒な化合物の生成が95%少ないとされていますが、ラットを使った実験では、やはり肺の炎症を引き起こすことが示されました」と、シャルマ氏は指摘する。

 「加熱式タバコは、従来の紙巻きタバコなどに比べ、細胞への毒性が低いわけではありません」としている。

加熱式タバコを利用すると禁煙がより難しくなる

 加熱式タバコを利用すると、禁煙がより難しくなることも、カリフォルニア大学による別の研究で示されている。研究グループは、カリフォルニア州に在住する喫煙者約1,000人を、1年間追跡して調査した。

 加熱式タバコを使用している喫煙者は、紙巻きタバコなどを使用している喫煙者に較べて、タバコの使用量を減らす可能性は49%低く、禁煙する可能性は59%低いことが示された。

 「加熱式タバコを使った方が、禁煙に成功しやすくなると考える人は多いのですが、実際には、その逆のことが起きていることが示されました」と、同大学公衆衛生学部のワエル アル デライミー教授は言う。

 「加熱式タバコを使用することで、ニコチン摂取量がさらに増加している可能性も考えられます。加熱式タバコであれば無害であり、禁煙も容易にできると思いこみ、喫煙を続けるのは危険なことです」としている。

加熱式タバコが長期に脳にあたえる影響を調査

 広島大学の新しい研究では、加熱式タバコの長期使用は、脳下垂体ホルモンの活性など、非炎症性の経路を介して脳に影響しており、健康への悪影響があることが示された。

 研究グループは、アルツハイマー病の前駆期を模倣したマウスモデルを用いて、加熱式タバコが長期に脳にあたえる影響を検証した。

 加熱式たばこに16週間、週5日さらされたマウスは、ニコチン代謝産物である血中コチニン濃度が上昇し、これにより非炎症性経路を介した影響(脳下垂体ホルモン活性、神経ペプチドホルモン活性、ガラニン受容体活性に関連する遺伝子)が生じている可能性が示された。

 加熱式タバコは紙巻きタバコに較べて健康への悪影響は少ないとされているが、非炎症性経路を介して脳に影響をもたらしていることが分かった。加熱式タバコの害について、今後も研究を続ける必要があるとしている。

出典:広島大学、2024年

Marijuana and E-cigs Can Harm the Heart Like Traditional Cigarettes (カリフォルニア大学 2022年11月15日)
Increased vulnerability to atrial and ventricular arrhythmias caused by different types of inhaled tobacco or marijuana products (Heart Rhythm 2022年11月14日)
New heated tobacco device causes the same damage to lung cells as traditional cigarettes and e-cigarettes (欧州呼吸器学会 2019年2月11日)
IQOS exposure impairs human airway cell homeostasis: direct comparison with traditional cigarette and e-cigarette (ERJ Open Research 2019年2月)
Smokers Who Use E-Cigarettes Less Likely to Quit (カリフォルニア大学 2015年4月16日)
E-Cigarette Use in the Past and Quitting Behavior in the Future: A Population-Based Study (American Journal of Public Health 2015年5月13日)
広島大学大学院医系科学研究科 脳神経内科学
The long-term effects of heated tobacco product exposure on the central nervous system in a mouse model of prodromal Alzheimer's disease (Scientific Reports 2024年1月2日)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「特定保健指導」に関するニュース

2024年04月30日
タバコは歯を失う原因に 認知症リスクも上昇 禁煙すれば歯を守れて認知症も予防できる可能性が
2024年04月25日
厚労省「地域・職域連携ポータルサイト」を開設
人生100年時代を迎え、保健事業の継続性は不可欠
2024年04月23日
生鮮食料品店が近くにある高齢者は介護費用が低くなる 自然に健康になれる環境づくりが大切
2024年04月22日
運動が心血管疾患リスクを23%低下 ストレス耐性も高められる 毎日11分間のウォーキングでも効果が
2024年04月22日
職場や家庭で怒りを爆発させても得はない 怒りを効果的に抑える2つの方法 「アンガーマネジメント」のすすめ
2024年04月22日
【更年期障害の最新情報】更年期は健康な老化の入り口 必要な治療を受けられることが望ましい
2024年04月22日
【肺がん】進行した人は「健診やがん検診を受けていれば良かった」と後悔 早期発見できた人は生存率が高い
2024年04月16日
塩分のとりすぎが高血圧や肥満の原因に 代替塩を使うと高血圧リスクは40%減少 日本人の減塩は優先課題
2024年04月16日
座ったままの時間が長いと肥満や死亡のリスクが上昇 ウォーキングなどの運動は夕方に行うと効果的
2024年04月15日
血圧が少し高いだけで脳・心血管疾患のリスクは2倍に上昇 日本の労働者8万人超を調査 早い段階の保健指導が必要
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶